アサド大統領のおじのマフルーフ一家がロシアとともに経済権益を伸張するアスマー大統領夫人の封じ込めを画策(2020年4月18日)

英国に本社を置くパン・アラブ・メディアのアラビー・ジャディード(4月18日付)は、複数の消息筋の話として、アサド大統領のおじでロシアに在住するムハンマド・マフルーフ氏およびダマスカスで暮らす息子のラーミー・マフルーフ氏と、アスマー・アフラス大統領夫人との間で「決済戦争」が始まったと伝えた。

首都ダマスカスの同消息筋が匿名を条件に明らかにしたところによると、「アスマー夫人のいとこのムハンナド・ダッバーグ氏が所有する「タカームル社」を貶めようとする計画が、マフルーフ氏によって推し進められ、その結果、アーティフ・ナッダーフ国内通商消費者保護大臣が先週、スマート・カードを輸出する「タカームル社」がパン配給事業に参入することを禁じると発表した。

同消息筋によると、マフルーフ氏によるこの「報復」は、アスマー夫人が昨年にガンを克服して以降、シリア経済の「パイ」の分配に介入し、ラーミー氏の投資に口出ししたことに端を発しているという。ラーミー氏は、ブスターン慈善協会を通じて、シリアの二大携帯会社であるシリアテルとMTNに投資を行っているが、アスマー夫人が両社の社長の人選を行い、免税事業を展開しているラーミー氏のラーマーク社から会計帳簿などを持ち出したという。

また、アサド大統領がアスマー夫人のために3,000万ドルもする絵画を購入したことにまつわる「スキャンダル」も、アスマー夫人を「丸裸」にし、シリア経済において果たしている役割を奪おうとする計略の一環として行われたものだという。

「タカームル社」は2016年、燃料、砂糖、米、お茶、パンの配給に使用するためのスマート・カードの開発を政府から受注することで、その名を広く知られるようになった。

同社はカード1枚あたり、400シリア・ポンドを受け取っており、首都ダマスカスの複数の情報筋の試算によると、これまでに約300万枚のカードを配布したという。また、カードが利用される度にその手数料として100シリア・ポンドが同社に支払われているという。

一方、シリア政府のもとで次官を務めたという男性は匿名を条件に、アスマー夫人を封じ込めようとする動きがロシアの「青信号」を得て行われていると指摘している。「アスマー夫人がロシアの取り分にも手を伸ばしている」というのがその理由。

元次官によると、シリア政府は、ロシアへのガスの輸出をめぐって、ドル建てとすることを求めて対立していたが、これに参入したのがアスマー夫人だったという。

高価な絵画をめぐる「スキャンダル」はロシアの『ゴスノヴォスチ』紙が報じたもので、ロシア政府は、貧困や新型コロナウイルス感染対策で外出規制に苦しむシリア人に、大統領夫妻の贅沢ぶりを暴露することで、不満を煽ることを狙っていた。実際、ラタキアでは数日前に抗議デモが発生している。

なお、『ゴスノヴォスチ』紙は、アサド大統領がアスマー夫人へのプレゼントとして、「スプラッシュ」と名づけられた英国人画家(デヴィッド・ハンク氏)の絵画をロンドンの所有者から3,000万ドルで購入したと伝えていた。

AFP, April 19, 2020、ANHA, April 19, 2020、AP, April 19, 2020、al-‘Arabi al-Jadid, April 18, 2020、al-Durar al-Shamiya, April 19, 2020、Reuters, April 19, 2020、SANA, April 19, 2020、SOHR, April 19, 2020、UPI, April 19, 2020などをもとに作成。

(C)青山弘之 All rights reserved.

