トルコのエルドアン大統領「シリア民主軍撤退の猶予期間は終了し、ロシア側から退去の通知を受けた」(2019年10月29日)

トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領は、ロシアのソチでのヴラジミール・プーチン大統領での会談で合意した、人民防衛隊(YPG)主体のシリア民主軍撤退の猶予期間が終了したと発表した。

エルドアン大統領は「米国、ロシアと設定していた120時間の猶予(ドナルド・トランプ米大統領と合意していたシリア民主軍撤退の猶予期間)も150時間の猶予も終わった。水曜日(30日)にシリアでの「安全地帯」にいて協議が行われることになろう」と述べた。

エルドアン大統領はまた、ロシア側が指定された地域から「テロ組織」(シリア民主軍)を完全に退去させた旨通知してきたと付言した。

アナトリア通信(10月30日付)が伝えた。

AFP, October 30, 2019、Anadolu Ajansı, October 30, 2019、ANHA, October 30, 2019、AP, October 30, 2019、al-Durar al-Shamiya, October 30, 2019、Reuters, October 30, 2019、SANA, October 30, 2019、SOHR, October 30, 2019、UPI, October 30, 2019などをもとに作成。

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シリアのアル=カーイダの元幹部でサウジアラビア人説教師のムハイスィニー師「バグダーディーが殺されていようがいまいが、結果は同じで、西側は今後もバグダーディーを創り出す」(2019年10月29日)

サウジアラビア人説教師で、シリアのアル=カーイダと目されているシャーム解放機構の元幹部アブドゥッラー・ムハイスィニー師は、テレグラムのアカウント(https://t.me/mhesneee)を通じて、「待望されしカリフの破滅の教訓」と題されたビデオ・メッセージを配信し、26日の米軍によるダーイシュ(イスラーム国)のアブー・バクル・バグダーディー指導者殺害へのコメントを発表した。

ビデオメッセージのなかで、ムハイスィニー師は「我々は、米国の手によってバグダーディーが殺害されないことをどれほど願ってきたか。なぜなら、米国がそもそもバグダーディーの思想を育んだからだ。我々はスンナ派の手によって殺されることを願ってきた。屈辱を味わってきたのはスンナの民だからで、スンナ派が彼の思想を根絶することを願ってきた」と述べた。

また「我々はバグダーディー個人の話をしているわけではない。アッラーは彼を破滅させ、彼は死んだ。我々が話しているのは、この邪悪で行き過ぎた思想、イスラーム教徒に対するタクフィールのことだ。これらはバグダーディーが死んだからといって終わらない…。ハワーリジュ派の思想は続く。バグダーディーの後に、さまざまな名前、色を持つ幾多のバグダーディーたちが現れ、イスラーム教徒に背教宣告を下し、彼らに血を流させ、隊列を分断し、イスラームの若者たちを欺くだろう…それゆえに、我々は今、イスラームの若者たちに免罪させねばならない…。ウンマの若者を救済せよ。こうした思想の種を根絶し、彼らの言い訳と戦うことで」と強調した。

そのうえで「彼の死に関する報道の信憑性をめぐっては大いに曖昧な点が残る。彼は大きな被害をもたらした作戦のなかで殺されたのか、それ以前に殺されたのか。作戦は(ドナルド・)トランプ(米大統領)が国内の問題を隠蔽するために行われたのではないか。しかし、こうした疑問は大きな影響をもたらすまい。たとえ、彼が殺されていなかったとしても、結果は同じだ。西側が1,000人のバグダーディーを今後も創り出すということだ。そうすることがムスリム人民を破滅させる唯一の好機だからだ」と締めくくった。

https://youtu.be/x6BEL1xkMNk

 

AFP, October 29, 2019、ANHA, October 29, 2019、AP, October 29, 2019、al-Durar al-Shamiya, October 29, 2019、Reuters, October 29, 2019、SANA, October 29, 2019、SOHR, October 29, 2019、UPI, October 29, 2019などをもとに作成。

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レバノンのハリーリー首相が辞表を提出(2019年10月29日)

レバノンのサアド・ハリーリー(サアドッディーン・ハリーリー)首相が辞表を提出した。

ハリーリー首相は首都ベイルート中心部にある首相官邸から国民に向けて声明を発表、そのなかで「街頭に出ている多くのレバノン人の要求に応え、内閣の辞表を提出するためにバアブダー宮殿(大統領府)に向かう」と述べた。

