2012年6月8日のシリア情勢

SANA, June 8, 2012

SANA, June 8, 2012

国内の暴力

各地で反体制武装集団と軍・治安部隊による戦闘が「もっとも激しく」(『ハヤート』(6月9日付)行われ、後者に多数の犠牲者が出る一方、金曜日恒例の一般市民による反体制デモは、反体制勢力の曖昧な発表などから低調だったことが伺われた。

シリア人権監視団は、アレッポ県、ハマー県、ダマスカス県、ダルアー県などでアサド大統領の退陣を求める反体制デモが行われたと発表したが、規模については「数万人」と述べるに留まり、在外の反体制勢力の「蜂起」の呼びかけが低調だったことを伺わせた。

シリア国民評議会は、「自由シリア軍、地元の諸大隊、革命運動体における我らがすべての国民に、あらゆる場所での大衆運動を激化させ…、包囲、砲撃、突入に曝されているハマー郊外、ラタキア、ヒムスの被害軽減のために行動」するよう訴えていた。

またフェイスブックなどでは反体制勢力が「商人と革命家よ、勝つまで手に手を携えて」と銘打って反体制デモが呼びかけられていた。

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ダマスカス郊外県では、SANA(6月8日付)によると、クドゥスーヤー市で反体制武装集団が爆弾を積んだ車が爆発させ、治安維持警察と市民合わせて3人が死亡、複数が負傷した。

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イドリブ県では、SANA(6月8日付)によると、イドリブ市で反体制武装集団が爆弾を積んだ車が爆発させ、治安維持警察と市民合わせて5人が死亡、多数が負傷した。

またカワールー村(アルマナーズ地方)では、反体制武装集団が市民1人を殺害した。

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ダマスカス県では、SANA(6月8日付)によると、カーブーン区で反体制武装集団が変電所を襲撃し、電力省によると2億シリア・ポンド以上の損害が出て、電力供給にも障害が生じた。

ダマスカス県では、革命指導評議会のディーブ・ディマシュキー報道官によると、マッザ区、マイダーン地区、カフルスーサ区、カダム区、スーク・サリージャで反体制デモが発生し、カフルスーサ区では「シャッビーハと自由シリア軍」が衝突した、という。

またロイター通信(6月8日付)によると、マッザ区などで銃声が聞こえ、目撃者によると「怖くて外には出られなかった」。

スカイ・ニュース・アラビック(6月11日付)によると、自由シリア軍の戦闘員約600人がダマスカス県内の政府関連施設5カ所を同時に襲撃した。

同報道によると、襲撃は午後1時から5時、そして午後7時から深夜まで続けられた、という。

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アレッポ県では、SANA(6月8日付)によると、アレッポ市マルジャ地区で反体制武装集団が仕掛けた爆弾が爆発し、女性1人と子供3人が死亡した。

アレッポ市・郊外地元調整連合のムハンマド・ハラビー報道官によると、アレッポ市では「数千人」が街頭に出た、という。

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ダイル・ザウル県では、SANA(6月8日付)によると、マヤーディーン地方でユーフラテス石油社の油田監視チームが反体制武装集団に襲撃され、1人が死亡した。

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ダルアー県では、SANA(6月8日付)によると、ブスラー・シャーム市で治安維持部隊と反体制武装集団が交戦し、後者のメンバー多数が死亡した。

一方、シリア人権監視団によると、ダルアー市、タスィール町、ブスラー・シャーム市、ナスィーブ村、ヌアイマ村、ダーイル町、フラーク市、サイダー町で反体制デモが発生した。

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ヒムス県では、『ハヤート』(6月9日付)によると、軍治安部隊がヒムス市ハーリディーヤ地区制圧のため大規模な掃討作戦を開始した。

一方、SANA(6月8日付)によると、国境警備隊がクサイル地方で、レバノン領内から武器を密輸しようとした車3台を取り押さえた。

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ラタキア県では、活動家のスィーマー・ナッサール女史によると、ラタキア市内各所で反体制デモが発生し、その規模は「過去最大」だったという。

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ハサカ県では、シリア人権監視団によると、カーミシュリー市、アームーダー市、ダルバースィーヤ市、カフターニーヤ市、ラアス・アイン市で反体制デモが発生した。

