自由シリア軍合同司令部が「ハウラーン地方火山」作戦の始動を発表するなか、イラク・クルディスタン地域政府はシリアのクルド民族主義政党間の対立を解消するためのクルド最高委員会会合の開催を決定(2013年4月27日)

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国内の暴力

自由シリア軍合同司令部中央広報局(在レバノン)は声明を出し、自由シリア軍がダルアー県の軍拠点制圧を目的とした「ハウラーン地方火山」作戦を開始したと発表した。

これを受け、ダルアー県では、シリア人権監視団によると、反体制武装集団がヌマイマ市近くのレーダー大隊基地を砲撃、また同市で軍と反体制武装集団が交戦し、反体制武装集団戦闘員2人と軍兵士複数が死亡した。

自由シリア軍はその後、ヌアイマ村の防空大隊基地を制圧した、と発表した。

反体制武装集団はまた、ナダー村の第67連隊基地、第175中隊基地、ダーイル町・アトマーン村間に駐留する「ハドル大隊」、ウンム・ワラド村・カラク村間のスルア航空基地に属する第3連隊なども砲撃・攻撃した。

これに対して、軍はヌアイマ村、タッル・アラーラー市、イズラア市・ナーミル村間の一帯を空爆し、反撃した。

一方、アトマーン村では、シリア人権監視団によると、軍の空爆により子供1人を含む4人が死亡した。

これに対して、SANA(4月27日付)は、ダルアー市、ヒルバト・ガザーラ町、タファス市、ダーイル町、シャジャラ町、ナーフィア村、ジッリーン村、カルフィス市郊外などで、軍が反体制武装集団を攻撃し、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した、と報じた。

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ダマスカス郊外県では、シリア人権監視団によると、ハーンマ市の化学研究センターを反体制武装集団が砲撃した。

またドゥーマー市では軍の砲撃により、子供1人を含む10人が死亡、ムウダミーヤ・シャーム市も軍の砲撃を受けた。

さらにスバイナ町では、軍の空爆により4人が死亡した。

このほか、ジュダイダト・アルトゥーズ町でも軍が1人を射殺したという。

一方、SANA(4月27日付)によると、アドラー市、ザマルカー町、ハルマラ市、シャイフーニーヤ村、リーハーン農場郊外、ナバク市、ズィヤービーヤ町、フジャイラ村、ダイル・アティーヤ市、ヤブルード市、ダーライヤー市などで、軍が反体制武装集団の拠点を攻撃し、シャームの民のヌスラ戦線メンバーなど複数の戦闘員を殺傷した。

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ダマスカス県では、シリア人権監視団によると、バルザ区、ジャウバル区で軍と反体制武装集団が交戦し、ジャウバル区では軍兵士10人が死亡したという。

一方、SANA(4月27日付)によると、ジャウバル区、バルザ区で、軍が反体制武装集団の拠点を攻撃し、シャームの民のヌスラ戦線メンバーなど複数の戦闘員を殺傷した。

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ヒムス県では、ヒムス市ワアル地区で、1人が撃たれ死亡した。

またダール・カビーラ村などに軍が砲撃を加え、複数名が負傷した。

ナハールネット(4月27日付)は、地元調整委員会の情報として、クサイル市での反体制武装集団との戦闘で、ヒズブッラーの戦闘員6人が死亡したと報じた。

一方、SANA(4月27日付)によると、ヒムス市バーブ・フード地区、バーブ・サーイフ地区、ジャウラ・シヤーフ地区などで、軍が反体制武装集団を攻撃し、バッラー旅団メンバーなど複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ハマー県では、シリア人権監視団によると、ハマー市のアレッポ街道地区、マシャーウ・ワーディー・ジャウズ地区などに軍が砲撃を加える一方、3月18日通りで家宅捜索を行った。

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イドリブ県では、シリア人権監視団によると、軍がアブー・ズフール軍事基地周辺、ナージヤ村、フーア市、カフリヤー市、マアッラト・ヌウマーン市などを砲撃した。

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アレッポ県では、シリア人権監視団によると、クワイリス航空基地周辺で軍と反体制武装集団が交戦、飛行場敷地内に反体制武装集団が突入した。

複数の活動家によると、反体制武装集団はクワイリス航空基地に駐留する防空連隊を制圧したという。

一方、SANA(4月27日付)によると、ハンダラート・キャンプ、ムスリミーヤ村などで軍が反体制武装集団を攻撃し、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

またマンナグ航空基地で軍が反体制武装集団と交戦し、多数の戦闘員を殺傷した。

さらにアレッポ市では、シャイフ・サイード地区、ハイダリーヤ地区、サラーフッディーン地区、ライラムーン地区などで軍が反体制武装集団を攻撃し、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ハサカ県では、シリア人権監視団によると、タッル・ハミース市を軍が空爆した。

反体制勢力の動き

『ハヤート』(4月28日付)は、複数の反体制筋の話として、ミシェル・キールーとファーイズ・サーラの主導のもと、シリア革命反体制勢力国民連立を離反した指導者らを含む反体制活動家がカイロで「民主的局」大会の開催を準備していると報じた。

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『ハヤート』(4月28日付)は、複数の反体制筋の話として、シリア革命反体制勢力国民連立におけるシリア・ムスリム同胞団のヘゲモニーを是正するため、女性活動家10人を含む「世俗的」活動家25人が連立に参加をめざしていると報じた。

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シリア革命反体制勢力国民連立は声明を出し、化学兵器使用疑惑に関して、ロシア人専門家からなる調査チームの派遣を求めたシリア政府の提案を拒否、国連調査チームの派遣を改めて要求した。

諸外国の動き

トルコのアブドゥッラ・ギュル大統領は、クウェート紙『ラアユ』(4月27日付)のインタビューに応じ、そのなかで「我々は化学兵器、大量破壊兵器に反対であり、地域にこれらの兵器があってはならない。我々はこの点に関して決して寛容ではない」と述べた。

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イラク・クルディスタン地域政府のマスウード・バールザーニー大統領(イラク・クルディスタン民主党党首)は、シリアのクルド民族主義政党間の対立を解消するためのクルド最高委員会会合を28日にエルビルで開催することを決定、シリア・クルド国民評議会加盟政党と西クルディスタン人民議会(民主統一党)に参加を呼びかけた。

しかしシリア・クルド進歩民主党のアブドゥルハミード・ダルウィーシュ書記長は「クルド民族主義運動は自らの問題をこれまで同様解決できないばかりか、事態はさらに複雑化している」と述べ、不参加の意向を示した。

また民主統一党が主導する西クルディスタン人民議会の代表5人も会合をボイコットした。

AFP, April 27, 2013、Akhbar al-Sharq, April 27, 2013、al-Hayat, April 28, 2013, May 1, 2013、Kull-na Shuraka’, April 27, 2013、Kurdonline,
April 27,2013、Naharnet, April 27, 2013、al-Ra’y, April 27, 2013、Reuters, April 27, 2013、SANA, April 27, 2013、UPI, April 27, 2013などをもとに作成。

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