アサド大統領がRTの独占インタビューに応じる「西側の世論が自国の首脳がウソをついていることを知っているが、シリアで本当に起きていることを知らない。だから本当のことを話す」(2019年11月11日)

ロシアのRT-UK TVチャンネル(11月11日付)は、アサド大統領との独占インタビューを放映した。

インタビューでのアサド大統領の主な発言は以下の通り:

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「私は世界、とりわけ西側の世論がこの数年で変化していると考えている。彼らは、中東、シリア、そしてイエメンで起きていることについて、自国の首脳が多くのウソをついていることを知っている…。しかし、彼らは本当のことを知らない。だから、本当のことを話す時が来ているのだと思う…。西側のメディアは情報ではなく、スクープを入手しようとしている。だから、聴衆に世界で何が起きているのかを客観的に知らせようとしない」。

「数十万のシリア軍兵士が殉教、あるいは負傷した。もちろん、数千、あるいは数万の市民、そして無垢な人々が砲撃、処刑、誘拐によって命を失った。失踪者の家族は今も帰りを待っている。テロリストを前にして多くの犠牲を払った。だから、この安定と復興を目にできるのです」。

「シリアでさえ、誰の誰かのために死ぬのではない。人は大義のために死ぬ。この大義とは国を守ること、自分たちの存在、そして未来を守ることだ。外国(ロシアやイランのこと)から誰かがやって来て、独裁者であれ何であれ、誰かのために死ぬということはない…。(ヴラジミール・)プーチン大統領が誰か(ロシア軍のこと)を別の誰か(アサド大統領のこと)のために派遣するということは論理的ではない…。事実、ロシアは…さまざまなかたちでロシアの国益を守ろうとしている。第1に、シリアであれ、別の国であれ、外国でテロと戦えば、それはロシア国民を守ることになる。なぜなら、テロ、そしてそのイデオロギーには国境などないからだ…。第2に、ロシアは国際法を実践・採用している」。

(2013年のダマスカス郊外県グータ地方での化学兵器使用疑惑事件に関して)「彼ら(西側)はそうした攻撃が行われたことを示す物的証拠をまったく示していない。そうしたリポートや主張があったという報道があっただけだ。つまり、単なる主張に過ぎない。シリア軍は決して化学兵器を使用したことはない」。

「西側全体が監視しているなかで、我々がそれ(化学兵器)を何度も使うことができたとでも言うのだろうか? そんなことは合理的ではない…。我々にはそんなものは必要ない。我々は前進を続けているからだ。彼ら(西側)が化学兵器使用に言及しているとき、我々は前進していた。負けてはいなかった。もしこうした兵器を使う場合、もちろんシリア軍のことを言っているのではないが…、論理的に考えて、前進をしている時ではなく、形成が不利なときに使うものだ」。

「(化学兵器使用についての)すべてのストーリーは主張に過ぎない。化学兵器が使用されたと主張する者は、それを立証すべきだ…(化学兵器が使用されたと)信じることと、証拠を示すことは別問題だ…。彼ら(米英仏)は自分たちの主張を立証する証拠とは何か? 何もないのだ」。

「(化学兵器使用疑惑事件が反体制派の偽作であることは)ユーチューブで見ることができる。彼らがすべての劇を上演した。多くの事件で犠牲者を演じている。化学兵器攻撃だけでなく、砲撃でもだ…。ユーチューブでそうしたものを見ることができるし…、我々はこうした証拠を示すことができる」。

「こうした「天使たち」つまり、ホワイト・ヘルメットのメンバーの顔をアル=カーイダの戦闘員のなかに簡単に見つけることができる…。画像はきわめてはっきりしている。あごひげを生やし、人々の首を切り、兵士の心臓を食らっている者と同じ人物の顔だ…。この地域にはホワイト・ヘルメットのPR曲芸を信じている者などいないということだ。彼らはヌスラのオフシュートだ」。

「良い戦争などない。これは自明だ。どの戦争でも犠牲者は出るが…、ある軍、ないしは国家が自国の市民を殺害しているという主張は、単純な理由で現実的なものではない。シリアでの戦争は国民の心を掴んでいる。彼らを爆撃すれば、その心は掴むことはできない…。シリア軍が国民を殺していたとしたら、国民どうして国家、大統領、そして軍を支持しているというのか?」。

「(アレッポ市東部がシリア軍の攻撃で破壊し尽くされたことに関して)アレッポ市東部にいたアル=カーイダは毎日のように市民を砲撃し、何十万人も殺害した。軍、そして国家の任務はこうしたテロリストから市民を守ることだ。テロリストを攻撃することなく、どうやってこうしたことが行えるのか?」。

