「モスクワ2」はシリア政府代表と反体制派代表の共通議題(「現状評価書」)で合意するも、次回会合日程の目処が立たないまま閉幕(2015年4月10日)

ロシア外務省が主催するシリア政府と反体制派の和平交渉「モスクワ2」は、当初の日程(4月6~9日)を1日延長して、10日に閉幕した。

『ハヤート』(4月11日付)によると、8、9日に行われたシリア政府代表と反体制派代表の直接会談を数時間延長するかたちで行われた10日の会談では、シリア政府が提示した「現状評価書」(共通議題、http://syriaarabspring.info/wp/?p=18645)の第1項目(ジュネーブ合意(2012年)の諸原則に基づき、合意を基本とする政治的諸手段を通じた危機の解消)をめぐって紛糾した。

仲介役を果たしたロシア科学アカデミー東洋研究所のヴィタリー・ナウムキン所長は最終的に協議の継続断念し、次回会合の日程について合意しないままに閉会した。

直接会談では、反体制派代表がジュネーブ合意を履行するための具体的な仕組みについての議論を優先するよう求める一方、シリア政府代表は、自らが提出した議題に従って交渉を進めるべきだとして譲らなかった。

また議論が、反体制派の武器の制限に及ぶと、一部の反体制派代表が態度を保留、また別の参加者はシリア軍支援を問題視したという。

一部の出席者によると、シリア政府代表を率いるバッシャール・ジャアファリー国連代表大使の「高圧的」な姿勢ゆえに、反体制派代表の一部がたびたび議場を去るといった場面も見られたという。

また9日に合意されたシリア政府提出の「現状評価書」に関して、反体制派代表は合意後は信頼醸成に向けた議論を行うべきだと主張したのに対して、シリア政府代表は「現状評価書」に沿った議事を行うよう主張して対立した。

『ハヤート』(4月11日付)は、反体制派代表らがシリア政府代表による拒否の姿勢、時間稼ぎが、活発な議論を妨げたと批判した、と伝えた。

民主的変革諸勢力国民調整委員会のハサン・アブドゥルアズィーム代表は「モスクワでの協議は、シリア政府が議論を反故にし、個別のアジェンダを押しつけようとしたために失敗した…。合意された議題(「現状評価書」)に対処するのを委員会が拒否したのは、合意が信頼醸成に向けた措置をめぐる対話を行う条件となっていたからだ」と述べた。

国民呼びかけフォーラムのサミール・イータ氏は「ジャアファリー国連シリア代表には権限がない。会合を失敗させた責任はバッシャール・アサド大統領にある。彼は政治的解決が何を意味するのか未だに理解していない…。シリア政府は前進に向けた重要なチャンスを逃した」と述べた。

これに対し、変革解放人民戦線のカドリー・ジャミール代表(前副首相)は「発表された議題(「現状評価書」)は前例のない成果であり…、今後の成果の基礎となり得る」と高く評価した。

一方、ジャアファリー国連シリア代表も「モスクワ2」閉幕後に記者会見を行い、「これまでにはなかったような重要な事態の打開に至ることに成功した」と評価したうえで、反体制派代表との間で合意に達した「現状評価書」を「前向きな進展」と位置づけ、今後も「現状評価書」に沿った議論の継続が行われるだろうと述べた。

しかし、「ジャアファリー国連シリア代表には権限がない」と批判する反体制派代表については「アサド大統領から全権を委ねられている」と反論、反体制派の主張を批判した。

また、ロシア外務省のヌルキンは、記者会見を開き、時間不足によって、提示された議題に沿った協議の継続が阻まれてしまったと述べるとともに、「合意された議題(「現状評価書」)を取り下げようとする者がいた」が、議題そのものは今後の対話継続のための基礎となったと高く評価した。

しかし、今後の会合については日程調整が難航していると述べた。

Kull-na Shuraka', April 10, 2015

Kull-na Shuraka’, April 10, 2015

AFP, April 10, 2015、AP, April 10, 2015、ARA News, April 10, 2015、Champress, April 10, 2015、al-Hayat, April 11, 2015、Iraqi News, April 10, 2015、Kull-na Shuraka’, April 10, 2015、al-Mada Press, April 10, 2015、Naharnet, April 10, 2015、NNA, April 10, 2015、Reuters, April 10, 2015、SANA, April 10, 2015、UPI, April 10, 2015などをもとに作成。

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