シリアのアル=カーイダと目されるシャーム解放機構が軍事・治安権限を掌握するイドリブ県、ハマー県北部、ラタキア県北部、アレッポ県西部の緊張緩和地帯では、シリア・ロシア軍が爆撃を激化させてから112日目を迎えた8月21日、シリア・ロシア軍は同地への攻撃を継続、シャーム解放機構などからなる反体制武装集団と交戦した。
シリア軍戦闘機による爆撃回数は100回を記録、ヘリコプターが「樽爆弾」75発を投下、ロシア軍も55回の爆撃を行った。
またシリア軍の地上部隊による砲撃は850発以上におよんだ。
シリア人権監視団によると、シリア・ロシア軍が緊張緩和地帯への攻撃を激化させた4月30日以降の戦闘による犠牲者数は前日より61人(民間人22人(うち女性1人、子供2人)、シリア軍兵士16人、反体制武装集団戦闘員31人)増えて3,735人となった。
うち、972人が民間人(女性173人、子供242人を含む)、1,270人がシリア軍兵士、1,491人が反体制武装集団戦闘員。
なお、ドゥラル・シャーミーヤ(8月21日付)によると、シリア・ロシア軍の攻撃は20日夜から断続的に続いたという。
**
イドリブ県では、シリア人権監視団によると、シリア軍が戦闘機でM5高速道路上の拠点都市マアッラト・ヌウマーン市、タマーニア町、ジャルジャナーズ町、ガドファ村、マアッルシューリーン村、タッフ村、ダイル・シャルキー村、タッル・マンス村、マアッラト・スィーン村、バシーリーヤ村、ハザーリーン村、ブサンクール村灌木地帯、サラーキブ市に対して爆撃を実施するとともに、ヘリコプターでヒーシュ村、シャイフ・ダーミス村、スィフヤーン村、ラカーヤー村、マアッルシューリーン村、タマーニア町、タフターヤー村、バスィーダー村、カフルサジュナ村、ジャルジャナーズ町、ガドファ村、マアッラト・ヌウマーン市、ダイル・シャルキー村、タッフ村に「樽爆弾」を投下し、タッル・マンス村で女児1人を含む3人が、マアッルシューリーン村で市民1人が死亡した。
またシリア軍は地上部隊が県内の戦闘地域を砲撃し、バシーリーヤ村で子供1人を含む3人が死亡した。
ロシア軍もタマーニア町、タッル・タルイー村、マアッラト・ハルマ村、タッフ村、ダイル・シャルキー村、ダイル・ガルビー村、マアッルシューリーン村、ガドファ村、ジャルジャナーズ町を爆撃し、ダイル・ガルビー村で市民3人が死亡した。
ホワイト・ヘルメットによると、タッル・マンス村に対するロシア軍の爆撃では、ラフマ病院が標的となり、利用不能となったという。
一方、SANA(8月21日付)によると、シリア軍がタマーニア町とハマー県ムーリク市の間に位置するタッル・タルイー村一帯でシャーム解放機構などからなる反体制武装集団と交戦し、多数の戦闘員を殺傷した。
ドゥラル・シャーミーヤ(8月21日付)によると、シャーム解放機構、国民解放戦線、イッザ軍などからなる「必勝」作戦司令室はハーン・シャイフーン市東に位置する戦略的要衝のタルイー丘一帯でシリア軍と激しく交戦した。
**
アレッポ県では、シリア人権監視団によると、シリア軍が戦闘機でICARDA一帯に対して爆撃を実施するとともに、地上部隊が県南西部の戦闘地域を砲撃した。
ロシア軍もカフル・ハラブ村一帯を爆撃した。
**
ラタキア県では、シリア人権監視団によると、シリア軍地上部隊が県北東部の戦闘地域を砲撃した。
ロシア軍もカッバーナ村一帯を爆撃した。
シャーム解放機構に近いイバー通信(8月21日付)によると、シリア軍とヒズブッラーがクバイナ丘に進軍、シャーム解放機構がこれを迎撃した。
同通信によると、この戦闘でシリア軍とヒズブッラー側は25人が死亡、60人あまりが負傷したという。
ドゥラル・シャーミーヤ(8月21日付)もまた、クバイナ丘一帯で、シャーム解放機構、国民解放戦線、イッザ軍などからなる「必勝」作戦司令室の軍事筋の話として、同作戦司令室がシリア軍と激しく交戦したと伝えた。
**
ハマー県では、ドゥラル・シャーミーヤ(8月21日付)によると、シリア軍が、ムーリク市に近いトルコ軍の監視所(第9監視所)一帯に対して爆撃・砲撃を行った。
**
ロシア国防省は声明を出し、過去24時間で「緊張緩和地帯設置にかかる覚書」への違反を27件(ラタキア県14件、アレッポ県11件、イドリブ県2件)確認したと発表した。
トルコ側の監視チームは停戦違反を9件(イドリブ県5件、ハマー県3件、アレッポ県1件)確認した。
AFP, August 21, 2019、ANHA, August 21, 2019、AP, August 21, 2019、al-Durar al-Shamiya, August 21, 2019、Ministry of Defence of the Russian Federation, August 21, 2019、Reuters, August 21, 2019、SANA, August 21, 2019、SOHR, August 21, 2019、UPI, August 21, 2019、Shabaka Iba’ al-Ikhbariya, August 21, 2019などをもとに作成。
(C)青山弘之 All rights reserved.