「シリア軍が民間人を理由もなく意図的に殺しているという誤解を招くような話が西側では多い。ホワイト・ヘルメット、そしてテロリストの司令部がある病院を見せて、シリア軍が人道施設を攻撃し、市民を苦しめていると言うのだ。だが、実際にはまったく逆のことが起きていた。市民はこうした地域から、シリア政府の側に逃げてきた。それはアレッポ市東部だけではない…。なのになぜ我々が彼らを殺したと言うのか? こうした市民はなぜトルコに逃げなかったのか?」。

「デモが始まった当初、最初の数日で、我々は5人の警官を撃たれて失った。警官が殺されているのにどうして平和的なデモだと言えるのか」。

「(ハムザ・ハティーブくんが当局の拷問を受けて死亡したとの話は)事実ではない。そんなことはしていない…。彼は殺されたのだ。そして彼が拷問を受けたという話が作られた。だが、彼は拷問されていなかった。殺害されたのだ。彼は病院に搬送され、私は両親にも面会した。彼らが本当の話を知っている」。

「我々は拷問部隊など持っていない。シリアには拷問政策などない。なぜ拷問を行う必要があるのか? 心理的な目的か…? シリア国民の大多数は政府を支持している。だから西側やアラブ諸国のオイルダラーからの攻撃にもかかわらず、9年にわたりここにいるのだ…。それはあくまでも個人的な事件だ…。だが我々はそうした政策をとってはいない」。

「デモが始まった当初、最初の数日で、我々は5人の警官を撃たれて失った。警官が殺されているのにどうして平和的なデモだと言えるのか」。

「(ハムザ・ハティーブくんが当局の拷問を受けて死亡したとの話は)事実ではない。そんなことはしていない…。彼は殺されたのだ。そして彼が拷問を受けたという話が作られた。だが、彼は拷問されていなかった。殺害されたのだ。彼は病院に搬送され、私は両親にも面会した。彼らが本当の話を知っている」。

「我々は拷問部隊など持っていない。シリアには拷問政策などない。なぜ拷問を行う必要があるのか? 心理的な目的か…? シリア国民の大多数は政府を支持している。だから西側やアラブ諸国のオイルダラーからの攻撃にもかかわらず、9年にわたりここにいるのだ…。それはあくまでも個人的な事件だ…。だが我々はそうした政策をとってはいない」。

「(EUによる対シリア制裁に関して)彼ら(EU)はシリア国民への効果を期待していた…。この戦争のさまざまな段階で、国民が政府に反抗することを期待していた。だが、国民はそうはしなかった。彼らは国民がテロリスト、「穏健な反体制派」、ホワイト・ヘルメットの「天使たち」を支持することを期待していた。だが、国民は政府を支持した。だから、国民は苦しまねばならない、代価を払わねばならない、というのだ。何よりもまず、国民は西側のアジェンダを支持すべきだという教訓を与えねばならないというのだ。第2に、これ(制裁)は、おそらくは国民を政府に反抗させる最後の試みなのだろう。彼らは昨冬、そしてそれ以前にもこうしたことを試みたが、うまくいかなかった。なぜなら、国民はこうした話を知っていて、西側がどのように利益を得るのかを知っていたからだ」。

「米国はアフガニスタンに侵攻したが、何も得られなかった。イラクに侵攻したが、何も得られなかった。別の国にさまざまな別の方法で侵略を始めた…。米国はヘゲモニーを失いつつあるため、生き残りの戦いを行っている…。だから、米国はロシア、イラン、シリア、そして米国に対して「No」というあらゆる国と戦おうと考えた。それが西側の同盟国であってもだ。そのためには道具が要る。米国はイラクに部隊を派遣したことで、うまく行かないことに気づいた。多くを失い、米国内でさえ代償を払った。だから、プロキシ(代理)を送り込むことの方が楽なのだ。アル=カーイダはシリア政府、ロシア政府、イラン政府に対抗するためのプロキシなのだ。米国がアル=カーイダを利用するのはそのためであり、証拠もある。どうやってダーイシュ(イスラーム国、ISIS)は2014年に突如として台頭できたのか…。イラクとシリアで同時に、しかも米国製の兵器を手にして…。米国航空機の監視下で、どうして数百万バレルの石油がトルコに密輸できたのか。米国が彼らをシリア軍に対峙させたかったからだ」。

「彼(スタファン・デミストゥラ前シリア問題担当国連特別代表)は偏っていた。だから、失敗したのだ。彼は米国のアジェンダを若干スマートなかたちで実行しようとしていた…。それ(ジュネーブ・プロセス)は米国の策略だ…。移行期統治機関を通じて政府を転覆しようとするものだから失敗した…。我々がロシアとともにソチに向かったのはそのためだ。だから、ソチはうまくいっている」。

