アサド大統領がギリシャ日刊紙『イ・カシメリニ』のインタビューに応じる「私は戦争が始まる10年前から大統領だったが、シリア国民を殺戮していなかった。西側がテロリストを支援したことで紛争は始まったのだ。彼らにこの戦争の責任はある(2018年5月10日)

アサド大統領は、ギリシャ日刊紙『イ・カシメリニ』のインタビューに応じた。

インタビューは英語で行われ、その映像(https://youtu.be/HRIMAKeKU64)、英語全文(https://sana.sy/en/?p=137019)、アラビア語全訳(https://www.sana.sy/?p=751436)はSANA(5月10日付)が配信した。

また『イ・カシメリニ』も映像(https://youtu.be/GxnyQkynUhA)とギリシャ語全訳(http://www.kathimerini.gr/963386/gallery/epikairothta/politikh/apokleistikh-synentey3h-toy-proedroy-ths-syrias-mpasar-al-asant-sthn-k-kataskeyasmenes-oi-kathgories-gia-xhmika)と映像を配信した。

SANA, May 10, 2018

インタビューでのアサド大統領の主な発言は以下の通り:


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「まず、我々はいかなる化学兵器も保有していない。2013年に廃棄したからだ…。第2に、保有していたとしても、使用しない。それには幾つもの理由があるが、2点だけ言っておきたい。軍が化学兵器を保有していて、戦争中だと仮定したら、どこで使うべきだろう? 戦闘が終わろうとしている時に使うだろうか? 戦争中にどこかで使うか、テロリストが台頭している場所で使うべきであって、軍が戦闘を終え、テロリストが降伏し、「この地域から去る準備ができた」と言っている時ではない…。(シリア軍がダマスカス郊外県東グータ地方ドゥーマー市で4月に化学兵器を使用したとの)西側の主張は、シリア軍が勝利する前ではなくて、勝利した後に始まった」。

「第2に、ドゥーマー市――化学兵器が使用され、45人あまりが死亡したと彼らが主張している地域――のような人口密集地域での大量破壊兵器を使用すれば…、数千人が一度に死んでいるはずだ。第3に、なぜ、化学兵器、あるいは化学兵器とされる兵器で子供と女性しか死なないのか? なぜ戦闘員が死なないのか。ビデオを見ると、それは完全な偽物だ。化学兵器が使用されているのに、なぜ医師は看護師が無事なのか…。何の防護服も身につけていないし…、ただ犠牲者に水をかけて…洗い流すだけで大丈夫になる…。なぜか? またより重要なのは、テロリストが負けてから、米国、フランス、英国、そしてその同盟国が…重要なカードを失い、シリア軍を攻撃しなくてはならなくなったということだ」。

「化学兵器攻撃があったと主張している側が、攻撃があったということを証明しなければならない。(事件に関しては)二つのシナリオがある。テロリストが化学兵器を保有し、意図的に使うか、爆発が起きたというもの。もう一つは、ドゥーマー市住民へのすべての調査が述べている通り…攻撃など行われていないというものだ。我々には、何が起きたかを示す証拠はないのに、西側は(シリア軍が化学兵器を使用したと)主張している…。問題は、攻撃があったと主張する西側高官に向けられるべきなのだ。彼らにこう尋ねたい。事件についての具体的証拠はどこにあるのか? 彼らはそうした報告があったと言うだけだ。だが、報告は疑わしいものかもしれない。ホワイト・ヘルメットのビデオ…、彼らは英国外務省などの支援を受けている」。

(ドナルド・トランプ米大統領がアサド大統領を「動物」と批判したことに関して)「この地位、つまり一国の大統領の地位にいる時、その人は自分自身の道徳ではなく、何よりもまず国民の道徳を代表しなければならない…。自分の国を代表しているからだ。問題は、こうした発言が米国の文化を代表しているのかということだ…。私はそうは思っていない。第2に、トランプ(大統領)が明け透けと自らを表面している点だけは良いことかもしれない…。個人的なことを言うと、私は気にしていない。私は事態に政治家、そして大統領として対処しているからだ…。重要なのは、いかなることであれ、私、私の国、我々の戦争、テロリスト、我々の暮らしに影響を及ぼすか否かということだ」。

「(トランプ大統領が達成した)唯一のミッションとは、ISIS(ダーイシュ(イスラーム国))をラッカから逃がしたことぐらいだろう…。もし彼がシイラを破壊していると言うのであれば、もちろん、それが達成された別のミッションということになる。一方、テロとの戦いについて言うと、米国が行っている唯一のミッションとは、テロリストを支援することであることは明白だ」。

(北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長と同様にトランプ大統領と会談するかとの問いに関して)「選挙前に言っていたことと逆のことを行ったり、今日言っていたことと逆のことを明日、あるいは同じに日にしたりするような人間と何を達成できるのか、ということを問うべきだ…。一貫性の問題なのだ…。このような人間がいる政権と何かを達成できるとは思っていない。しかも、我々は(トランプ)大統領が支配しているなどとは考えていない。国家の深層…が大統領をコントロールしていると考えている。米国ではいつもそうだった」。

「私は常に、シリアに安定を回復するのに1年もかからないだろうと言ってきた…。このことに何の疑いも持っていない。だが、もう一つの要因がある。それはテロリストがどの程度の支援を受けているのかという問題だ。これには私は答えることはできない…。だが、支援が続く限り、時間は重要な要素ではなくなる。この場合の重要な要素は、我々がいつかこの紛争を終わらせ、シリアを政府の支配のもとに再統合することにあり、それがいつかではなくなる」。

