シリア政府代表と反体制派代表は「モスクワ2」の会期を1日延長することで合意:SANAはシリア側の議題案が合意されたと報道(2015年4月9日)

『ハヤート』(4月10日付)によると、モスクワで開催されている和平交渉「モスクワ2」に参加しているシリア政府代表と反体制派代表の双方は、9日閉幕予定だった会合を1日延長することを決定した。

しかしSANA(4月9日付)は、シリア政府代表と反体制派代表が、政府側が提示した議題「現状評価書」に関する項目書の内容に関して合意に達したと報じた。

シリア政府代表と反体制派の2日目の直接会談となる9日の会談では、8日にシリア政府代表が提出した議題案(『ハヤート』が言うところの7項目からなる閉幕声明案)をめぐって激しい議論が行われた。

SANA(4月9日付)によると、この議題案(「現状評価書」)は以下8項目からなっている:

1. ジュネーブ合意(2012年)の諸原則に基づき、合意を基本とする政治的諸手段を通じた危機の解消。

2. 国際社会に、カタール、サウジアラビア、トルコなどといったアラブ諸国、諸外国の当事者すべてに、シリア国内へのテロリストの進入、教練、避難、支援、武器供与といった支援を停止しするよう、真剣且つ早急に圧力をかけるよう呼びかけること。

3. 国際社会に、シリア国民に対して科せられている全ての経済制裁の即時・完全解除を呼びかけること。

4. いかなる政治プロセスの成果も国民主権、国民の意思に従わねばならないこと。

5. 国民和解の強化、シリア軍によるテロとの戦いへの支援。

6. 国際社会に、シリア人避難民の帰国を支援し、国外避難民が帰国するにふさわしい状況を準備するために行動するよう呼びかけること。

7. 政治プロセスに関する諸基礎は以下の通りとすること:

a. 国民主権、シリアの国土と国民の統合の維持。

b. 国家機関の維持、その発展のための行動。

c. すべての占領地の解放。

d. シリアの指導のもと、いかなる外国の干渉のなく行われるシリア人どうしの国民対話のみが、政治的解決実現の唯一の道。

8. 国際社会に、「ジュネーブ3」会議を準備するため、「モスクワ2」での合意事項への支持を呼びかけること。

『ハヤート』によると、これらの項目のうち、カタール、サウジアラビア、トルコによるテロ支援停止に向けた国際圧力を求めた第2項目が争点となり、反体制派代表はこれら3カ国の国名を削除するよう要求したという。

またシリア軍によるテロとの戦いへの支援を求めた第5項目をめぐっても、反体制派代表の一部は留保の姿勢を示したほか、発砲停止、言論犯釈放といった文言を加えるよう主張したという。

会談では、ジャアファリー国連シリア代表が、反体制派のクルド人代表(民主統一党、西クルディスタン移行期民政局)に対して、シリア政府から資金や武器の援助を受けておきながら態度を覆したと批判、クルド人代表が一時退席しようとする一幕もあったが、集中的な会談が行われたという。

また、民主呼びかけフォーラムのサミール・イータ氏は、シリア当局に拘束されているとされる約9,000人の氏名が記載された名簿を提出したが、ジャアファリー国連シリア代表は「大会の議題を逸脱しようとする挑発行為」と批判、受け取りを拒否した。

これに対して、イーター氏は、逮捕者の問題が、シリア政府と反体制派の信頼醸成に力点を置くと定めた議題に沿ったものだとして、シリア政府代表とロシア政府に受け取りを求めた。

だが、いずれも受け取りを拒否し、イータ氏は議場を後にした。

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シリア革命反体制勢力国民連立は声明を出し、ムハンマド・ヤフヤー・マクタビー事務局長を団長とする代表団は、スタファン・デミストゥラ・シリア問題担当国連アラブ連盟共同特別代表を補佐するラムズィー・ラムズィー副代表らと会談し、政治的プロセスを前身させるための持続的な連絡、対話を行うことで合意したと発表した。

AFP, April 9, 2015、AP, April 9, 2015、ARA News, April 9, 2015、Champress, April 9, 2015、al-Hayat, April 10, 2015、Iraqi News, April 9, 2015、Kull-na Shuraka’, April 9, 2015、al-Mada Press, April 9, 2015、Naharnet, April 9, 2015、NNA, April 9, 2015、Reuters, April 9, 2015、SANA, April 9, 2015、UPI, April 9, 2015などをもとに作成。

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