国連安保理でイドリブ県情勢への対応協議:ロシア、シリアはホワイト・ヘルメットによる化学兵器攻撃捏造準備、米英仏の敵対姿勢を非難(2018年8月28日)

国連安保理で、シリア情勢、とりわけシリア軍による攻撃が間近に迫っているとされるイドリブ県情勢への対応をめぐる会合が開かれた。

会合はロシアの呼びかけによるもの。

会合では、米国のケリー・エッケルズ=クリー国連経済社会理事会代表が、イドリブ県で開始されようとしているシリア軍の攻撃とロシアによる支援に懸念を表明、これを非難した。

また、シリア政府が国民に対して再び化学兵器を使用しようとしていると指摘、英仏とともにこうした攻撃に対しては適切な対抗措置を講じると脅迫した。

フランスのアンヌ・ゲゲン国連大使が、市民を殺戮し、学校や病院を破壊するシリア軍の軍事作戦を止めるべきだと主張、国際社会に対してシリア政府に緊張を悪化させないよう迫るべきだと訴えた。

ロシアのワシーリー・ネベンジャ国連大使は、ロシアのイニシアチブのもとに、シリア政府の支配下に復帰した地域で難民、避難民の帰還が進んでいると強調する一方、「UNHCR・・・。はシリア人の帰還を支援するのではなく、なぜホワイト・ヘルメットを支援している」と批判した。

また、米国が違法に占領下に置いているシリア南部に航空基地の建設を進め、同地をテロリスト数百人が拠点・避難所としていると指摘、これを避難しない国際社会の二重基準を非難し、「具体的支援」を改めて求めた。

一方、ロシア国防省がシリア軍による化学兵器使用を隠蔽しようとしているとの英国国連代表大使の指摘について、「滑稽」だと反論、「良識ある人々は三カ国(米英仏)の報復の危険があるような無目的の軍事手段を使わない」と述べ、シリア軍を擁護、欧米諸国が、シリアのアル=カーイダであるヌスラ戦線(シャーム解放機構)などのテロ組織を支援していると逆に批判した。

8月の議長国である英国のカレン・ピース国連代表は、「現状のままでは…シリアのための「マーシャル・プラン」はない」と述べ、西側諸国によるシリア復興支援に消極的な姿勢を示した。

また、ホワイト・ヘルメットと英国が化学兵器攻撃を捏造しようとしているロシアの指摘をプロパガンダだと非難した。

シリアのバッシャール・ジャアファリー国連代表は、シリア政府がUNOCHAによる人道支援に協力していると主張する一方、「この部屋の巨象」(西側諸国)が、テロ組織に対する戦争における自らの責任を認めようとせず、その代わりにホワイト・ヘルメットを駆使して新たな化学兵器攻撃を捏造し、シリアに対する敵対政策を継続しようとしている、と批判した。

AFP, August 29, 2018、ANHA, August 29, 2018、AP, August 29, 2018、al-Durar al-Shamiya, August 29, 2018、al-Hayat, August 31, 2018、Reuters, August 29, 2018、SANA, August 29, 2018、UPI, August 29, 2018などをもとに作成。

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ホワイト・ヘルメットのサーリフ代表「化学兵器攻撃に関するロシアの発言は、イドリブ県で彼らがそれを使うための口実だ」(2018年8月28日)

トルコで活動するホワイト・ヘルメットのラーイド・サーリフ代表はイナブ・バラディー(8月28日付)の取材に対し、「イドリブ県での化学兵器攻撃に関するロシアの最近の嫌疑は、彼らがそれをこの地域で使うための口実だ」と非難した。

サーリフ代表は「イドリブ県での化学兵器攻撃をめぐるロシアの動きは、ハーン・シャイフーン市(イドリブ県)やダマスカス郊外県東グータ地方のドゥーマー市で化学兵器攻撃が行われた時に行われたことと似ている」としたうえで、ロシア・シリア両軍がアル=カーイダ系組織のシャーム解放機構やホワイト・ヘルメットの自作自演に見せ掛けて化学兵器を使用しようとしていると断じた。

また、ロシア・シリア両軍による化学兵器が行われた場合、ホワイト・ヘルメットにはこれに対処するための十分な技術を持っていないと窮状を訴えた。

Reuters, August 27, 2018

AFP, August 28, 2018、ANHA, August 28, 2018、AP, August 28, 2018、al-Durar al-Shamiya, August 28, 2018、al-Hayat, August 29, 2018、’Inab Baladi, August 28, 2018、Reuters, August 28, 2018、SANA, August 28, 2018、UPI, August 28, 2018などをもとに作成。