ハリーリー首相はまた「今日、我々が果たすべき責任は、レバノンを守り、経済を再興させる道を探すことだ…。無駄にできない重大な機会だ。私は大統領、そしてすべてのレバノン国民に対して辞表を提出する」と付言した。

10月17日から約2週間にわたって各地で続いていた抗議デモを受けたもの。

デモでは、2020年の国家予算案における歳入確保のために、ハリーリー内閣がWhatsAppなどのアプリを介した通話への課税を決定したことに抗議するかたちで自然発生し、拡大していた。

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ハリーリー首相は、2017年のサウジアラビア訪問中にも、ヒズブッラーによる地域の不安定化に異議を唱えるかたちで辞意を表明していた。

だが、内閣は総辞職しないまま、国民議会選挙(2018年5月)に突入、これによって自身が指導するムスタクバル潮流および同組織が主導する会派(ブロック)は大幅に議席を減らしたが、2019年1月に首相に再任されていた。

AFP, October 29, 2019、ANHA, October 29, 2019、AP, October 29, 2019、al-Durar al-Shamiya, October 29, 2019、Reuters, October 29, 2019、SANA, October 29, 2019、SOHR, October 29, 2019、UPI, October 29, 2019などをもとに作成。

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米国務省匿名高官はダーイシュのムハージル報道官の殺害を認める(2019年10月29日)

米国務省の匿名高官は、27日に人民防衛隊(YPG)主体のシリア民主軍によってダーイシュ(イスラーム国)のアブー・ハサン・ムハージル報道官が殺害されたとの情報・報道に関して、これを認めた。

フォックス・ニュース(10月29日付)が伝えた。

AFP, October 29, 2019、ANHA, October 29, 2019、AP, October 29, 2019、al-Durar al-Shamiya, October 29, 2019、Fox News, October 29, 2019、Reuters, October 29, 2019、SANA, October 29, 2019、SOHR, October 29, 2019、UPI, October 29, 2019などをもとに作成。

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トルコ匿名消息筋「イスラーム国のバグダーディー指導者はシリア難民に紛れて家族をトルコに密入国させようとしていた」(2019年10月29日)

『クドス・アラビー』(10月29日付)は、トルコの匿名消息筋の情報として、26日に米軍の攻撃を受けて爆死したダーイシュ(イスラーム国)のアブー・バクル・バグダーディー指導者に関して、トルコ領内に家族を潜入させようとしていたと伝えた。

この匿名消息筋は、トルコの治安機関が得た情報がバグダーディー指導者の潜伏場所の特定に寄与したとしたうえで、同指導者が、シリアからトルコに難民を違法に移送する業者を通じて、家族をトルコ領内に密入国させようとしていたと明かした。

また、トルコが米国による暗殺作戦において大きな役割を果たしたが、その全貌、そして詳細についてトルコ政府は発表を望んでいないという。

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『ニューヨーク・タイムズ』(10月29日付)は、複数の米政府高官の話しをもとに、26日に米軍によるダーイシュ(イスラーム国)のアブー・バクル・バグダーディー指導者殺害にいたる経緯の内幕を明らかにした。

それによると、CIAと米軍特殊部隊は、過去数ヶ月にわたり、バグダーディー指導者の潜伏場所を突き止める活動を行っていたが、ドナルド・トランプ米大統領が突如(10月6日)(、シリア領内からの米軍撤退を決定、これを実行に移したため、国防総省は軍事作戦の実施を早め、バグダーディー指導者を殺害したという。

AFP, October 29, 2019、ANHA, October 29, 2019、AP, October 29, 2019、al-Durar al-Shamiya, October 29, 2019、The New York Times, October 29, 2019、al-Quds al-‘Arabi, October 29, 2019、Reuters, October 29, 2019、SANA, October 29, 2019、SOHR, October 29, 2019、UPI, October 29, 2019などをもとに作成。

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制憲委員会(憲法委員会)のメンバー150人全員がジュネーブに到着(2019年10月29日)

ゲイル・ペデルセン・シリア問題担当国連特別代表付報道官のジェニファー・ヴィントン氏は、30日に開催予定の制憲委員会(憲法委員会)会合に出席するため、シリア政府代表50人、反体制派代表50人、市民社会代表50人がスイスのジュネーブに到着したと発表した。