「大統領として自分の同盟者が誰かと訊かれれば、それはシリア国民だ。シリアの同盟者はと訊かれれば、もちろん、イランとロシアということになる…。もちろん中国も安保理で我々を支持してくれている…。これらの国はシリアの主権、自決権を尊重し、それを確たるものとするために支援してくれている」。

「まず、これ(トルコの行為)は侵略であり、占領だ。だが、シリア領内にいるトルコ軍兵士のなかに占領を代表しているものはいない。つまり、トルコ国民は我々の敵ではないということだ…。我々はトルコ人一般と(レジェップ・タイイップ・)エルドアン(大統領)を区別すべきなのだ。エルドアンはムスリム同胞団だ…。彼の帰属はこの組織の…暗黒のイデオロギーの方を向いている…。テロリストが(シリア国内の)さまざまな地域で敗北し、トルコであれ、西側であれ、カタールであれ、サウジアラビアであれ、こうした国のアジェンダを実行できなくなっているなか、誰かが介入しなければならない。それが、最近シリアに対して攻撃を行った西側諸国であり、エルドアンは、西側、とりわけ米国から事態に干渉し、複雑にするようまかされているようなものだ…」。

「戦争が始まった当初から、エルドアンはテロリストを支援してきた。だが当時、彼は「シリア国民を守る」「シリア国民を支援する」…といった言葉の背後に身を隠してきた…。だが状況が変わるなかで、彼はマスクを脱いで、侵略者としての容姿を露わにしている。これは良いことだ…。つまり、エルドアン政権下のトルコがシリアに派兵することと、テロリストを支援することには大差は無い。テロリストとはエルドアン政権の代理だからで…根っこは一緒だ。

「何よりもまず、我々はテロリストと戦っている。我々にとってのテロリストとは、彼(エルドアン大統領)の軍であり、米軍、そしてサウジアラビア軍だ…。テロリストは一つのアジェンダのために行動し、一人の支配者、米国に従っている…。エルドアンは彼個人のアジェンダを遂行しているのではない。米国のアジェンダを遂行しているに過ぎない」。

(米・ロシアによる第三次世界大戦を懸念しているかとの問いに関して)「たった一つの理由で、懸念していない。幸運なことに、ロシアには賢明な指導者がおり、紛争を創出したいという米国の国家の深層部分のアジェンダを知っているからだ」。

「個人的意見ではなく、事実と現実として言うと、シリアが分割されることはない…。危機発生当初から、今日にいたるまで、現実として、シリアでは、さまざまな社会集団が共存を続けている…。互いの改善は、おそらくは戦争の影響で、以前より良くなってさえいる。一方、テロリストの支配地域に目を向けると…、エスニシティ、宗派、宗教に基づく線引きがなされていることが分かる。現実問題として、テロリストの支配地域にしか分裂はみられない…。だが、こうした憶測(シリアは分裂するとの憶測)がもたらされたのは…米国が現在、とくにシリア東部を支配することに力を入れていて…テロリストたちにシリアが再び一つになることはあり得ないという印象を与えようとしているからだ。だが、シリアは一つになる」。

「米国は…自分達の目的を達成できないと、別の目的に訴えようとする。それは、混乱を作り出すというものだ」。

「私が過ちを犯していなかったとしたら、もはや人間ではない…。事態が複雑になればなるほど、より多くの過ちが生じるだろう。だが、過ちを犯さないようにするにはどうしたらよいか? 何よりもまず、組織、議会、組合だけではなく、より多くの国民に諮ることだ…。国策におけるもっとも主要な柱はテロと戦うことだった。テロとの戦いが誤りだったとは考えていない」。

(復興にどこくらいの費用がかかるかとの問いに対して)「数千億。少なくとも2,000億、一部の推計では、4,000億ドルはかかるだろう。なぜ正確な数値でないのか? それは、一部の地域が今もテロリストの支配下にあるからだ。我々は正確な数値を算定できない。増減はあるかもしれない」。

「政治家の私の将来は二つからなりなっている。一つは私の意思、もう一つはシリア国民の意思だ。もちろん、シリア国民の意思の方が私の意思よりも重要だ。私がこの地位(大統領職)に就き、国を助け、政治的役割を果たしたいと考えても…、大衆の指示が何もできないし、失敗するだろう…。シリア国民の大多数の指示を得られていなかったら、なぜ7年も(大統領職に)とどまることができただろうか?」。

「多くの血が流されていると言う場合、だれが流血を招いたのかに言及すべきだ。私は戦争が始まる10年前から大統領を務めているが、この10年間にシリア国民を殺戮していただろうか? 誰か、その筆頭にあげられるのは西側がテロリストを支援したことで紛争は始まったのだ。彼らにこの戦争の責任はある…。西側、とりわけ、フランス、英国、米国、そしてサウジアラビア、カタール、トルコに責任がある」。

AFP, May 10, 2018、ANHA, May 10, 2018、AP, May 10, 2018、al-Durar al-Shamiya, May 10, 2018、al-Hayat, May 11, 2018、Kathimerini, May 11, 2018、Reuters, May 10, 2018、SANA, May 10, 2018、UPI, May 10, 2018などをもとに作成。

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