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マティス米国務長官「シリアでの化学兵器の問題についてロシアと最近協議した」(2018年8月28日)

ジェームズ・マティス米国務長官は記者会見で「我々の目的は、シリア国民がアサドによって指導されない政府を選ぶことだ」と述べた。

マティス国務長官はまた、「シリアでの化学兵器の問題についてロシアと最近協議した」と付言したが、その内容については明らかにしなかった。

一方、米国防総省のエリック・ペイホン報道官は、米国がシリアへのミサイル攻撃に備えてアラビア湾などで軍備を増強しているとのロシアの主張に対して、「プロパガンダに他ならず、正しくない」と否定しつつ、「しかしこのことは米国が(ミサイル攻撃の)用意ができていないことを意味するものではない」と述べた。

『ハヤート』(8月29日付)などが伝えた。

AFP, August 28, 2018、ANHA, August 28, 2018、AP, August 28, 2018、al-Durar al-Shamiya, August 28, 2018、al-Hayat, August 29, 2018、Reuters, August 28, 2018、SANA, August 28, 2018、UPI, August 28, 2018などをもとに作成。

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2011年3月以降トルコ軍国境警備隊は避難しようとしたシリア人400人を射殺(2018年8月28日)

ドゥラル・シャーミーヤ(8月28日付)は、複数の活動家による記録に基づき、2011年3月15日以降、トルコ軍国境警備隊が国境で銃殺したシリア人の数が400人にのぼっていると伝えた。

射殺されたのは、トルコ領内に避難しようとしていた難民で、400人のうち子供は74人、女性は36人だったという。

AFP, August 28, 2018、ANHA, August 28, 2018、AP, August 28, 2018、al-Durar al-Shamiya, August 28, 2018、al-Hayat, August 29, 2018、Reuters, August 28, 2018、SANA, August 28, 2018、UPI, August 28, 2018などをもとに作成。

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シリア民主評議会(YPG主体のシリア民主軍)は大幅譲歩にもかかわらずシリア政府に交渉継続を拒否され、ハサカ県カーミシュリー市で統一地方選挙立候補者数十人を拘束して対抗(2018年8月28日)

バスニュース(8月28日付)は、西クルディスタン移行期民政局(ロジャヴァ)人民防衛隊(YPG)主体のシリア民主軍の政治母体であるシリア民主評議会の代表団がシリア政府との会談を終えて、首都ダマスカスからハサカ県に帰還して以降、両者の関係がにわかに悪化していると伝えた。

同サイトによると、シリア政府はシリア民主評議会代表団との会談で、両者の交渉継続に向けた合同委員会の設置を拒否、これによって事態が悪化、ハサカ県カーミシュリー市では、ロジャヴァの治安機関であるアサーイシュが9月16日に投票が予定されている統一地方選挙の立候補者数十人を拘束するなど強硬な姿勢に出ているという。

シリア民主評議会の代表団は、シリア政府に対して、連邦制や「クルド」という呼称を用いないことなど大幅な譲歩を行ったが、シリア政府の態度は軟化しなかったという。

同サイトによると、シリア民主評議会は近く、シリア民主軍の支配下にある地域を統合するための新たな民政局を正式に発足させる予定で、この民政局の呼称は「クルド」の文字は削除されているという。

al-Durar al-Shamiya, August 28, 2018

AFP, August 28, 2018、ANHA, August 28, 2018、AP, August 28, 2018、Basnews, August 28, 2018、al-Durar al-Shamiya, August 28, 2018、al-Hayat, August 29, 2018、Reuters, August 28, 2018、SANA, August 28, 2018、UPI, August 28, 2018などをもとに作成。

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イラン・ファルス通信:米諜報機関がシリアを極秘訪問し、タンフ国境通行所からの撤退の条件として三つの要求を提示(2018年8月28日)

イランのファルス通信(8月28日付)は、米諜報機関の使節団がシリアを極秘訪問したと伝えた。

同通信社によると、28日深夜、UAEの特別機1機がダマスカス国際空港に到着、その約40分後に、黒塗りの四輪駆動車多数からなる車列が特別機に乗っていた米諜報機関の高官を乗せて、ダマスカス県マッザ区にある、アリー・マムルーク国民安全保障会議議長の事務所に向かったという。

al-Durar al-Shamiya, August 28, 2018

米諜報機関の使節団は、この事務所で、マムルーク国民安全保障会議議長のほか、ディーブ・ザイトゥーン総合情報部長、ムワッファク・アスアド少将(参謀副長)と約4時間にわたり会談、シリア情勢、中東地域情勢などについて意見を交わしたという。

