アサド大統領は、イドリブ県南部のフバイト村一帯などの前線を視察「イドリブはトルコの前哨地であるがゆえにきわめて重要だ。シリア北東部の戦闘は、軍を分断するのが狙いだ。イドリブでの戦いを決着させることがシリア全土における混乱とテロを終わらせる礎になる」(2019年10月22日)

アサド大統領は、イドリブ県南部のフバイト村一帯やハマー県北部の前線を視察し、将兵らと面談した。

視察には、アリー・アブドゥッラー・アイユーブ国防大臣やシリア軍司令官が同行した。

アサド大統領は次のようにトルコを批判し、前線の将兵を鼓舞した。

「(レジェップ・タイイップ・)エルドアン(大統領)は盗人だ。工場、穀物、石油をこれまでに盗み、今度は領土を盗もうとしている…。イドリブ前線は、彼ら(トルコ)にとっての前哨地であるがゆえにきわめて重要だ。一方、東部(シリア北東部)での戦闘は、軍を分断するのが狙いだ…。だから、我々はいつも、イドリブでの戦いを決着させることがシリア全土における混乱とテロを終わらせる礎になると考えている」。

また、人民防衛隊(YPG)主体のシリア民主軍や北・東シリア自治局を主導する民主統一党(PYD)については次のように述べて非難した。

「攻撃や盗みに直面したら、互いに支え合い、連携し合わなければならない。だが、一部のシリア人は、とくに戦争勃発後最初の数年間、そうしなかった。我々は彼ら(クルド民族主義勢力)に「外国ではなく、軍、人民、そして祖国に賭けろ」と言ってきた。だが、呼びかけへの応えはなく、彼らは米国に賭けるようになった…。彼らは反逆し、領土を手渡した…。彼らが戦い、防衛にあたっているという美談を長年にわたって耳にしてきたが、我々が最近になって目にしているのは、彼らが支配しているとされる地域の大部分を、トルコが米国の計画に沿って数日で制圧しているという事態だ」。

AFP, October 22, 2019、ANHA, October 22, 2019、AP, October 22, 2019、al-Durar al-Shamiya, October 22, 2019、Reuters, October 22, 2019、SANA, October 22, 2019、SOHR, October 22, 2019、UPI, October 22, 2019などをもとに作成。

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ロイター通信:シリア・トルコ政府が秘密裏に直接・間接の接触を続ける(2019年10月22日)

ロイター通信(10月22日付)は、トルコ治安当局高官の話として、シリア政府とトルコ政府が秘密裏に直接・間接の接触をとっていることを明らかにした。

この高官は「我々は戦場で問題が生じるのを避けるため、以前から軍事・諜報関連の問題にかかる連絡をアサド政権ととっている」と述べた。

この高官によると、両国政府の最初の接触は、シリア・ロシア軍がイドリブ県への攻撃を激化させた数ヶ月前に行われ、シリア北東部での情勢について意見が交わされたという。

ただし、この接触はトルコによる「平和の泉」作戦とは無関係だったという。

両国政府の接触は多くの場合、ロシアを経由して行われているが、両軍の対立を回避するために直接連絡をとり合うこともあるという。

AFP, October 22, 2019、ANHA, October 22, 2019、AP, October 22, 2019、al-Durar al-Shamiya, October 22, 2019、Reuters, October 22, 2019、SANA, October 22, 2019、SOHR, October 22, 2019、UPI, October 22, 2019などをもとに作成。

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ロシアのプーチン大統領とトルコのエルドアン大統領は「平和の泉」作戦地域以外からのYPGの撤退、シリア・ロシア軍の展開など10項目を合意(2019年10月22日)

ロシアのヴラジミール・プーチン大統領とトルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領がロシアの避暑地ソチで首脳会談を行い、シリア情勢、とりわけトルコが侵攻中のシリア北東部への対応について協議した。

会談は、両国の外務大臣、国防大臣らも交えたかたちで6時間にわたり行われた。

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会談後、両首脳は共同記者会見を開き、以下10点を合意したと発表した。

