2012年6月12日のシリア情勢

ハッファ地方の動き

反体制武装集団が展開するハッファ地方では軍による砲撃が続き、SANA(6月12日付)によると、破壊行為を続ける武装テロ集団に対する関係当局の逮捕・追跡が行われ、多数のテロリストを殺害した。また関係当局側も2人が犠牲となった。

SANA, June 12, 2012

SANA, June 12, 2012

またロイター通信(6月12日付)は、複数の反体制活動家が、ハッファ地方で包囲されている市民を避難させるために戦っていると語ったと報じた。

同活動家らによると、ハッファ地方では数百人の戦闘員が戦闘に参加している、という。

UNSMISのサウサン・ゴーシェ報道官は、ハッファ市に近づこうとしたUNSMISの監視団に対して、村人が怒りの抗議を行い、車を取り囲み、進路を塞ぎ、投石などを受けたと発表した。

ゴーシェ報道官は、イドリブ県へ立ち去る際にハッファ地方から炎が3本立ち上がっていたが、その原因は分からない、という。

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一方、シリア・アラブ・テレビ(6月11日付)やSANA(6月11日付)は、ラタキア市郊外の住民が村を通過しようとしたUNSMISに武装テロ集団から受けた被害を訴えようとしたが、UNSMISは彼らに耳を傾けず、監視団の車が市民3人をはね、2人が重傷を負った、との証言を報じた。

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シリア人権監視団のラーミー・アブドゥッラフマーン所長によると、「政権を支持するシール村の住民がハッファ市に至る街道に横たわり、UNSMISの車輌と通行を阻止し、「人間の壁」で監視団は進路を妨げられ、迂回路に引き返すことを余儀なくされた」。

SANA, June 12, 2012

SANA, June 12, 2012

アブー・ムハンマドを名のるラタキアの反体制活動家はAFP(6月12日付)に対して、シール村の住民がUNSMISに投石した、と証言した。

またアブー・ムハンマド氏は、軍治安部隊による激しい砲撃のなか、「自由シリア軍はハッファを防衛しているが、人的被害は甚大だ」としたうえで、住民は激しい砲撃により避難さえできないと述べた。

その他の国内の暴力

ヒムス県では、シリア人権監視団によると、ヒムス市のハーリディーヤ地区で軍・治安部隊が砲撃を加えた。

アブー・ビラールを名のる反体制活動家はAFP(6月12日付)に対して、ヒムス市の状況を「恐ろしく悲惨」で、「女性、子供を含む400人の市民がジャウラト・シヤーフ地区の学校に閉じ込められている」ことを明らかにしたうえで、旧市街には「戦闘員はいない」にもかかわらず、「砲撃に曝されている」と述べた。

クサイル地方では、シリア人権監視団によると、市民3人が治安部隊によって射殺された。

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ダイル・ザウル県では、シリア人権監視団によると、未明にダイル・ザウル市で軍・治安部隊の砲撃で子供を含む市民10人が死亡した。

またブーカマール市では政治治安部の要員が何者かに暗殺された。

一方、SANA(6月12日付)によると、ダイル・ザウル市内にあるテロリストの自宅で製造中の爆発物が爆発し、4人が死亡した。

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アレッポ県では、シリア人権監視団によると、フライターン市で軍・治安部隊が砲撃した。

地元調整諸委員会によると、多数の家屋が破壊されたという。

SANA(6月12日付)によると、フライターン市などアレッポ郊外で治安維持部隊が武装テロ集団と交戦し、多数のテロリストを殺害、治安を回復した。

テロリストのなかにはアラブ諸国の国籍を持つ外国人が複数含まれていたという。

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ダマスカス郊外県では、SANA(6月12日付)によると、ドゥーマー市で武装テロ集団が運搬していた爆弾が爆発し、テロリスト2人が死亡した。

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イドリブ県では、シリア人権監視団によると、サラーキブ市近郊で軍・治安部隊と反体制武装集団が交戦した。