「(制憲委員会の会場となっている)ジュネーブについて話すのであれば、ここで言うジュネーブというのは、単なる場所、地理であり、政治的プロセスとしてはソチ(・プロセス)になる。どこで(会議が)開催されようと問題ではない」。

「2014年にダーイシュがシリアの石油を密輸・略奪し始めた時、彼らには二つのパートナーがあった。(トルコのレジェップ・タイイップ・)エルドアン大統領とその取り巻き、そして米国だ。だから、(米国のドナルド・)トランプ大統領は(石油を守るためにシリア駐留を続けるという)事実を述べただけだ。何も新しいことは要っていない。一部のクルドもシリアの石油を略奪しているが、米国がそのパートナーだ」。

「もちろん、我々は怒っているし、すべてのシリア人は怒っている…。だが、それは新しいことではない…。米国はいつも他国でさまざまなかたちの略奪を行ってきた。それは、石油、カネなどだけではない。米国は政治的な権利も略奪してきた」。

「石油がこの戦争の一要因だと言うのであれば、それはあり得るだろう。だが、唯一の要因ではない。米国とそれ以外の世界との間に戦争が行われているということを忘れてはならない…。ソ連崩壊後の一局世界体制はもはや機能していない。だから、ロシア、中国、インドなどが台頭しているのだ。だが、米国は世界を指導するパートナーが現れることを認めようとしない…。だから今米国は戦っている。シリアでの戦争は第三次世界大戦の小宇宙なのだ。それは武器によるものではなく、プロキシによるものだ」。

「イスラエルは我々の敵だ。我々の土地を占領している。そしてシリアに対抗するかたちで起きるすべての一部であることは自明だ。それは、テロリストとの直接の関係から分かることで、(ベンジャミン・)ネタニヤフ(首相)は、イスラエルの病院で治療を受けるテロリストを実際に見舞っている」。

「シリア軍が南部でヌスラのテロリストに対して進軍する度に、イスラエルは我が軍を爆撃した。それ以外の場所で進軍する度に、イスラエルの区空気が我が軍に対する爆撃を行った…。イスラエルの作戦とテロリストの作戦には相関関係がある…。両者は一つのアジェンダを持ち、一つの利害がある」。

「彼(ダーイシュのアブー・バクル・バグダーディー指導者)は米国の監視下で投獄されていた。米国がバグダーディーを釈放した張本人だ。何の役割も与えずに釈放することはないだろう。バグダーディーは突如として世界のイスラーム教徒のカリフを名乗ったのだ。米国が彼にこうした役割を与えるために準備したのだ。我々は彼が殺害されたという話を信じていない。おそらく殺されはしたろうが、言われている通りではないだろう。過去数年間、いや過去数十年間、テロリストとともに手を入れていた手袋から米国の手を洗うような話だ。記憶を消すためのフィクション映画のようだ。米国は、アル=カーイダ、ダーイシュ、そしてヌスラといったテロリストと直接繋がっているという記憶を世論から消し去りたいのだ。(イラクの)サッダーム・フサイン(元大統領)が捕らえられた時、米国は彼を見せた。彼が処刑されたとき、処刑が行われたことを見せた。彼の子供たちが殺されたときも、遺体を見せた。(リビアのムアンマル・)カッザーフィー(大佐)のときもだ。なぜ、(アル=カーイダのウサーマ・)ビン・ラーディンを我々に見せなかったのか。なぜ、バグダーディーの遺体を見せなかったのか。テロリストと戦っているという作り話に過ぎない。おそらく彼は賞味期限が切れたから殺されたのだ。米国は別の誰かが必要となったのだ。米国はおそらくダーイシュという名前を別の名前に変えて、ダーイシュを穏健な組織にすることで、シリア政府に対抗させるため市場で利用するのだろう」。

「我々は(バグダーディー暗殺作戦)に参加していない…。シリアのいかなる機関も米国のいかなる機関と関係を持っていない」。

「エルドアンとEUの関係は両義的だ。EUは彼を憎んでいるが、必要としている。彼が狂信的なイスラーム主義者であることを知っているので憎んでいる。EUは彼が過激派やテロリストを自分たちのもとに送り込もうとしていることを知っている」。

