ロシアのプーチン大統領とトルコのエルドアン大統領が1年半ぶりに会談:シリア情勢などで合意、妥協なし(2021年9月29日)

ロシアのヴラジーミル・プーチン大統領とトルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領がロシアの避暑地ソチで首脳会談を行い、両国関係、シリア、リビア、アフガニスタン、カフカス地域情勢への対応などについて協議した。

首脳会談は2020年3月以来1年半ぶり。

RT(9月29日付)などによると、森林火災、ガス・パイプライン、核開発、シリアとカフカス地方での紛争への対応、リビア情勢などについて意見が交わされた。

会談は冒頭の挨拶がメディアに公開され、その後の協議は非公開で行われたが、会談後の声明発表や共同声明はなく、何らの合意、譲歩もなかったと見られる。

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トルコの通信局はツイッターのアカウント(https://twitter.com/Communications/)を通じて以下の通り発表したのみだった。

エルドアン大統領:「我々は会談相手のプーチン氏との実りある会談の後、ソチを後にした。

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一方、ロシア大統領府(クレムン)は、公式ホームページ(http://en.kremlin.ru/)を会談冒頭における両首脳の発言の全文を公開した。

記者団に公開された冒頭挨拶でのシリアに関連する両首脳の発言は以下の通り。

プーチン大統領

我々の会談はしばしば困難に直面するが、最終的には良い結果に至っている。我が国の関係機関は双方に利益をもたらす中庸の解決策を生み出すことを学んできた。
我々は、シリアを含む国際社会の部隊で非常にうまく協力している。リビアにおける我々の立場を調整するための連絡も行われてきた。アゼルバイジャン・アルメニア国境での停戦を関しするためのロシア・トルコ合同センターは活発に機能している…。だが、未解決の問題も非常に多く残っている。ロシアであなたにお会いできて光栄だ。なぜなら、電話ですべてを議論することは不可能だからだ。

エルドアン大統領

シリアの問題をめぐる我々の共同の行動は非常に重要だ。この地における平和はトルコとロシアの関係にかかっている。

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シリア人権監視団によると、トルコ軍は、プーチン大統領とエルドアン大統領の会談に合わせるかたちで、イドリブ県ザーウィヤ山地方からアレッポ県西部に至る「決戦」作戦司令室支配地一帯に戦車と装甲兵員輸送車37輌を派遣し、拠点を強化した。

AFP, September 29, 2021、Anadolu Ajansı, September 29, 2021、ANHA, September 29, 2021、al-Durar al-Shamiya, September 29, 2021、Reuters, September 29, 2021、RT, September 29, 2021、SANA, September 29, 2021、SOHR, September 29, 2021などをもとに作成。

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シリア民主評議会のアフマド執行委員会共同議長:「シリア民主軍はトルコとの対話を行う用意がある」(2021年9月29日)

人民防衛隊(YPG)主体のシリア民主軍の政治母体であるシリア民主評議会のイルハーム・アフマド執行委員会共同議長は、国連総会に合わせて訪問中の米国で、ワシントン近東政策研究所のシンポジウムに出席、そのなかで「シリア民主軍はトルコとの対話を行う用意がある」と述べたうえで、国際社会に対話を支援するよう求めた。

アフマド共同議長は以下のように述べた。

シリア民主軍は、「オリーブの枝」作戦と「平和の泉」作戦によってトルコの影響下に置かれえたシリア北部のアフリーン市、ラアス・アイン市、タッル・アブヤド市など、クルド人に関係する問題にトルコが対処することの見返りとして、トルコとの対話を行い、平和的な方法と対話によってトルコとの意見の相違のすべてを解決する用意がある。

シリアのクルド人はアンカラに敵対しているのではなく、トルコで禁じられているクルディスタン労働者党(PKK)に対して道徳的な姿勢をとってる」と付言した。

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また、アフマド共同議長を代表とするシリア民主評議会使節団は、ジョーイ・フッド米国務省近東問題担当次官補と会談した。

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ドゥラル・シャーミーヤ(9月29日付)、シリア・テレビ(9月29日付)などが伝えた。

AFP, September 29, 2021、ANHA, September 29, 2021、al-Durar al-Shamiya, September 29, 2021、Reuters, September 29, 2021、SANA, September 29, 2021、SOHR, September 29, 2021などをもとに作成。

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シリア民主軍がユーフラテス川東岸の水上通行所を急襲し、シリア政府支配地への密輸のために準備されていた灯油200樽以上を押収(2021年9月29日)

