米中央軍(CENTCOM)は、5月10日にシリア、イラク領内のダーイシュ(イスラーム国)拠点などに対して14回の空爆を行ったと発表した。
このうちシリア領内での空爆は5回で、シャッダーディー市近郊(2回)、マンビジュ市近郊(1回)、ワリード村近郊(2回)に対して攻撃が行われた。
CENTCOM, May 11, 2016などをもとに作成。
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Detail Report on the Arab Spring in Syria: Latest Situation in Syria / アラビア語の新聞、通信社、ウェブサイトなどを通じて収集した情報をもとに、シリア情勢をより網羅的に把握・紹介することをめざします。
複数の外交筋によると、ロシアが、国連安保理のアル=カーイダおよびターリバーン制裁委員会が定める制裁対象リストにシャーム自由人イスラーム運動とイスラーム軍を追加記載することを要請したが、米国、イギリス、フランス、ウクライナの4カ国がこれを却下した。
シャーム自由人イスラーム運動は、アル=カーイダのメンバーらが結成した武装集団だが、アル=カーイダとの関係を否定している。しかし、イドリブ県、アレッポ県、ダマスカス郊外県など各地でシリアのアル=カーイダと目されるシャームの民のヌスラ戦線と共闘しており、最近では、アレッポ市南部郊外でヌスラ戦線などとともに新生ファトフ軍を指導し、シリア政府支配地域への攻勢を続けている。
一方、イスラーム軍は、アル=カーイダ系の組織ではないが、シャーム自由人イスラーム運動とともに、シリアのアル=カーイダと目されるシャームの民のヌスラ戦線と共闘している。
両者は、リヤド最高交渉委員会に参加していたが、ジュネーブ3会議第3ラウンドにおいて、委員会を脱会し、米国・ロシアによる敵対行為停止合意(2月27日)を破棄、その後のシリア軍による「講和規定」適用や米国・ロシアによる停戦合意を無視して、戦闘を続けている。
ロシアによる提案を拒否した米国は、国連代表部報道官を通じて、停戦を無視するシャーム自由人イスラーム運動とイスラーム軍が、「停戦に参加している…。両者をブラックリストに記載すると停戦に悪影響を及ぼす」と述べた。
また英国の国連代表部報道官は、シャーム自由人イスラーム運動とイスラーム軍が「イスラーム過激派だが、アル=カーイダやダーイシュ(イスラーム国)との関係を拒否している…。両組織の役割は、政治的解決を拒否するヌスラ戦線、ダーイシュとは違う…。両組織を孤立させれば、その過激派をもたらし、政治的解決が遠のく」と述べ、ロシアの提案を拒否した理由を正当化した。
AFP(5月11日付)などが伝えた。
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一方、SANA(5月11日付)によると、バッシャール・ジャアファリー国連シリア代表は、ロシアの要請が却下されたことに対して「国連憲章や国際法の判断への暗殺」と批判、「危機を長引かせようとする当事者たちに…薄っぺらな名目によって内政干渉をすることを止めるよう言いたい」と表明した。
AFP, May 11, 2016、AP, May 11, 2016、ARA News, May 11, 2016、Champress, May 11, 2016、al-Hayat, May 12, 2016、Iraqi News, May 11, 2016、Kull-na Shuraka’, May 11, 2016、al-Mada Press, May 11, 2016、Naharnet, May 11, 2016、NNA, May 11, 2016、Reuters, May 11, 2016、SANA, May 11, 2016、UPI, May 11, 2016などをもとに作成。
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イドリブ県では、シリア人権監視団によると、戦闘機(所属明示せず)がビンニシュ市、ナイラブ村各所を空爆し、シャーム自由人イスラーム運動の司令官を含む10人が死亡、数十人が負傷した。
これに関して、ARA News(5月10日付)は、地元の活動家の一人の話として、シリア軍の空爆は市内のシャーム自由人イスラーム運動の拠点の一つを標的とし、これにより司令官1人が死亡、多数のメンバーが死傷したと伝えた。
しかし、クッルナー・シュラカー(5月10日付)は、シリア軍がビンニシュ市を空爆し、民間人10人が死亡、25人が負傷した、と伝えた。
シリア人権監視団によると、戦闘機(所属明示せず)はまた、アリーハー市一帯、マストゥーマ軍事基地一帯、カフルシャラーヤー村、アウラム・ジャウズ村一帯を空爆した。
シリア軍ヘリコプターはまた、ジスル・シュグール市一帯にビラを散布し、武装集団戦闘員に投降を呼びかけた。
一方、SANA(5月10日付)によると、シャームの民のヌスラ戦線、シャーム自由人イスラーム運動などからなるファトフ軍がマアッラトミスリーン市、ビンニシュ市からフーア市、カファルヤー町を砲撃し、住民5人が負傷した。
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ダマスカス郊外県では、シリア人権監視団によると、戦闘機(所属明示せず)がダイル・アサーフィール市一帯を8回、またドゥーマー市各所を3回にわたり空爆した。
また、クッルナー・シュラカー(5月10日付)によると、シリア軍とヒズブッラー戦闘員はザバダーニー市一帯を激しく砲撃したという。
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アレッポ県では、シリア人権監視団によると、アレッポ市郊外のアナダーン市に近いタームーラ村でシリア軍、国防隊、外国人戦闘員がシャームの民のヌスラ戦線、シャーム自由人イスラーム運動などからなるファトフ軍と交戦した。
シリア軍はまた、アンジャーラ村各所を地対地ミサイルと思われる砲弾で攻撃した。
一方、SANA(5月10日付)によると、反体制武装集団が、シリア軍による「講和規定」適用を無視してアレッポ市ラームーサ交差点一帯、スライマーン・ハラビー地区を砲撃・狙撃し、住民1人が死亡した。