「(トルコからEUに送り込まれようとしているとされる)難民の大多数はシリア人だ…。彼らのすべてが過激派ではない…。事実、トルコに逃げたシリア人のほとんどは、シリアでのテロ、そしてテロリストの攻撃などを避けたためだ。だから、彼らは彼(エルドアン)を欲していないし、恐れてさえいる。だが…、シリア難民やそれ以外の難民を送ることが危険だと言うが、欧州にとってもっとも危険なのは、シリアでテロリストを支援するということだ。これがもっとも危険な問題だ。だから、これ(難民流入が欧州にとって脅威だとの考え方)は偽善だ。少なくとも数万、いやおそらくは数十万のテロリストを直接支援しておきながら、そのほとんどが穏健で、テロリストはわずかしかいない数百万人をどうして恐れることができるのか」。

「軍事的に、イドリブ県を解放することに長い時間はかからない。だが、我々がすべきこと、我々の計画は、市民を退避させることだ。それが今行われている。だが、実際のところ、彼らは自由に政府側に逃げてきてはいない…。退避しようとすると、殺されるからだ」。

「(イドリブ県へのロシア軍の)爆撃はテロリストの施設に対するものだ」

「それ(ロシア仲介によるシリア民主軍との合意)は、支配回復にかかわるものだ。どこであれシリア軍が移動し、政府のサービスを届けることができるよう領土を完全に掌握することだ。こうした領土に対して完全な主権を行使することだ。だが、今回の合意は、トルコがシリアに侵略する口実を排除するため、シリア民主軍を国境の南30キロの地点まで撤退させるというものだ…。我々は移行期間にいる。なぜなら、シリア民主軍は自分たちの装備を維持しているからだ。だが、我々は彼らにシリア軍に合流するよう誘ってきた。一部は「No」と言っている。数日前に一部は軍に参加する用意があるとして、「Yes」と言った」。

「何よりもまず、シリア民主軍はクルド人だけからなっているのではない。クルド人、アラブ人などからなっている。第2に、シリア民主軍、つまりシリア民主軍のクルド人と言っても、彼らはクルド人の一部を代表しているに過ぎない。大多数のクルド人は政府と良い関係であり、彼らは政府を支持している。だがPYDを名乗る一部は米国から公然と支援を受け、武器や資金を得て、米国とともに石油を密輸してきた。はっきり言って、彼らは米国の手先だ。彼ら全員とは言いたくはないし、彼ら全員を知っているわけではないが。だが、過去数年にわたる彼らの政策が米国を誘い込み、残留させている。米国が去りたいと言った時、彼らは怒り、最近ではシリア軍に合流したくないと言っている」。

「エルドアンには二つのアジェンダがある。ムスリム同胞団としての彼自身のアジェンダと米国の操り人形としてのアジェンダだ…。PYDは彼(エルドアン)にシリアに侵略する口実を与えた」。

「(トルコとの接触・交渉に関して)している。だが、エルドアンとではない。私と彼ではない。治安レベルでだ。ロシアを通じて行われてきた。三者会談だ。2、3回は行われた。だが何ももたらされなかった。だから、我々は敵と交渉するということには反対しない。なぜなら、トルコ人を敵だとは思っていないからだ。トルコ国民は隣人で、歴史を共有している。敵はエルドアン、彼の政策、そして彼の取り巻きだ」。

「民営化についての議論はあったが、政府、国家としてこれを拒否してきた。組合もだ。大多数はネオ・リベラル政策を拒否した。なぜなら、それが貧困層に打撃を与えるからだ…。国営セクターがなければ、戦争を生き抜くことはできなかっただろう。我々は社会主義政府なので、国営セクターには役割がある…。我々は今も貧困層を支援している。パン、石油、学校に補助金を助成している。教育は無償だ」。

「シリアに対する制裁は続いている…。米国は企業だけでなく、個人に対してもシリアに投資することを許していない…。しかし、それはたいした問題ではない。マンパワーについては、我々は国家建設に充分なそれを持っている…。我々は漸進的に国家を再建できる。だから、こうした制裁を気にはしていない。だが確実なのは、中国、ロシア、イランといった国が復興のなかで優先されるということだ…。シリアに敵対してきたすべての国は復興参与の機会を与えられることはないだろう」。

「問題(抗議デモ)はカタールがシリアにやって来たことで始まった…。カタールは彼ら(シリアの労働者たち)に当初は1週間50ドル、その後は100ドルを与えて、彼らが働かなくても済むようにして、楽にデモに参加できるようにした。その後、彼らに武器を持たせ、攻撃をさせるのは楽なことだった」。

AFP, November 11, 2019、ANHA, November 11, 2019、AP, November 11, 2019、al-Durar al-Shamiya, November 11, 2019、Reuters, November 11, 2019、RT, November 11, 2019、SANA, November 11, 2019、SOHR, November 11, 2019、UPI, November 11, 2019などをもとに作成。

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