米中央軍(CENTCOM)は、12月7日にシリア、イラク領内のダーイシュ(イスラーム国)拠点などに対して31回の空爆を行ったと発表した。
このうちシリア領内での空爆は11回、フール町近郊(5回)、ラッカ市近郊(1回)、マーリア市近郊(5回)のダーイシュに対して攻撃が行われた。
CENTCOM, December 8, 2015などをもとに作成。
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Detail Report on the Arab Spring in Syria: Latest Situation in Syria / アラビア語の新聞、通信社、ウェブサイトなどを通じて収集した情報をもとに、シリア情勢をより網羅的に把握・紹介することをめざします。
トルコ政府高官は、ロイター通信(12月7日付)に対して、11月24日のロシア軍戦闘機撃墜事件発生以降、トルコはシリア領内でのダーイシュ(イスラーム国)に対する空爆を実施していないと語った。
米高官は先週、ロイター通信に対して、米国が、トルコとロシアの緊張緩和を促すため、有志連合によるシリア空爆でさらなる役割を果たすようトルコ側に要請することを中断したと述べていた。
トルコ軍は、2015年7月のスルチュ(シャンウルファ県)での爆破テロ発生を受けて、イラクやシリアでの空爆を開始したが、その標的のほとんどはダーイシュではなくクルディスタン労働者党(PKK)の拠点などだった。
またシリア北部では、11月上旬に、トルクメン人武装集団を航空支援するとして、有志連合とともに異例の空爆を行うようになったが、同時にラッカ県タッル・アブヤド市などの西クルディスタン移行期民政局人民防衛隊拠点などへの断続的な砲撃を続けていた。
パリでの同時テロ事件発生以降によって、トルコは、米英仏独といった欧米諸国とロシアのダーイシュ掃討に向けた空爆連携に取り残されるかたちとなり、ロシア軍戦闘機撃墜事件はこの動きに拍車をかけていた。
だが、そもそもダーイシュへの空爆に消極的だったトルコ政府にとって、ロシア軍戦闘機撃墜事件は空爆を「自制」する好機を与えることになった。
AFP, December 7, 2015、AP, December 7, 2015、ARA News, December 7, 2015、Champress, December 7, 2015、al-Hayat, December 8, 2015、Iraqi News, December 7, 2015、Kull-na Shuraka’, December 7, 2015、al-Mada Press, December 7, 2015、Naharnet, December 7, 2015、NNA, December 7, 2015、Reuters, December 7, 2015、SANA, December 7, 2015、UPI, December 7, 2015などをもとに作成。
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ハサカ県では、シリア人権監視団によると、有志連合がフール町近郊のハーン村でダーイシュ(イスラーム国)拠点を空爆、戦闘員20人が死亡、25人が負傷した。
しかし、これに関して、クッルナー・シュラカー(12月7日付)、ARA News(12月7日付)などは、ハーン村での空爆で民間人30人以上が死傷したと伝えた(『ハヤート』(12月9日付)によると民間人の死者数は26人)。
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ヒムス県では、シリア人権監視団によると、ダーイシュ(イスラーム国)の支配下にあるカルヤタイン市で激しい爆発があった。
またタドムル市一帯では、シリア軍とダーイシュが交戦した。
一方、SANA(12月7日付)によると、シリア軍がカルヤタイン市、タドムル市西部一帯でダーイシュ(イスラーム国)拠点を空爆し、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。
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ラッカ県では、シリア人権監視団によると、有志連合と思われる戦闘機がラッカ市のファヒーハ地区、カラーマ地区を空爆し、子供8人、女性5人の合わせて13人が死亡した。
また、西クルディスタン移行期民政局人民防衛隊がアイン・イーサー市郊外のタッル・ルール村一帯でダーイシュ(イスラーム国)と交戦した。
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アレッポ県では、SANA(12月7日付)によると、シリア軍がシュワイリフ村、ジャルーフ村、ラスム・マシュラファ村、ティージャーン村でダーイシュ(イスラーム国)拠点を空爆し、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。
一方、シリア人権監視団によると、米トルコが設置合意した北部の「安全地帯」内に位置するハルバル村・カフル・ナースィフ村間でダーイシュ(イスラーム国)が敷設した地雷が爆発し、子供4人、女性1人を含む7人が死亡した。
また、ARA News(12月7日付)によると、ダーイシュ(イスラーム国)がアイン・アラブ市郊外のブーララーズ村、ウワイナ村などを砲撃した。
AFP, December 7, 2015、AP, December 7, 2015、ARA News, December 7, 2015、Champress, December 7, 2015、al-Hayat, December 8, 2015、December 9, 2015、Iraqi News, December 7, 2015、Kull-na Shuraka’, December 7, 2015、al-Mada Press, December 7, 2015、Naharnet, December 7, 2015、NNA, December 7, 2015、Reuters, December 7, 2015、SANA, December 7, 2015、UPI, December 7, 2015などをもとに作成。