ダイル・ザウル県では、シリア人権監視団によると、人民防衛隊(YPG)主体のシリア民主軍の特殊部隊がユーフラテス川東岸のズガイル・ジャズィーラ村の水上通行所を急襲し、西岸のシリア政府支配地への密輸のために準備されていた灯油200樽以上を押収した。

AFP, September 29, 2021、ANHA, September 29, 2021、al-Durar al-Shamiya, September 29, 2021、Reuters, September 29, 2021、SANA, September 29, 2021、SOHR, September 29, 2021などをもとに作成。

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シリアとヨルダンを結ぶナスィーブ・ジャービル国境通行所が全面再開(2021年9月29日)

ダルアー県では、SANA(9月29日付)によると、ナスィーブ国境通行所(ヨルダン側はジャービル国境通行所)が再開された。

ナスィーブ・ジャービル国境通行所は、2018年10月15日に再開され、その後2020年から2021年4月まで新型コロナウイルス感染症の感染防止対策として全面閉鎖されていた。

また5月には1日150人までの旅行者の入国が許可されたが、ダルアー市ダルアー・バラド地区での元反体制武装集団メンバーの武装解除と社会復帰拒否をきっかけとしてダルアー県の治安が悪化したことを受けて、7月31日に再び全面閉鎖されていた。

ヨルダンの内務省は9月27日に声明を出し、ジャービル国境通行所を29日に全面再開することを決定したと発表していた。

AFP, September 29, 2021、ANHA, September 29, 2021、al-Durar al-Shamiya, September 29, 2021、Reuters, September 29, 2021、SANA, September 29, 2021、SOHR, September 29, 2021などをもとに作成。

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トルコ占領下のアレッポ県北部でシリア国民軍シャーム戦線と地元部族が激しく交戦(2021年9月29日)

アレッポ県では、ANHA(9月29日付)、SANA(9月29日付)によると、トルコの占領下にあるカフルジャンナ村近くの街道(アアザーズ市とアフリーン市を結ぶ街道)で、シリア国民軍に所属するシャーム戦線と、マワーリー部族地元部族が激しく交戦した。

シャーム戦線の戦闘員が地元の女性2人を拉致、連行したのがきっかけ。

一方、ANHAによると、トルコ軍とシリア国民軍がシリア政府と北・東シリア自治局の共同支配下にあるタッル・リフアト市近郊のアイン・ダクナ村、バイルーニーヤ村を砲撃した。

AFP, September 29, 2021、ANHA, September 29, 2021、al-Durar al-Shamiya, September 29, 2021、Reuters, September 29, 2021、SANA, September 29, 2021、SOHR, September 29, 2021などをもとに作成。

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武装解除と社会復帰の手続きが続くダルアー県タスィール町でシリア軍第4師団傘下の民兵司令官が殺害される(2021年9月29日)

ダルアー県では、シリア人権監視団によると、シリア軍第4師団傘下で活動する地元の民兵の司令官が、元反体制武装集団メンバー、指名手配者、兵役忌避者らが所持していた武器のシリア軍への引き渡しと社会復帰にかかる手続きが行われているタスィール町で正体不明の武装集団に銃で撃たれて死亡した。

また、 シリア人権監視団は、ダルアー市ダルアー・バラド地区での和解合意が交わされた9月初め以降、同地およびタファス市、タッル・シハーブ町、アジャミー村、ナフジュ村、ヤードゥーダ村、ムザイリーブ町、ジッリーン村、ザイズーン村などで、シリア軍に武器を引き渡し、社会復帰手続きを済ませた元反体制武装集団メンバー、指名手配者、兵役忌避者らが4,100人に上っていると発表した。

うち1,200人がダルアー市ダルアー・バラド地区、2,900人がそれ以外の市町村で手続きを済ませ、650丁の武器がシリア軍に引き渡されたという。

SAN(10月3日付)によると、シリア軍はまた、シャジャラ町、クサイル村、タスィール町などヤルムーク川河畔地域一帯に展開した。

 

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ロシア国防省は声明を出し、過去24時間で「緊張緩和地帯設置にかかる覚書」への違反を21件(イドリブ県11件、ラタキア県4件、アレッポ県4件、ハマー県2件)確認したと発表した。

シリア政府によると、停戦違反は12件。

一方、トルコ側の監視チームは、停戦違反を6件確認したと発表した(ただし、ロシア側はこれらの違反を確認していない)。

https://www.facebook.com/mod.mil.rus/posts/3053233224919413

AFP, September 29, 2021、ANHA, September 29, 2021、al-Durar al-Shamiya, September 29, 2021、Ministry of Defence of the Russian Federation, September 29, 2021、Reuters, September 29, 2021、SANA, September 29, 2021、October 3, 2021、SOHR, September 29, 2021などをもとに作成。

