ハーン・シャイフーン市での化学兵器事件を受け、国連安保理で緊急会合:米英仏は非難決議案を提出、ロシアは拒否権発動の意思表明(2017年4月5日)

国連安保理は、イドリブ県ハーン・シャイフーン市で4日に化学兵器が使用されたとされる事件への対応を協議するための緊急会合を開催、米国、英国、フランスは非難決議案を提出した。

決議案は、ハーン・シャイフーン市での攻撃をもっとも厳しい表現し、攻撃を実行した当事者の制裁を要求、化学兵器禁止機関(OPCW)による調査を支持するとともに、国連とOPCWによる合同調査チームの即時派遣と調査を求めている。

また、シリア政府を含むすべての当事者に対して事件当日の航空作戦の飛行記録、司令官の氏名を提示するよう求めている。

そのうえで、国連憲章第7章に基づき、上記の規定への違反があった場合に対処する旨規定するとともに、安保理事務総長にシリア政府の協力などの評価するための報告書を2ヶ月後に提出することを求めている。

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会合では、ニッキー・ヘイリー米国連大使が化学兵器攻撃の被害に合ったとされる子供の写真を掲げ「卑劣な行為」と批判、事件にはアサド政権の「指紋が押されている…「この犯罪の実質的な責任はアサド政権にある」との疑いをかけた。

また、ロシアが決議案を「決して受け入れられない」とし、拒否権を発動する意思を示していることについては、「不道徳」と非難した。

ロシアのゲンナージー・ガティロフ外務次官は、米英仏による安保理決議案が採決された場合、拒否権を発動すると述べていた。

英仏の国連代表大使も、シリア政府の関与を疑うとともに、ロシアの拒否権発動を牽制した。

これに対して、ロシアのヴラジミール・サフロンノフ国連大使は、化学兵器の使用はいかなる状況下においても、またいかなる当事者によるものであっても受け入れないとしつつ、シリア政府側が化学兵器を使用したという報告をねつ造したと反論、「武装組織」の犯行だと断じた。

他方、中国は、「シリアにおける最優先事項はテロとの戦い」とし、ロシアに同調するとともに、すでに設置されている国連の調査委員会の活動を支援するべきだと主張した。

エジプトも、真相究明と制裁に向けた真摯な行動を支援すると表明した。

このほか、ムンズィル・ムンズィル国連シリア副代表は、シリアが化学兵器禁止条約を完全り履行していると強調した。

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国連のアントニオ・グテーレス事務総長は、イドリブ県ハーン・シャイフーン市で4日に化学兵器が使用されたとされる事件に関して「戦争犯罪」に値すると非難した。

AFP, April 5, 2017、AP, April 5, 2017、ARA News, April 5, 2017、Champress, April 5, 2017、al-Hayat, April 6, 2017、Iraqi News, April 5, 2017、Kull-na Shuraka’, April 5, 2017、al-Mada Press, April 5, 2017、Naharnet, April 5, 2017、NNA, April 5, 2017、Reuters, April 5, 2017、SANA, April 5, 2017、UPI, April 5, 2017などをもとに作成。

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