トルコ占領下のアレッポ県アフリーン市で国民軍所属組織どうしが交戦(2020年4月19日)

アレッポ県では、シリア人権監視団によると、トルコの占領下にあるアフリーン市でトルコの支援を受ける国民軍に所属するハムザ師団と第23師団の戦闘員どうしが交戦し、双方に複数の負傷者が出た。

交戦の理由は不明。

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ラッカ県では、ANHA(4月19日付)によると、トルコ軍とその支援を受けるシリア国民軍がシリア政府と北・東シリア自治局の共同統治下にあるアイン・イーサー市近郊のフーシャーン村を砲撃した。

AFP, April 19, 2020、ANHA, April 19, 2020、AP, April 19, 2020、al-Durar al-Shamiya, April 19, 2020、Reuters, April 19, 2020、SANA, April 19, 2020、SOHR, April 19, 2020、UPI, April 19, 2020などをもとに作成。

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ハサカ県カーミシュリー市の国防隊拠点で爆発(2020年4月19日)

ハサカ県では、ANHA(4月19日付)によると、シリア政府と北・東シリア自治局の共同統治下にあるカーミシュリー市にある国防隊の拠点で爆発が発生した。

爆発が発生した拠点は、ワフダ通りからタイ地区にいたる街道に位置するサラーム交差点近く。

シリア人権監視団によると、爆発は爆弾によるもので、2度にわたり発生した。

これに対して、国防隊は市内の内務治安部隊(アサーイシュ)の検問所に向けて発砲した。

なお、アサーイシュは16日、国防隊メンバーが市内の検問所に対して手榴弾2発を投げ込んだと非難していた。

AFP, April 19, 2020、ANHA, April 19, 2020、AP, April 19, 2020、al-Durar al-Shamiya, April 19, 2020、Reuters, April 19, 2020、SANA, April 19, 2020、SOHR, April 19, 2020、UPI, April 19, 2020などをもとに作成。

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保健省は新型コロナウイルス感染者1人が死亡する一方、1人の感染者が新たに確認されたと発表(2020年4月19日)

保健省は新型コロナウイルス感染者1人が死亡する一方、1人の感染者が新たに確認されたと発表した。

これにより、4月19日現在の同地での感染者数は計39人、うち死亡したのは3人、回復したのは5人となった。

SANA(4月19日付)が伝えた。

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シリア人権監視団は「信頼できる複数の医療筋」から得た情報として、シリア政府支配地域内での新型コロナウイルス感染者数が98人に達していると発表した。

うちラタキア県の感染者が37人、タルトゥース県が21人、アレッポ県、ダマスカス県、ハマー県、ヒムス県、ダルアー県が40人だという。

AFP, April 19, 2020、ANHA, April 19, 2020、AP, April 19, 2020、al-Durar al-Shamiya, April 19, 2020、Reuters, April 19, 2020、SANA, April 19, 2020、SOHR, April 19, 2020、UPI, April 19, 2020などをもとに作成。

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イドリブ県でシャーム解放機構とフッラース・ディーン機構の緊張高まる(2020年4月19日)

英国を拠点に活動する反体制派系NGOのシリア人権監視団によると、ロシア・トルコ首脳会談で合意された停戦が発効(3月5日深夜)してから45日目となる4月19日、シリア・ロシア軍、トルコ軍の爆撃は確認されなかった。

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ロシア国防省は声明を出し、過去24時間で「緊張緩和地帯設置にかかる覚書」への違反を1件(イドリブ県1件、ラタキア県0件、アレッポ県0件、ハマー県0件)確認したと発表した。

トルコ側の監視チームは停戦違反を確認しなかった。

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イドリブ県では、シリア人権監視団によると、シリアのアル=カーイダであるシャーム解放機構が、マアーッラト・イフワーン村にある支援物資用の倉庫をメンバーの住居として転用するとして、明け渡すよう、地元評議会に強要した。