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ハマー県では、シリア人権監視団によると、ジハード主義武装集団がズラーキーヤート村のシリア軍拠点を砲撃した。
これに対してシリア軍は、サルマーニーヤ村一帯を砲撃した。
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ダルアー県では、SANA(5月10日付)によると、シリア軍がダルアー市旧税関地区、ナスィーブ村間の街道、ヤードゥーダ村でシャームの民のヌスラ戦線を攻撃した。
一方、クッルナー・シュラカー(5月11日付)によると、ウマリー旅団連合、部族軍、部族師団が、シリア軍とダーイシュ(イスラーム国)に対抗するためのラジャー統合作戦司令室を設置した。
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ロシア国防省は、ラタキア県フマイミーム航空基地のシリア駐留ロシア軍司令部に設置された当事者和解調整センターが、5月9日に2件の停戦違反が発生したことを確認したと発表した。
停戦違反はアレッポ県とラタキア県で発生し、シャーム自由人イスラーム運動、イスラーム軍が砲撃を行ったという。
米・ロシアによる敵対行為停止合意が発効した2月27日以降の停戦違反件総数は508件。
AFP, May 10, 2016、AP, May 10, 2016、ARA News, May 10, 2016、Champress, May 10, 2016、al-Hayat, May 11, 2016、Iraqi News, May 10, 2016、Kull-na Shuraka’, May 10, 2016、May 11, 2016、al-Mada Press, May 10, 2016、Naharnet, May 10, 2016、NNA, May 10, 2016、Reuters, May 10, 2016、SANA, May 10, 2016、UPI, May 10, 2016などをもとに作成。
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ヒムス県では、シリア人権監視団によると、ダーイシュ(イスラーム国)が県東部のタイフール航空基地(T4)一帯に侵攻、シリア軍と交戦した。
クッルナー・シュラカー(5月10日付)などによると、ダーイシュはこれにより、タイフール航空基地一帯に近い放棄された大隊基地を制圧した。
両者はまた、シャーイル油田一帯、マクサル・ヒサーン村一帯でも交戦する一方、ジュッブ・ジャッラーフ村近郊では、爆弾が仕掛けられた車とオートバイが爆発し、13人が死亡した。
一方、SANA(5月10日付)によると、シリア軍がジャズル油田、マフル油田一帯、フワイスィース村でダーイシュ(イスラーム国)拠点、車輌を空爆、またウンク・ハワー村、バーディラ村一帯でダーイシュ戦闘員に対して攻撃を行った。
他方、ダーイシュ(イスラーム国)は通信部門のアアマーク通信を通じて、フワイスィース村での戦闘で、シリア軍ヘリコプターを撃墜したと発表した。
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ハサカ県では、シリア人権監視団によると、シャッダーディー市郊外のカシュカシュ村一帯でダーイシュ(イスラーム国)と西クルディスタン移行期民政局(ロジャヴァ)人民防衛隊(YPG)主体のシリア民主軍が交戦した。
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スワイダー県では、SANA(5月10日付)によると、シリア軍がサアド村でダーイシュ(イスラーム国)に対して攻撃を加えた。
AFP, May 10, 2016、AP, May 10, 2016、ARA News, May 10, 2016、Champress, May 10, 2016、al-Hayat, May 11, 2016、Iraqi News, May 10, 2016、Kull-na Shuraka’, May 10, 2016、al-Mada Press, May 10, 2016、Naharnet, May 10, 2016、NNA, May 10, 2016、Reuters, May 10, 2016、SANA, May 10, 2016、UPI, May 10, 2016などをもとに作成。
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アレッポ県では、シリア人権監視団によると、北西部のトルコ国境に近いアアザーズ市郊外で、ダーイシュ(イスラーム国)がジハード主義武装集団を含む反体制武装集団と交戦した。
ARA News(5月10日付)によると、ダーイシュの攻撃はジャーリズ村とスーラーン・アアザーズ町を結ぶ回廊一帯に対して行われ、シャーム軍団、ハムザ旅団が応戦したという。
AFP, May 10, 2016、AP, May 10, 2016、ARA News, May 10, 2016、Champress, May 10, 2016、al-Hayat, May 11, 2016、Iraqi News, May 10, 2016、Kull-na Shuraka’, May 10, 2016、al-Mada Press, May 10, 2016、Naharnet, May 10, 2016、NNA, May 10, 2016、Reuters, May 10, 2016、SANA, May 10, 2016、UPI, May 10, 2016などをもとに作成。
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イスラエルの民間テレビ局チャンネル2(5月10日付)などは、イスラエル空軍がレバノン国境に近いシリア領内を移動中のヒズブッラーの車列を空爆したと伝えた。