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ラタキア県では、シリア人権監視団によると、シリア軍、国防隊、ヒズブッラー戦闘員、アラブ系・アジア系戦闘員が、アックー村、ブーズ・ヒルバ村一帯でシャームの民のヌスラ戦線、トルキスターン・イスラーム党などからなるジハード主義武装集団と交戦、シリア軍がアックー村を制圧した。
またロシア軍と思われる戦闘機が、トルクメン山一帯を空爆、シリア軍もトルクメン山およびクルド山一帯を激しく砲撃、これによりジハード主義武装集団戦闘員5人が死亡した。
一方、SANA(12月7日付)によると、シリア軍が人民防衛諸集団とともにアックー村、ブーズ・ヒルバ村で反体制武装集団を掃討、同地を制圧した。
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イドリブ県では、シリア人権監視団によると、ロシア軍と思われる戦闘機がジスル・シュグール市を空爆した。
またカフルタハーリーム村でジハード主義武装集団の車輌に仕掛けられていた爆弾が爆発し、複数人が死傷したほか、ムハンビル村で何者かが男性を射殺した。
一方、SANA(12月7日付)によると、シリア軍がタマーニア町農場地帯で反体制武装集団を攻撃し、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。
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ハマー県では、シリア人権監視団によると、戦闘機(所属不明)がラターミナを空爆する一方、シリア軍がカフルヌブーダを砲撃し、ジハード主義武装集団戦闘員3人が死亡した。
一方、SANA(12月7日付)によると、シリア軍がカフルズィーター市、ラターミナ町、フワイズ丘、ワーディー・フワイズ、ムーリク市でシャームの民のヌスラ戦線、アジュナード・シャーム・イスラーム連合などからなるジハード主義武装集団の拠点を攻撃し、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。
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ヒムス県では、シリア人権監視団によると、フーシュ・ハッジュー村郊外、ハウラ地方をシリア軍が砲撃した。
一方、SANA(12月7日付)によると、シリア軍がラスタン市近郊でシャームの民のヌスラ戦線などからなるジハード主義武装集団を攻撃し、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。
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アレッポ県では、シリア人権監視団によると、シリア軍、国防隊、ヒズブッラー戦闘員、アラブ系・アジア系戦闘員が、アレッポ市南部郊外のズィーターン村、ハルサ村、ハーン・トゥーマーン村一帯で、シャームの民のヌスラ戦線、トルキスターン・イスラーム党などからなるジハード主義武装集団と交戦、シリア軍がハルサ村、ズィーターン村を制圧した。
これに関して、SANA(12月7日付)は、シリア軍がアレッポ市南部郊外のハルサ村、カルアジーヤ村、ハムラー村、ズィーターン村で反体制武装集団を掃討、同地を制圧したと伝えた。
SANAによると、シリア軍はまた、ラスム・サフリージュ村、ジャルーフ村、カフルフハッダード村、マクハラ村、ズィルバ村、ハーリディーヤ村、アレッポ市バニー・ザイド地区、ハーリディーヤ地区で、シャームの民のヌスラ戦線などからなるジハード主義武装集団と交戦し、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。
一方、シリア人権監視団によると、反体制武装集団(アレッポ・ファトフ軍作戦司令室)が、アレッポ市ライラムーン地区・ハーリディーヤ地区回廊地帯にあるシリア軍拠点の地下に向けて掘ったトンネルに爆弾を仕掛け爆破、その後同地でシリア軍と反体制武装集団が交戦した。
SNN(12月7日付)によると、地下トンネルの掘削に携わったのはフルサーン・ハック旅団、第16師団で、約50トンの爆弾を爆発させ、シリア軍とイラン・イスラーム革命防衛隊クドス軍団の兵士併せて数十人を殺害したという。
しかし親政府系のサイトは、爆発が起きたもの、反体制武装集団の作戦は失敗し、シリア軍が同地を掌握していると伝えた。
アレッポ市ではこのほかにも、ザフラー協会地区を反体制武装集団が砲撃、バニー・ザイド地区ではシリア軍と反体制武装集団が交戦した。
さらにロシア軍がアレッポ市スッカリー地区、サーリヒーン地区を空爆し、数十人が死亡したという。
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ダマスカス郊外県では、シリア人権監視団によると、シリア軍がダーライヤー市を「樽爆弾」などで空爆し、ジハード主義武装集団の司令官1人を含む複数の戦闘員が死亡した。
シリア軍はまた、マルジュ・スルターン村一帯で、ジハード主義武装集団と交戦した。
一方、SNN(12月7日付)によると、ロシア軍戦闘機がカラムーン山地一帯国外の無人地帯を15回にわたり空爆し、野戦病院などが破壊された。
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ダルアー県では、シリア人権監視団によると、シリア軍がブスル・ハリール市を「樽爆弾」などで空爆する一方、戦闘機がシャイフ・マスキーン市を空爆した。
また複数の消息筋によると、ダルアー県郊外でジハード主義武装集団戦闘員100人以上がシリア軍に投降した。