SANA(10月29日付)が伝えた。

AFP, October 29, 2019、ANHA, October 29, 2019、AP, October 29, 2019、al-Durar al-Shamiya, October 29, 2019、Reuters, October 29, 2019、SANA, October 29, 2019、SOHR, October 29, 2019、UPI, October 29, 2019などをもとに作成。

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ロシア軍憲兵隊がトルコとの国境に面するダルバースィーヤ市の国境通行所に到着するも、トルコ軍の砲撃続く(2019年10月29日)

ハサカ県では、シリア人権監視団によると、ロシア軍憲兵隊隊がトルコとの国境に面するダルバースィーヤ市の国境通行所に到着した。

https://www.facebook.com/syriahro/videos/2368680630064736/

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しかし、シリア人権監視団によると、トルコ軍は同市一帯を砲撃、トルコ側が撃った迫撃砲弾によると思われる爆発で住民6人が負傷した(ANHA(10月29日付)によると、4人負傷)。

これに関して、ロシア国防省は、この爆発が、トルコ軍の迫撃砲弾によるものではなく、何者かがロシア軍装甲車の近くに仕掛けた爆弾によるものだと発表、また負傷者もなかったと付言した。

 

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一方、シリア人権監視団によると、トルコ軍がマーリキーヤ(ダイリーク)市近郊のダイルナー・アーガー村一帯の国境地帯に設置していた防御壁の撤去を開始した。

防御壁の撤去は、国境から10キロ以内の地域でロシア・トルコ軍による合同パトロールを実施するため。

AFP, October 29, 2019、ANHA, October 29, 2019、AP, October 29, 2019、al-Durar al-Shamiya, October 29, 2019、Reuters, October 29, 2019、SANA, October 29, 2019、SOHR, October 29, 2019、UPI, October 29, 2019などをもとに作成。

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アレッポ県でもトルコ軍がシリア軍士官を捕捉(2019年10月29日)

アレッポ県では、ANHA(10月29日付)などによると、バーブ・ハワー国境通行所近くで諜報活動をしていたとされるシリア軍士官がトルコ軍の発砲を受けて負傷し、捕捉され、Facebookでその映像が公開された。
https://m.facebook.com/100041321501298/posts/146138260106890/

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ハサカ県でトルコ軍・国民軍がシリア軍・シリア民主軍と交戦、シリア軍兵士10人以上を捕捉(2019年10月29日)

ハサカ県では、シリア人権監視団によると、アブー・ラースィーン町一帯でトルコ軍とその支援を受けるシリア国民軍が人民防衛隊(YPG)主体のシリア民主軍およびシリア軍と交戦を続けた。

この戦闘で、トルコ軍と国民軍はタッル・タムル町とアブー・ラースィーン町の間に位置するマドバア村、バーブ・ハイル村、ジャーン・タムル村、タッル・バイダル村、アバー村、ムライキース村、タッルカルタル村など10カ村を新たに制圧した。

また、ANHA(10月29日付)、ドゥラル・シャーミーヤ(10月29日付)などによると、この戦闘で国民軍は、シリア軍兵士14人を捕捉した。

国民軍のユースフ・ハンムード報道官(少佐)によると、シリア軍兵士は国民軍がタッル・ハワー村を制圧した際に捕捉されたという。

そのなかには士官(中尉)1人も含まれているという。

なお、トルコ国防省の発表によると国民軍が捕捉したシリア軍将兵は18人。

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ハサカ県では、SANA(10月29日付)によると、ロシア仲介によるシリア政府と人民防衛隊の合意に基づき、シリア軍が同県国境地帯への展開を続け、ダルバースィーヤ市に近いカルマーニーヤ村に進駐した。

AFP, October 29, 2019、ANHA, October 29, 2019、AP, October 29, 2019、al-Durar al-Shamiya, October 29, 2019、Reuters, October 29, 2019、SANA, October 29, 2019、SOHR, October 29, 2019、UPI, October 29, 2019などをもとに作成。

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ダイル・ザウル県のCONOCOガス工場一帯に展開する米主導の有志連合がダイル・ザウル市一帯のシリア軍の拠点に砲撃(2019年10月29日)

ダイル・ザウル県では、シリア人権監視団によると、ダイル・ザウル市近郊のフサイニーヤ町一帯でシリア軍と人民防衛隊(YPG)主体のシリア民主軍が交戦、CONOCOガス工場一帯に展開する米主導の有志連合がダイル・ザウル市一帯のシリア軍の拠点に砲撃を加えた。