1. 両国は、シリアの地理的・政治的統合の保持とトルコの国家安全保障の防衛を遵守する。
2. 両国は、シリア領内であらゆるテロと戦い、分離主義計画を阻止する。
3. 「平和の泉」作戦が実施されているラッカ県タッル・アブヤド市からハサカ県ラアス・アイン市にいたる幅32キロの地域の現状を維持する。
4. 両国は、アダナ合意の重要性を確認し、ロシアは現状を踏まえたかたちでの同合意の実施をめざす。
5. 10月23日12:00から、ロシア軍憲兵隊とシリア軍国境警備隊がシリア・トルコ国境のシリア領側に展開し、トルコ国境から30キロ以内の地域からの人民防衛隊(YPG)の撤退を促す。展開地域からは「平和の泉」作戦が実施されている上記地域は除く。YPGの撤退は150時間以内に完了する。合わせて、「平和の泉」作戦が実施されている上記地域の東西地域のうち、ハサカ県カーミシュリー市を除く幅10キロの地域で、トルコとロシアが合同パトロールを開始する。
6. YPGは部隊と武器をアレッポ県マンビジュ市、タッル・リフアト市から完全に撤退させる。
7. 両国は、テロリスト潜入を阻止するために必要な措置を講じる。
8. 難民の自発的且つ安全な帰還を促すための合同の努力を行う。
9. この文書の実施を監視・検証するための合同の仕組みを構築する。
10. 両国は、アスタナ合意の枠組みのなかで、シリア紛争の持続的な政治解決に向けて協業し、憲法委員会の設置を支持する。

AFP, October 22, 2019、ANHA, October 22, 2019、AP, October 22, 2019、al-Durar al-Shamiya, October 22, 2019、Reuters, October 22, 2019、SANA, October 22, 2019、SOHR, October 22, 2019、UPI, October 22, 2019などをもとに作成。

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シリア北東部へのシリア軍の展開と米英仏軍の撤退は続く、YPGのドイツ人戦闘員が死亡(2019年10月22日)

トルコ軍が反体制武装集団の国民軍とともに開始したシリア北東部への侵攻作戦「平和の泉」作戦は13日目に入り、人民防衛隊(YPG)主体のシリア民主軍がラッカ県タッル・アブヤド市からハサカ県ラアス・アイン市にいたる地域からの撤退を続ける一方、シリア軍が北・東シリア自治局支配地域への展開を続けた。

トルコ軍、国民軍とシリア民主軍、シリア軍の戦闘は小康状態が続いた。

SANA(10月22日付)によると、シリア軍部隊は、ハサカ県北西部のクーズリーヤ・シュワイシュ村、ヌーファリーヤ村、マハッル村、バドラーン村、フザーム村、カフファ・マラーティー村、ドゥバイブ村、シュワイシュ村、アルカーナ村、ウンム・ラバン村、ワースィタ村に新たに展開した。

https://youtu.be/4OZh_tpjbho

シリア人権監視団によると、「平和の泉」作戦が開始されて以降の死者数は、シリア民主軍戦闘員が275人、トルコの支援を受ける国民軍の戦闘員が196人、トルコ軍兵士が10人。

また、民間人120人が死亡、30万人が戦闘地域から避難したという。

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ハサカ県では、SANA(10月22日付)によると、ダイリーク(マーリキーヤ)市近郊のルハイバ村の航空基地に駐留していた米軍、英軍、フランス軍がスィーマルカー国境通行所を経由してイラク領内に撤退した。

また、ヒルバト・アンダーン村に駐留していた米軍とフランス軍の兵士約30人もこれに先立ち、イラク領内に撤退した。

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ユーフラテス・ポスト(10月22日付)によると、人民防衛隊(YPG)に参加していた「ヘヴァル・アンドーク」(Heval Andok)を名乗るドイツ人戦闘員が、ハサカ県ラアス・アイン市一帯でのトルコ軍との戦闘で死亡した。

AFP, October 22, 2019、ANHA, October 22, 2019、AP, October 22, 2019、al-Durar al-Shamiya, October 22, 2019、Euphrates Post, October 22, 2019、Reuters, October 22, 2019、SANA, October 22, 2019、SOHR, October 22, 2019、UPI, October 22, 2019などをもとに作成。

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イドリブ県などでシリア軍と反体制派の散発的戦闘続く(2019年10月22日)