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新型コロナウイルスの新規感染者はシリア政府支配地域で293人、北・東シリア自治局支配地域で270人、アル=カーイダとトルコの支配下にあるイドリブ・アレッポ県で837人(2021年9月29日)

保健省は政府支配地域で新たに293人の新型コロナウイルス感染者が確認される一方、感染者73人が完治し、11人が死亡したと発表した。

これにより、9月29日現在の支配地内での感染者数は計33,933人、うち死亡したのは2,238人、回復したのは23,742人となった。

SANA(9月29日付)が伝えた。

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北・東シリア自治局の保健委員会(保健省に相当)は、支配地域で新たに270人の新型コロナウイルス感染者が確認される一方、9人が完治し、7人が死亡したと発表した。

これにより、9月29日現在の支配地内での感染者数は計27,566人、うち死亡したのは915人、回復したのは2,149人となった。

新規感染者の性別の内訳は、男性160人、女性110人。

また地域の内訳は、ハサカ県のカーミシュリー市57人、ハサカ市50人、マーリキーヤ(ダイリーク)市90人、アームーダー市7人、ダルバースィーヤ市10人、マアバダ(カルキールキー)町3人、ジュワーディーヤ(ジャッル・アーガー)村2人、ルマイラーン町2人、ナウルーズ・キャンプ4人、アレッポ県シャフバー地区(タッル・リフアト市)3人、ラッカ県のラッカ市26人、ダイル・ザウル県16人。

https://www.facebook.com/smensyria/posts/1694840424039221

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反体制系NGOの支援連携ユニットは、シリアのアル=カーイダであるシャーム解放機構が軍事・治安権限を握る「解放区」とトルコ占領下の「オリーブの枝」地域と「ユーフラテスの盾」地域で9月29日に新たに837人の新型コロナウイルス感染者が確認される一方、583人が完治し、3人が死亡したと発表した。

新規感染者の内訳は、イドリブ県ジスル・シュグール郡53人、イドリブ郡249人、ハーリム郡310人、アリーハー郡73人、アレッポ県スィムアーン山郡7人、ジャラーブルス郡10人、バーブ郡67人、アフリーン郡50人、アアザーズ郡18人。

これにより、同地での感染者数は計72,552人、うち死亡したのは1,198人、回復したのは37,640人となった。

https://www.facebook.com/ACUSyria/posts/1676922105846007

AFP, September 29, 2021、ACU, September 29, 2021、ANHA, September 29, 2021、al-Durar al-Shamiya, September 29, 2021、Reuters, September 29, 2021、SANA, September 29, 2021、SOHR, September 29, 2021などをもとに作成。

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ロシア難民受入移送居住センター:難民364人が新たに帰還、2018年半ば以降帰還した難民は707,283人に(2021年9月29日)

ロシア国防省は、合同調整センター所轄の難民受入移送居住センターの日報を公開し、9月28日に難民364人(うち女性109人、子供185人)が新たに帰国したと発表した。

このうちレバノンから帰国したのは難民364人(うち女性109人、子供185人)、ヨルダンから帰国したのは0人。

これにより、2018年7月18日以降に帰国したシリア難民の数は707,283人となった。

内訳は、レバノンからの帰還者312,035人(うち女性93,777人、子ども158,855人、ザムラーニー国境通行所、ジュダイダト・ヤーブース国境通行所、ダブスィーヤ国境通行所、クサイル国境通行所、タッルカルフ国境通行所を経由して帰国)、ヨルダンからの帰国者395,248人(うち女性118,618人、子ども201,569人、ナスィーブ国境通行所を経由して帰国)。

43カ国で難民登録したシリア人の数は6,798,018人。

なお、ロシアがシリア領内で航空作戦を開始した2015年9月30日以降に帰国した難民の数は936,563人(うち女性281,053人、子供477,346人)となった。

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一方、国内避難民の新たな帰宅はなかった。

2019年1月以降に帰宅した国内避難民の数は101,425人(うち女性39,184人、子供33,503人)に、2015年9月30日以降に帰宅した国内避難民の数は1,368,021人(うち女性421,743人、子供677,269人)。
https://www.facebook.com/mod.mil.rus/posts/3053233164919419

Ministry of Defence of the Russian Federation, September 29, 2021をもとに作成。

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