同通信社によると、この会談で、米諜報機関の使節団は、米軍をタンフ国境通行所(ヒムス県)から撤退させる用意があるとマムルーク国民安全保障会議議長らに伝える一方、その見返りとして、イランのシリア南部からの完全撤退、シリア東部の油田地帯での米企業の利権の文書による承認、シリア政府が把握している反体制武装集団や外国人戦闘員についての情報(死者数、生存情報など)の提供、を求めたという。

これに対して、マムルーク国民安全保障会議議長はイランの撤退を拒否する一方、米企業の利権の承認については、シリア政府が策定する復興政策において善意に基づいて米企業の参入を認める可能性を示唆したという。

反体制武装集団の情報については、二国間の関係が確定しない限りは協力できないとの姿勢を示したという。

AFP, August 28, 2018、ANHA, August 28, 2018、AP, August 28, 2018、al-Durar al-Shamiya, August 28, 2018、FARS, August 28, 2018、al-Hayat, August 29, 2018、Reuters, August 28, 2018、SANA, August 28, 2018、UPI, August 28, 2018などをもとに作成。

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ロシアのショイグ国防大臣はイドリブ県の反体制派と平和的解決に向けた協議を行っていると述べるも、国民解放戦線はこれを否定(2018年8月28日)

ロシアのセルゲイ・ショイグ国防大臣は、「当事者和解調整センターの職員が、イドリブ県の反体制武装集団の司令官やシャイフたちとシリア危機の平和的解決に向けて協議を行っている」と述べた。

協議を行っている武装集団の組織名や司令官の名前は明らかにしなかったが、「現在協議されているもっとも重要な問題はイドリブ県の緊張緩和地帯の状況、そして難民の帰還だ」としつつ、「かつて「穏健な反体制派」と呼ばれていた彼らとの協議はあらゆるレベルで困難なもののだが…、その目的は、ダルアー県やダマスカス郊外県東グータ地方での危機解決と同じように、この地域で平和的に事態を収拾することになる」と付言した。

スプートニク・ニュース(8月28日付)が伝えた。

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これに対して、国民解放戦線は声明を出し、ロシア側との交渉の事実はないと発表した。

AFP, August 28, 2018、ANHA, August 28, 2018、AP, August 28, 2018、al-Durar al-Shamiya, August 28, 2018、al-Hayat, August 29, 2018、Reuters, August 28, 2018、SANA, August 28, 2018、Sputnik News, August 28, 2018、UPI, August 28, 2018などをもとに作成。

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ロバック元駐バーレーン米国大使ら有志連合高官がロジャヴァ支配下のダイル・ザウル県東部でアラブ系部族長と会談(2018年8月28日)

西クルディスタン移行期民政局(ロジャヴァ)人民防衛隊(YPG)主体のシリア民主軍の支配下にあるダイル・ザウル県東部を視察訪問中のウィリアム・ロバック(William Roebuck)元駐バーレーン米国大使ら有志連合高官一行は、ブサイラ市でアラブ系部族長および同地一帯の地元評議会幹部らと会談した。

会談は非公開で行われ、地域のインフラ整備や社会問題などについて意見が交わされたという。

ANHA(8月28日付)が伝えた。

https://youtu.be/ukRWjH_yV4g

ANHA, August 28, 2018

AFP, August 28, 2018、ANHA, August 28, 2018、AP, August 28, 2018、al-Durar al-Shamiya, August 28, 2018、al-Hayat, August 29, 2018、Reuters, August 28, 2018、SANA, August 28, 2018、UPI, August 28, 2018などをもとに作成。

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トルコの実質占領下にあるジャラーブルス市(アレッポ県)でシャーム戦線と自由警察が交戦(2018年8月28日)

アレッポ県では、ANHA(8月28日付)によると、トルコの実質占領下にあるジャラーブルス市でシャーム戦線と自由警察が交戦し、双方に死傷者が出た。

交戦は、自由警察がシャーム戦線のメンバー1人をダーイシュ(イスラーム国)のメンバーだの容疑で逮捕したことがきっかけで起こったという。

al-Durar al-Shamiya, August 28, 2018

AFP, August 28, 2018、ANHA, August 28, 2018、AP, August 28, 2018、al-Durar al-Shamiya, August 28, 2018、al-Hayat, August 29, 2018、Reuters, August 28, 2018、SANA, August 28, 2018、UPI, August 28, 2018などをもとに作成。

