アサド大統領は欧州各国のメディアのインタビューに応じる「テロ支援が欧州の果たしてきた唯一の役割だ」(2017年3月13日)

アサド大統領は、シリアを訪問中の欧州議会使節団に同行する欧州各国のメディアのインタビューに応じた。

インタビューは英語で行われ、映像はSANAがYoutube(https://youtu.be/pmqlu-2h9w8)を通じて公開され、全文もSANAがインターネット(http://sana.sy/en/?p=102045、アラビア語訳http://www.sana.sy/?p=521497)を通じて公開した。

インタビューにおけるアサド大統領の主な発言は以下の通り:

SANA, March 13, 2017

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「シリアにいるテロリストや先日ダマスカスで行ってテロについて言うと、こうした事件は日常的に発生してきた…。シリアのどこかにテロリストがいる限り、すべてのシリア市民が危険に晒されている…。問題は、誰がこうしたテロリストを支援しているのか、ということだ。シリア危機当初から間違った道に進み、シリアに破壊をもたらし、地域にテロを拡散し、欧州諸国でのテロや難民問題を引き起こした欧州の高官に対してこの質問を提起したい。欧州、ないしは西側の役割について言うと…、今までテロリストを支援してきた、というのが唯一の役割だ。欧州は政治プロセスについて云々するだけで、いかなる政治プロセスも支援してきなかった…。一方、イランの役割はまったく異なっている。イランはテロと戦うシリアを支援し、政治的にサポートしている…。イスラエルは別の側面からテロリストを直接支援している」。

「ロシアはシリア軍とともに「テロとの戦い」で成功を収めてきた。アレッポ、パルミラなどを奪還が具体的な証拠だ…。だから(ロシアの役割に関して)意見を述べる必要などない。なぜならそれ(ロシアの役割)は事実だからだ…。シリアの問題をめぐって採られるすべての政治的措置、そして軍事的措置は、シリア政府との協議を経ねばならない…。そうしてきたのがロシアの政策であり、ロシアの振る舞いだ。ロシアの政策やシリアとの関係は二つのものを基礎としている。まず、シリアの主権…、そして第2に道徳だ。だから(ロシアによるシリアの)植民地化は生じていない」。

「シリア国民が自分たちの大統領を選ぶべきだ。国連ではなく、シリア国民が紛争や問題の責任を問うべきだ。国連には(自身の戦争犯罪を追究する)役割などない。ソ連崩壊以降、国連には政治的バランスがないことを我々みなが知っている。なぜなら、フランス、英国、米国といった一部の安保理常任理事国が国連を自分たちの政治的アジェンダのために利用し、自分たちに従わない外国政府を転覆させてきたからだ…。大統領の進退について言うと、私個人としては、シリア国民にだけ耳を傾ける。国連は関係ないし、シリア国外の高官が何を言おうと関係ない…。難民や殺戮について言うと…、その一部は欧州諸国によるものだということを知っておくべきだろう。それは直接的ではなく、テロリストへの支援を通じて行われ、今でも欧州諸国は彼らを「穏健派」などと呼んでいる。彼らが幻想に過ぎず、シリアには穏健な武装集団などいないということをしっているにもかかわらずだ。彼らはみな過激派だ…。機関銃や武器を手にして人々を殺す者は…あなたの国でも、私の国でもテロリストだ。穏健な殺人者、穏健なテロリストなどがいるなどと言えるはずもない」。

「大統領の見解と義務は区別されねばならない。大統領の義務は憲法に基づいている。シリア政府、そしてシリアのすべての高官の義務とは国を守ることだ。国を守らなければ、罪を犯したと感じることだろし、後悔すべきだろう。しかし、国を守ることで後悔することなどあろうか? 第2に、我々は民兵を含むすべてのシリア人と対話するべきだという意見を持っている…。テロリストと対話するなどと言う国の政府はどこにもない…。しかし、我々は違う。我々は、シリア人を救うためにテロリストとさえも対話をする。こうした対話をすることを後悔できるだろうか? そんなことはできない。何かを実施することで後悔するということに関しては、誰でも間違って何かを実施することはある…。しかし、それは後悔すべきことでなく、正していくべき問題だ…。私は同じ問いを欧州の首脳たちに問いたい。彼らはシリアのテロリストを支援し、彼らを穏健派と呼ぶことを後悔しているのか…? 彼らは、自分たちのプロキシが人々を殺しているのを知っていながら、シリア政府を非難してきただけだ…。彼らこそが後悔すべきだ」。

「(過去の過ちについて例をあげられるかとの問いに対して)私は自分自身を見直さねばならない…。何も思い浮かばないが、時に個人的な過ちは犯してきたはずだ」。

「シリアが戦後どうなるかについてだが、それは私のアジェンダではない。私のアジェンダとは、シリア人どうしの対話を促すということにある。なぜなら、どのような政治体制を望むかは国民的な議論だからだ…。そして政治体制…や制度は、憲法に反映されるべきだ…。それ(シリアの将来像を具体化する)には対話が必要だが、それについて話すのは時期尚早だ。もちろん、この問題について我々は議論しているが、シリア国民にとっての優先事項とはテロと戦うことだ…。また各地でテロリストを排除し、政治的和解を実現することももう一つの優先事項だ」。

AFP, March 13, 2017、AP, March 13, 2017、ARA News, March 13, 2017、Champress, March 13, 2017、al-Hayat, March 14, 2017、Iraqi News, March 13, 2017、Kull-na Shuraka’, March 13, 2017、al-Mada Press, March 13, 2017、Naharnet, March 13, 2017、NNA, March 13, 2017、Reuters, March 13, 2017、SANA, March 13, 2017、UPI, March 13, 2017などをもとに作成。

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