チャンネル2によると、空爆は、シリアの反体制武装集団の「安全な避難所」(safe haven)に近いヒズブッラーの拠点があるとされる場所に対して行われ、武器を搬送する車列が標的となったという。
ナハールネット(5月10日付)などが伝えた。
AFP, May 10, 2016、AP, May 10, 2016、ARA News, May 10, 2016、Champress, May 10, 2016、al-Hayat, May 11, 2016、Iraqi News, May 10, 2016、Kull-na Shuraka’, May 10, 2016、al-Mada Press, May 10, 2016、Naharnet, May 10, 2016、NNA, May 10, 2016、Reuters, May 10, 2016、SANA, May 10, 2016、UPI, May 10, 2016などをもとに作成。
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USAID(米国際開発庁)は声明を出し、トルコでシリアへの支援事業に参加している14の団体・個人の活動に対して活動停止処分を下したと発表した。
声明は、「談合、幾多の贈収賄に共謀してきた業者、NGO職員などのネットワークがシリアでの人道支援配給にかかる契約に関与してきた」としたうえで、トルコでの物資調達に際して、NGOから業者への多額の代金支払いが組織的に行われてきたことを明らかにした。
また、声明による、トルコの民間業者は、低品質の毛布や資材などの商品をNGOに法外な価格で販売し、その差額を着服していたという。
AFP(5月10日付)によると、こうした不正取引には、米国の国際医療隊(IMC)、アイルランドのGoal、英デヴィッド・ミリバンド元外相が代表を務める国際救済委員会(IRC)といった団体が関与していたとされ、シリアに対する最大規模の医療支援を行うIMCは、すでに多数の職員を解雇したという。
またIRC、GOALも事件発覚を受け、多数のプロジェクトを中止したという。
AFP, May 10, 2016、AP, May 10, 2016、ARA News, May 10, 2016、Champress, May 10, 2016、al-Hayat, May 11, 2016、Iraqi News, May 10, 2016、Kull-na Shuraka’, May 10, 2016、al-Mada Press, May 10, 2016、Naharnet, May 10, 2016、NNA, May 10, 2016、Reuters, May 10, 2016、SANA, May 10, 2016、UPI, May 10, 2016などをもとに作成。
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イランのISNA通信(8月10日付)は、イラン・イスラーム革命防衛隊のホセイン・アリー・レダーイー報道官(マーザンダラーン州)の話として、アレッポ市南部郊外ハーン・トゥーマーン市一帯での戦闘の殺害されたイラン軍「顧問」13人のうち、「12人の遺体がタクフィール主義集団の手にある」と伝えた。
AFP, May 10, 2016、AP, May 10, 2016、ARA News, May 10, 2016、Champress, May 10, 2016、al-Hayat, May 11, 2016、Iraqi News, May 10, 2016、Kull-na Shuraka’, May 10, 2016、al-Mada Press, May 10, 2016、Naharnet, May 10, 2016、NNA, May 10, 2016、Reuters, May 10, 2016、SANA, May 10, 2016、UPI, May 10, 2016などをもとに作成。
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エジプトのアブドゥルファッターフ・スィースィー大統領はロシアのヴラジミール・プーチン大統領と電話会談を行い、シリア情勢、リビア情勢などについて意見を交わした。
エジプトのアラー・ユースフ大統領付報道官によると、会談において、スィースィー大統領は、ISSG(国際シリア支援グループ)の共同議長国であるロシアと米国がシリア情勢への対応をめぐって合意に達することが重要だとしたうえで、エジプトが両国の合意と、シリアでの紛争解決に向けた取り組みを支援する旨伝えたという。
『ハヤート』(5月11日付)が伝えた。
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ロシアのセルゲイ・ラブロフ外務大臣は、イランのモハンマド・ジャヴァード・ザリーフ外務大臣と電話会談を行い、シリア情勢への対応について協議した。
ロシア外務省が発表した声明によると、会談では、ISSG(国際シリア支援グループ)による一連の合意(ウィーン合意)、国連安保理決議第2254号、第2268号に基づき、ジュネーブ3会議でのシリア政府と反体制派の代表団の和平協議を通じ、紛争解決に向けた政治プロセスの実現をめざすことを確認するとともに、シリア国内の「テロとの戦い」については、外国からのテロ支援のチャンネルを遮断する必要を強調した。
SANA(5月10日付)が伝えた。
AFP, May 10, 2016、AP, May 10, 2016、ARA News, May 10, 2016、Champress, May 10, 2016、al-Hayat, May 11, 2016、Iraqi News, May 10, 2016、Kull-na Shuraka’, May 10, 2016、al-Mada Press, May 10, 2016、Naharnet, May 10, 2016、NNA, May 10, 2016、Reuters, May 10, 2016、SANA, May 10, 2016、UPI, May 10, 2016などをもとに作成。
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