イスラエルのネタニヤフ首相はロシアのプーチン大統領との会談でゴラン高原に隣接する地域のシリア政府の支配回復に柔軟な姿勢を示す(2018年7月11日)

イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相がロシアを訪問し、首都モスクワでヴラジミール・プーチン大統領と会談した。

『ハヤート』(7月12日付)によると、プーチン大統領は会談冒頭、両国の政治軍事分野での協力関係の維持強化の必要を強調した。

一方、ネタニヤフ首相は、イスラエルの領空・領土侵犯を徹底阻止するとして、イランの脅威に対抗する姿勢を示す一方、占領下のゴラン高原に隣接するダルアー県、クナイトラ県のシリア政府による支配回復に対して柔軟な姿勢を示した。

ロシア消息筋は『ハヤート』に対して、16日にフィンランドの首都ヘルシンキで予定されているプーチン大統領とドナルド・トランプ米大統領の会談に先立つこの首脳会談が、「ロシアが航空支援を行うシリア南西部での作戦により、シリア軍が制圧地域を拡大するなかで、非常に重要な意味を持つ」としたうえで、「ゴラン高原に面する境界地域で今日(11日)に作戦が開始されたことは、シリア軍が1974年の兵力引き離し協定を遵守することを条件に、イスラエルが青信号を出したことを受けた動きだ」と述べた。

同消息筋はまた、シリア軍が占領下のゴラン高原に向けて進軍することにイスラエルが柔軟な姿勢を示す一方、イランとその民兵が同地に接近することについては、譲歩はしなかった、と付言した。

これに対して、ロシア側は、「イスラエルがシリア領内の拠点を爆撃することを黙認する一方で、イランに対してシリアからの撤退は、シリア政府に関わる問題であるために要求はできない」との姿勢で応じているという。

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こうしたなか、イランのアリー・アクバル・ヴェラーヤティー最高指導者顧問が、最高指導者アリー・ハーメネイー師とハサン・ロウハーニー大統領の親書を携えて、モスクワに到着した。

AFP, July 11, 2018、ANHA, July 11, 2018、AP, July 11, 2018、al-Durar al-Shamiya, July 11, 2018、al-Hayat, July 12, 2018、Reuters, July 11, 2018、SANA, July 11, 2018、UPI, July 11, 2018などをもとに作成。

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