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一方、シリア人権監視団によると、マヤーディーン市近郊の砂漠地帯で、ダーイシュ(イスラーム国)がシリア軍の拠点複数カ所を襲撃した。

また、正体不明の武装集団がシュハイル村にある人民防衛隊(YPG)主体のシリア民主軍の検問所に発砲した。

AFP, October 29, 2019、ANHA, October 29, 2019、AP, October 29, 2019、al-Durar al-Shamiya, October 29, 2019、Reuters, October 29, 2019、SANA, October 29, 2019、SOHR, October 29, 2019、UPI, October 29, 2019などをもとに作成。

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ロシア軍戦闘機がシャーム解放機構などの支配下にあるイドリブ県各所を爆撃(2019年10月29日)

イドリブ県では、シリア人権監視団によると、ロシア軍戦闘機がシャーム解放機構などの支配下にあるマアッラト・ハルマ村、マアッラト・スィーン村を爆撃した。

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ハマー県では、シリア人権監視団によると、シリア軍地上部隊がアンカーウィー村とカーヒラ村を結ぶ街道でオートバイを攻撃し、住民2人が負傷した。

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ラタキア県では、シリア人権監視団によると、シャーム解放機構などの支配下にあるカッバーナ村一帯で戦闘が続いた。

過去48時間の戦闘でシリア軍側に30人以上、反体制武装集団側に21人の死者が出ているという。

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ロシア国防省は声明を出し、過去24時間で「緊張緩和地帯設置にかかる覚書」への違反を15件(イドリブ県2件、ラタキア県6件、アレッポ県5件、ハマー県2件)確認したと発表した。

トルコ側の監視チームは停戦違反を17件(イドリブ県6件、ラタキア県9件、アレッポ県0件、ハマー県4件)確認した。

AFP, October 29, 2019、ANHA, October 29, 2019、AP, October 29, 2019、al-Durar al-Shamiya, October 29, 2019、Ministry of Defence of the Russian Federation, October 29, 2019、Reuters, October 29, 2019、SANA, October 29, 2019、SOHR, October 29, 2019、UPI, October 29, 2019などをもとに作成。

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ロシア難民受入移送居住センター:レバノンから178人、ヨルダンから511人の難民が帰国、避難民7人(うちルクバーン・キャンプからの帰還者0人)が帰宅(2019年10月29日)

ロシア国防省は、合同調整センター所轄の難民受入移送居住センターの日報(10月29日付)を公開し、10月28日に難民639人が新たに帰国したと発表した。

このうちレバノンから帰国したのは178人(うち女性53人、子供91人)、ヨルダンから帰国したのは511人(うち女性153人、子供261人)。

これにより、2018年7月18日以降に帰国したシリア難民の数は450,793人となった。

内訳は、レバノンからの帰国者144,077人(うち女性43,605人、子ども73,777人、ザムラーニー国境通行所、ジュダイダト・ヤーブース国境通行所、ダブスィーヤ国境通行所、クサイル国境通行所、タッルカルフ国境通行所を経由して帰国)、ヨルダンからの帰国者306,716人(うち女性92,054人、子ども156,415人、ナスィーブ国境通行所を経由して帰国)。

45カ国で難民登録したシリア人の数は6,657,484人(うち女性1,997,245人、子供3,395,317人)。

また、ロシアがシリア領内で航空作戦を開始した2015年9月30日以降に帰国した難民の数は 680,073人(うち女性204,317人、子供347,114人)となった。

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一方、国内避難民7人が新たに帰宅した。

うち東グータ地方に帰宅したのは0人、ダイル・ザウル県サーリヒーヤ村の通行所を経由してダマスカス郊外県、ヒムス県などに帰宅したのは0人、ヒムス県南東グラーブ山のジュライギム通行所を経由して帰還したのは7人、イドリブ県アブー・ズフール町郊外の通行所およびハマー県スーラーン町の通行所を経由して帰宅したのは0人だった。

グラーブ山通行所を経由して帰還した7人のうち、米主導の有志連合が占領するヒムス県タンフ国境通行所一帯地域(55キロ地帯)に面するヨルダン北東部のルクバーン・キャンプから帰国した難民は0人だった。

これにより、2019年1月以降に帰宅した国内避難民の数は36,299人(うち女性11,218人、子供16,491人)に、2015年9月30日以降に帰宅した国内避難民の数は1,304,895人(うち女性393,777人、子供660,257人)となった。

Ministry of Defence of the Russian Federation, October 29, 2019をもとに作成。

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