これに対して、地元評議会は、倉庫は近く住民向けの医療クリニックとして転用される予定であるため、明け渡すことができないと回答した。

だが、シャーム解放機構は、国内避難民(IDPs)を収容している学校をクリニックとして転用すればいいとして、これを拒否した。

また、シャーム解放機構が軍事・治安権限を握るイドリブ市で、外国人司令官が乗った車にしかけられていた爆弾が爆発し、この司令官が負傷した。

外国人の国籍、所属組織は不明。

一方、アルマナーズ市では、シリアのアル=カーイダであるシャーム解放機構と新興のアル=カーイダ系組織の一つフッラース・ディーン機構の緊張が高まった。

シャーム解放機構が、アルマナーズ市に複数の拠点を構えているフッラース・ディーン機構を排除しようとしたことがきっかけ。

シャーム解放機構の嫌がらせにフッラース・ディーン機構が反発、非難する声明を出した。

こうしたなか、シリア軍は「決戦」作戦司令室の支配下にあるファッティーラ村、カンスフラ村、スフーフン村、バーラ村、アルナバ村を砲撃した。

「決戦」作戦司令室は、シャーム解放機構とトルコの庇護を受ける国民解放戦線(シリア国民軍)などからなる武装連合体。

対するトルコ軍は、兵站物資などを積んだ貨物車輌など約70輌からなる車列をカフル・ルースィーン村に違法に設置されている国境通行所からシリア領内に新たに進入させた。

トルコ軍はまた、ザーウィヤ山地方のバサーミス村に新たな拠点を設置した。

これにより、シリア領内のトルコ軍監視所・拠点は61カ所となった。
(シリア人権監視団の計算だと59)

トルコ軍の監視所・拠点が設置されている場所は以下の通り:

監視所

イドリブ県:サルワ村、タッル・トゥーカーン村、サルマーン村、ジスル・シュグール市(イシュタブリク村)
アレッポ県:登塔者聖シメオン教会跡、シャイフ・アキール山、アナダーン山、アレッポ市ラーシディーン地区(南)、アイス村(アイス丘)
ハマー県:ムーリク市、シール・マガール村
ラタキア県:ザイトゥーナ村

拠点

イドリブ県:マアッル・ハッタート村、サラーキブ市(3カ所)、タルナバ村、ナイラブ村、クマイナース村、サルミーン市、タフタナーズ航空基地、マアーッラト・ナアサーン村、マアッラトミスリーン市、マストゥーマ軍事キャンプ、タルマーニーン村、バルダクリー村、ナフラヤー村、ムウタリム村、ブサンクール村(2カ所)、ナビー・アイユーブ丘、バザーブール村、ラーム・ハムダーン村、アブザムー町、ムシャイリファ村、タッル・ハッターブ村、ビダーマー町(2カ所)、ナージヤ村、ズアイニーヤ村(2カ所)、ガッサーニーヤ村、クファイル村、バクサルヤー村、フライカ村、バルナース村、アリーハー市、ジャンナト・クラー村、バサーミス村
アレッポ県:アナダーン市、アレッポ市ラーシディーン地区、ジーナ村(2カ所)、カフル・カルミーン村、タワーマ村、第111中隊基地、アターリブ市、ダーラト・イッザ市、カフル・ヌーラーン村、バータブー村
ハマー県:ムガイル村

なおこのほかにも、トルコ軍はM4高速道路沿線に監視ポスト14カ所を設置している。

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ダルアー県では、シリア人権監視団によると、スワイダー県のハラバー村に近い県境の街道に仕掛けられていた爆弾が爆発し、街道を走行していたシリア軍の車輌に乗っていた兵士1人が死亡、2人が負傷した。

AFP, April 19, 2020、ANHA, April 19, 2020、AP, April 19, 2020、al-Durar al-Shamiya, April 19, 2020、Ministry of Defence of the Russian Federation, April 19, 2020、Reuters, April 19, 2020、SANA, April 19, 2020、SOHR, April 19, 2020、UPI, April 19, 2020などをもとに作成。

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ロシア難民受入移送居住センター:難民・国内避難民(IDPs)の帰還なし(2020年4月19日)

ロシア国防省は、合同調整センター所轄の難民受入移送居住センターの日報(4月19日付)を公開し、4月18日に帰還した難民はいなかったと発表した。

2018年7月18日以降に帰国したシリア難民の数は577,853人。

内訳は、レバノンからの帰還者182,605人(うち女性55,179人、子ども93,427人、ザムラーニー国境通行所、ジュダイダト・ヤーブース国境通行所、ダブスィーヤ国境通行所、クサイル国境通行所、タッルカルフ国境通行所を経由して帰国)、ヨルダンからの帰国者395,248人(うち女性118,618人、子ども201,569人、ナスィーブ国境通行所を経由して帰国)。

43カ国で難民登録したシリア人の数は6,715,172人。

なお、ロシアがシリア領内で航空作戦を開始した2015年9月30日以降に帰国した難民の数は807,133人(うち女性242,455人、子供411,918人)。

Ministry of Defence of the Russian Federation, April 19, 2020をもとに作成。

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