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ハマー県では、UNSMISがクバイル村での虐殺現場を視察した。

UNSMIS報道官は、現場が一部の家の壁や床には血の跡があり、建物の外では火がくすぶっていた。また焼けた肉の匂いがした」と発表した。

また、「村には住民はおらず、証言を得ることはできず、また死者数を確認できなかった」が、「一部の家には砲撃の痕跡があった」と付言した。

UNSMISは、木曜日に発砲を受け、クバイル村に入ることを軍および住民に数度にわたって阻止された。

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ロイター通信(6月8日付)は、国内での弾圧に関与しているとされるシャッビーハに関して、1日100ドルの報酬を得ている、と報じた。

レバノンの動き

NNA(6月8日付)によると、北部県トリポリ市のバーブ・タッバーナ地区とジャバル・ムフスィン地区で住民どうしの散発的戦闘が再開され、1人が死亡、2人が負傷した。

戦闘はその後、軍の引き離しにより収束した。

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NNA(6月8日付)によると、シリア軍当局に身柄拘束されていたハーリド・スワイダーン村長(北部県アッカール郡ワーディー・ハーリド地方ハット・バトルール村)が釈放された。

諸外国の動き

『ハヤート』(6月9日付)によると、アナン特使は①国連憲章第7章に基づくアサド政権への制裁を定めた安保理の採択と、②アサド大統領退任を協議するための関係当事国による国際会議の開催を軸とする新提案を行った。

アナン特使の新提案はヒラリー・クリントン米国務長官とワシントンでの会談で提示されたという。

1時間にわたる記者会見の後、アナン特使は6項目停戦案の実施以外のすべての選択肢をめぐって協議したことを明らかにした。

安保理決議は西側諸国の意向に沿ったものである一方、国際会議はロシアの意向に沿ったもので、イラン、トルコ、サウジアラビア、安保理常任理事国からなるという。

しかし米国務省高官によると、国際会議へのイランの参加を求めるロシアに対して、米国は強く反対している、という。

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米国務省は、ロシアに派遣されたフレデリック・ホフ中東担当特使が、ゲンナジイ・ガティロフ外務次官、ミハイル・ボクダノフ外務次官と会談し、シリア危機の平和的解決の方途をめぐって意見を交換した、と発表した。

『ハヤート』(6月9日付)に対して、ボグダノフ外務次官はアサド大統領の退任は議論しなかったと述べた。

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ニューヨークでは、英仏が国連憲章第7章に基づく、シリアへの武器輸出禁止、渡航禁止、政府高官の口座凍結などを骨子とする安保理決議案の作成に入った。

同決議案はロシアの主張を反映させるかたちで、シリアの危機解消のための国際会議の開催も呼びかけているという。

またUNSMISの増員などを通じた権限強化を定めているほか、アサド政権に対する48時間以内の停戦履行を求めているという。

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中国外交部高官は、記者会見でシリア情勢に関して、「シリア政府と反体制勢力双方が責任をもって発砲を停止し、暴力を停止しなければならない」と述べた。

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AFP(6月8日付)によると、スイス政府は、石油・ガス部門、発電、電話・インターネット監視関連製品のシリアに対する輸出を規制し、制裁を強化した。

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ドイツ内閣報道官は、記者会見で、アサド大統領が権力の座に留まる限り、シリアでの政治的解決への到達はあり得ない、と述べた。

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ジョー・リーバーマン米上院議員は、「早急に均衡を崩したいと考えるのなら…我々、米国とその同盟国は空軍力を用いてシリア政府に対する空爆を行うべき」と述べた。

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赤十字国際委員会のヒシャーム・ハサン報道官は記者会見で、イドリブ県、ダマスカス郊外県、ハマー県、ダイル・ザウル県、ラタキア県での緊張状態により、市民の(国内)避難が増大している、と警鐘を鳴らした。

AFP, June 8, 2012、Akhbar al-Sharq, June 8, 2012、al-Hayat, June 8, 2012, June 10, 2012、June 9, 2012、Kull-na Shurakāʼ, June 8, 2012、Naharnet.com,
June 8, 2012、NNA, June 8, 2012、Reuters, June 8, 2012、SANA, June 8, 2012、Sky
News-Arabic, June 11, 2012などをもとに作成。

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