国内の動き

SANA(6月12日付)は、シリア外務省高官筋の話として、11日の米国務省報道官の発言などに代表される最近の一連の過激な発言を通じて、米国はシリアへのあからさまな内政干渉を行うとともに、武装テロ集団を公然と支持している、と批判した。

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DP-News(6月12日付)は、2011年2月と2012年2月のシリアへの出入国者数を比較、シリアからの出国者数が19.9%減少、シリアへの入国者数が29.5%減少、外国人観光客数が79.7%減少したと報じた。

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ダマスカス郊外県のダイル・マール・ムーサー修道院のパウロ・ダロリオ修道長(イエズス会)は声明を出し、シリアでの現状をテロ撲滅と位置づけようとするカトリック系など一部メディアの報道内容に抗議の意を示すとともに、シリア政府と司教区の圧力によりシリアを去ることになるだろうと発表した。

パウロ修道士は、ヒムス県クサイル地方で武装集団に誘拐されたキリスト教徒の釈放や、キリスト教徒避難民の救援、イスラーム教徒とキリスト教徒の対話などを推奨する一方、弾圧による犠牲者に哀悼の意を示してきた。

反体制勢力の動き

ヒムス県ガントゥー市での空軍ミサイル大隊の小規模離反と、反体制武装集団による同大隊本部に関して、ロイター通信(6月12日付)は、複数の反体制活動家の話として、機関銃や弾薬は確保できたが、軍・治安部隊の砲撃により、本部からの退却を余儀なくされ、地対空ミサイルは確保できなかったと報じた。

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シリア国民評議会は声明を出し、アナン特使に対して停戦案が頓挫したことを宣言するよう求めるとともに、国際社会に対して民間人保護のためUNSMISの権能強化を呼びかけた。

レバノンの動き

『サフィール』(6月12日付)は、パリ在住のシリア人反体制活動家(匿名)の話として、アレッポでレバノン人巡礼者11人を誘拐した集団は、身代金を一人あたり30万ドルから400万ドルに引き上げたと報じた。

身代金はヒズブッラーと人質の家族に対して要求されている。

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北部県アッカール郡ワーディ・ハーリド地方で拘束され、シリア領内に連行されていたスライマーン・アフマド氏が村に帰還し、多数の住民の出迎えを受けた。

武装集団に拘束されていたアラウィー派4人も釈放された。

諸外国の動き

国連平和維持活動局(DPKO)のエルベ・ラドゥス局長は「シリアは現在内戦状態か」との記者団の問いに「そういうことができると思う…。ダマスカスの政府が領内の広範な地域で支配を失っており…、その回復を試みているというのが現状だということは明らかだ」と述べた。

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ヒラリー・クリントン米国務長官は、ロシアの攻撃ヘリコプターがシリアに投入され、アサド政権の弾圧に利用されるとの情報を得ていると述べ、懸念を表明した。

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米国務省のジョン・カービー報道官は、シリアに新たなヘリコプターが供与されたとの情報はないと述べ、ヒラリー・クリントン米国務長官の発言を否定した。

しかし同報道官は、シリア政府が攻撃用ヘリコプターを弾圧に利用しようとしていると述べた。

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『サフィール』(6月13日付)によると、国連のデレク・ピランビー特使はレバノンを訪問し、シリア情勢に関して、「レバノンの軍および当局はシリアへの武器の流入を止める努力を実行している」と述べ、レバノンからの武器の密輸が好ましくないとの見方を示した。

AFP, June 12, 2012、Akhbar al-Sharq, June 12, 2012, June 13, 2012、AKI, June 12, 2012、DP-News.com, June 12, 2012、al-Hayat, June 12, 2012、June 13, 2012、Kull-na Shurakāʼ, June 12, 2012、Naharnet.com,
June 12, 2012、Reuters, June 12, 2012、SANA, June 12, 2012、al-Safīr, June 12, 2012, June 13, 2012、UPI, June 12, 2012などをもとに作成。

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