一方、SANA(12月7日付)によると、シリア軍がダルアー市国立病院北部一帯、マンシヤ地区、シャイフ・マスキーン市でシャームの民のヌスラ戦線などからなるジハード主義武装集団と交戦し、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。
AFP, December 7, 2015、AP, December 7, 2015、ARA News, December 7, 2015、Champress, December 7, 2015、al-Hayat, December 8, 2015、Iraqi News, December 7, 2015、Kull-na Shuraka’, December 7, 2015、al-Mada Press, December 7, 2015、Naharnet, December 7, 2015、NNA, December 7, 2015、Reuters, December 7, 2015、SANA, December 7, 2015、SNN, December 7, 2015、UPI, December 7, 2015などをもとに作成。
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シリアの外務在外居住者省は、国連安保理および事務総長に宛てて書簡を送付し、そのなかで12月6日に米軍戦闘機がダイル・ザウル県内のシリア軍基地の一つを攻撃したと報告、「テロとの戦い」への取り組みを妨害する「敵対行為」であり、「有志連合がテロとの戦いにおける真剣さと誠実さ改めて示すもの」と非難した。
書簡によると、米軍戦闘機4機は6日晩、ダイル・ザウル県内のシリア軍の基地を9発のミサイルで攻撃、これにより兵士3人が死亡、13人が負傷、装甲車3輌と輸送車輌4輌、23ミリ機関砲1門、14.5ミリ機関砲1門、武器弾薬庫が破壊された。
SANA(12月7日付)が伝えた。
これに関して、シリア人権監視団は、有志連合と思われる戦闘機複数期がダイル・ザウル県アイヤーシュ村近郊にあるシリア軍のサーイカ軍事基地の哨所を空爆し、兵士3人が死亡、14人が負傷したと発表した。
ラーミー・アブドゥッラフマーン代表によると、有志連合の「誤爆」でシリア軍に死傷者が出たのはこれが初めてだという。
またクッルナー・シュラカー(12月7日付)は、複数の現地消息筋の話として、有志連合戦闘機がアイヤーシュ村郊外のシリア軍第137旅団基地拠点を空爆した、と伝えた。

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米国防総省のスティーブ・ウォーレン報道官は、AFP(12月7日付)に対して、「我々はシリア側のレポートに着目したが、昨日(6日)にダイル・ザウル県での空爆は実施していない。それゆえ我々は(シリア側の主張に)根拠がないと見ている」と述べた。
しかし、ウォーレン報道官は「米軍が空爆した地点はシリアが空爆を受けたと主張している場所から55キロも離れている…。我々が空爆しているのはすべて油田だった」と付言した。
また、米中央軍(CENTCOM)は、有志連合が6日の空爆に関して、ダイル・ザウル県で4回実施し、ダーイシュ(イスラーム国)が掌握する油田坑口装置を破壊したと発表している。
なお米高官は、フォックス・ニュース(12月7日付)に対して、ロシア軍戦闘機が誤爆した「可能性が高い」(highly likely)と述べた。
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シリア軍施設への「誤爆」については、これまで反体制派系のサイトが10月以降、たびたびロシア軍によるシリア軍基地への攻撃などについて伝えていたが、有志連合によるシリア軍施設に対する「誤爆」が報じられるのはこれが初めて。
AFP, December 7, 2015、AP, December 7, 2015、ARA News, December 7, 2015、Champress, December 7, 2015、Fox News, December 7, 2015、al-Hayat, December 8, 2015、Iraqi News, December 7, 2015、Kull-na Shuraka’, December 7, 2015、al-Mada Press, December 7, 2015、Naharnet, December 7, 2015、NNA, December 7, 2015、Reuters, December 7, 2015、SANA, December 7, 2015、UPI, December 7, 2015などをもとに作成。
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ダマスカス郊外県東グータ地方を中心に活動を続けるイスラーム軍は声明を出し、12月8日に開催予定のリヤドでの反体制派の合同会合にザフラーン・アッルーシュ司令官が出席すると発表した。
AFP, December 7, 2015、AP, December 7, 2015、ARA News, December 7, 2015、Champress, December 7, 2015、al-Hayat, December 8, 2015、Iraqi News, December 7, 2015、Kull-na Shuraka’, December 7, 2015、al-Mada Press, December 7, 2015、Naharnet, December 7, 2015、NNA, December 7, 2015、Reuters, December 7, 2015、SANA, December 7, 2015、UPI, December 7, 2015などをもとに作成。
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