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シリア軍はハマー県北部でシャーム解放機構などの拠点を砲撃、ダマスカス郊外県でダーイシュを追撃(2018年8月28日)

ハマー県では、SANA(8月28日付)によると、シリア軍がイドリブ県に隣接する県北部のハスラヤー村などでシャーム解放機構、イッザ軍の拠点に対して砲撃を行った。

また、シリア人権監視団によると、シリア軍はズィヤーラ町を砲撃した。

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ダマスカス郊外県では、SANA(8月28日付)によると、シリア軍が予備部隊とともにスワイダー県東部に隣接するサファー丘でダーイシュ(イスラーム国)に対する掃討戦を続け、カブル・シャイフ・フサイン地区一帯を制圧した。

AFP, August 28, 2018、ANHA, August 28, 2018、AP, August 28, 2018、al-Durar al-Shamiya, August 28, 2018、al-Hayat, August 29, 2018、Reuters, August 28, 2018、SANA, August 28, 2018、UPI, August 28, 2018などをもとに作成。

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ダマスカス郊外県ダーライヤー市に住民数千人が避難生活を終えて帰宅(2018年8月28日)

ダマスカス郊外県では、SANA(8月28日付)によると、戦闘を避けて避難生活を送っていたダーライヤー市住民数千人が、同市のインフラや治安が回復したのを受けて帰宅した。

帰還した住民は市の中心部にシリア国旗を掲揚し、帰還を祝った。

SANA, August 28, 2018

AFP, August 28, 2018、ANHA, August 28, 2018、AP, August 28, 2018、al-Durar al-Shamiya, August 28, 2018、al-Hayat, August 29, 2018、Reuters, August 28, 2018、SANA, August 28, 2018、UPI, August 28, 2018などをもとに作成。

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ロシア難民受入移送居住センター:7月18日以降に帰国したシリア難民は9,207人のまま(2018年8月28日)

ロシア国防省は、合同調整センター所轄の難民受入移送居住センターの日報(8月28日付)を公開し、7月18日以降に帰国したシリア難民の数が9,207人に達したと発表した。

内訳は、レバノンからの帰国者8,889人(ザムラーニー国境通行所、ジュダイダト・ヤーブース国境通行所、ダブスィーヤ国境通行所、クサイル国境通行所を経由して帰国)、ヨルダンからの帰国者318人(ナスィーブ国境通行所を経由して帰国)。

なお、45カ国で難民登録したシリア人の数は698万2302人(うち女性209万4961人、子供356万974人)。

 

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ロシア国防省は声明を出し、過去24時間(8月28日)で、「緊張緩和地帯設置にかかる覚書」への違反を27件(ラタキア県10件、イドリブ県2件、アレッポ県14件、ハマー県1件)確認したと発表した。

トルコ側の監視チームも1件(アレッポ県)の停戦違反を確認した。

Ministry of Defence of the Russian Federation, August 28, 2018をもとに作成。

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トルコはシリアのアル=カーイダを解体し、メンバーを非アル=カーイダ系組織に吸収するため説得工作を続ける(2018年8月28日)

『ハヤート』(8月28日付)は、「自由シリア軍」の複数の幹部筋の話として、シリアのアル=カーイダであるシャーム解放機構を解体し、アル=カーイダの系譜を汲まない組織にメンバーを吸収するため、トルコが説得工作を続けていると伝えた。

同消息筋によると、トルコの申し出に対して、シャーム解放機構内の一部の勢力が応じようとしているが、急進勢力は拒否の姿勢を貫き、イスラーム国家の樹立をめざし続けようとしているという。

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ドゥラル・シャーミーヤ(8月28日付)も、トルコ当局が反体制武装集団と連携し、シャーム解放機構に圧力をかけ、解体を迫っていると伝えた。

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一方、シャーム解放機構に近いイバー通信(8月28日付)は、同組織の高官筋の話として、組織解体に関する情報が事実ではないと否定した、と伝えた。

AFP, August 27, 2018、ANHA, August 27, 2018、AP, August 27, 2018、al-Durar al-Shamiya, August 27, 2018, August 28, 2018、al-Hayat, August 28, 2018、Reuters, August 27, 2018、SANA, August 27, 2018、UPI, August 27, 2018、Wikalat al-Iba’ al-Ikhbariya, August 28, 2018などをもとに作成。

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