ラタキア県では、シリア人権監視団によると、シリア軍ヘリコプターがシャーム解放機構などの支配下にあるカッバーナ村一帯を「樽爆弾」で爆撃、地上部隊が同地を砲撃した。

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イドリブ県では、シリア人権監視団によると、シリア軍がラカーヤー・サジュナ村、ハーン・シャイフーン市、サッバーギーヤ農場、ウライニバ村、ウンム・スィール村、ナキール村、トゥラムラー村、ハッサーナ村、バアルブー村、ストゥーフ・ダイル村、シャイフ・ムスタファー村、ラカーヤー村、マアッルズィーター村、ジャバーラー村、マアッラト・スィーン村、ハザーリーン村、カフルナブル市、ヒーシュ村、シャイフ・ダーミス村、マウカ村、アーミリーヤ村、タッフ村、ウンム・ジャラール村、サーリヒーヤ村、マアッラト・ハルマ村などを砲撃した。

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ハマー県では、シリア人権監視団によると、シリア軍がフワイズ村、ハウワーシュ村、フワイジャ村、ヒルバト・ナークース村、サルマーニーヤ村を砲撃した。

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アレッポ県では、シリア人権監視団によると、シリア軍がアウラム・クブラー町を砲撃した。

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ダルアー県では、ダルアー24(10月22日付)によると、サナマイン市で「サナマイン革命家」を名乗る武装集団がシリア軍兵士を襲撃、1人を殺害した。

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ロシア国防省は声明を出し、過去24時間で「緊張緩和地帯設置にかかる覚書」への違反を17件(イドリブ県6件、ラタキア県5件、アレッポ県4件、ハマー県2件)確認したと発表した。

トルコ側の監視チームは停戦違反を11件(イドリブ県1件、ラタキア県1件、アレッポ県2件、ハマー県7件)確認した。

AFP, October 22, 2019、ANHA, October 22, 2019、AP, October 22, 2019、Dar’a 24, October 22, 2019、al-Durar al-Shamiya, October 22, 2019、Ministry of Defence of the Russian Federation, October 22, 2019、Reuters, October 22, 2019、SANA, October 22, 2019、SOHR, October 22, 2019、UPI, October 22, 2019などをもとに作成。

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トルコのエルドアン大統領は「平和の泉」作戦を非難したイランに反論(2019年10月22日)

トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領は、ロシアの避暑地ソチに向かう前に首都アンカラで記者会見を開き、そのなかで「平和の泉」作戦を批判したイランに反論した。

エルドアン大統領は「イラン政府内に「平和の泉」作戦を不愉快なかたちで批判し、トルコ首脳を不快にさせている者がいる。ハサン・ロウハーニー大統領はこうした者が話しをするのを阻止すべきだ」と述べた。

AFP, October 22, 2019、ANHA, October 22, 2019、AP, October 22, 2019、al-Durar al-Shamiya, October 22, 2019、Reuters, October 22, 2019、SANA, October 22, 2019、SOHR, October 22, 2019、UPI, October 22, 2019などをもとに作成。

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ロシア難民受入移送居住センター:レバノンから399人、ヨルダンから427人の難民が帰国、避難民0人が帰宅(2019年10月22日)

ロシア国防省は、合同調整センター所轄の難民受入移送居住センターの日報(10月22日付)を公開し、10月21日に難民826人が新たに帰国したと発表した。


このうちレバノンから帰国したのは399人(うち女性120人、子供204人)、ヨルダンから帰国したのは427人(うち女性128人、子供218人)。

これにより、2018年7月18日以降に帰国したシリア難民の数は444,136人となった。

内訳は、レバノンからの帰国者141,609人(うち女性42,745人、子ども72,316人、ザムラーニー国境通行所、ジュダイダト・ヤーブース国境通行所、ダブスィーヤ国境通行所、クサイル国境通行所、タッルカルフ国境通行所を経由して帰国)、ヨルダンからの帰国者302,527人(うち女性90,798人、子ども154,278人、ナスィーブ国境通行所を経由して帰国)。

45カ国で難民登録したシリア人の数は6,655,584人(うち女性1,996,675人、子供3,394,348人)。

また、ロシアがシリア領内で航空作戦を開始した2015年9月30日以降に帰国した難民の数は 673,416人(うち女性146,056人、子供248,090人)となった。

Ministry of Defence of the Russian Federation, October 22, 2019をもとに作成。

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