トルコ軍がアレッポ県アフリーン市近郊にあるアイン・ダーラ神殿を破壊(2018年1月29日)

AFP(1月29日付)は、シリアの文化財保護当局と英国で活動するシリア人権監視団の話として、20日にトルコ軍が、西クルディスタン移行期民政局支配下のアレッポ県アフリーン市一帯で開始を発表した「オリーブの枝」作戦で、アイン・ダーラ市にある遺跡が破壊されたと伝えた。

破壊されたのは鉄器時代のヒッタイト新王国のアイン・ダーラ神殿で、紀元前1300年頃から紀元前700年頃にかけて建設された。

1982年に発見され、玄武岩できた巨大なライオン像で知られる。

シリア人権監視団によると、アイン・ダーラ神殿は、「オリーブの枝」作戦の開始が発表される直前の26日にトルコ軍の越境爆撃で破壊された。

同監視団のラーミー・アブドゥッラフマーン代表によると、遺跡の60%が破壊されたという。

また、シリア文化省の遺跡博物館局のマアムーン・アブドゥルカリーム局長も、遺跡が攻撃を受けたことを確認したと述べた。

AFP, January 29, 2018

AFP, January 29, 2018をもとに作成。

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シリア軍はアレッポ市南西のハーディル村方面に侵攻したトルコ軍の車列を砲撃(2018年1月29日)

アレッポ県では、ドゥラル・シャーミーヤ(1月29日付)によると、県西部に侵攻したトルコ軍の車列が、ハーディル村に展開するシリア軍の砲撃を受けた。

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ドゥラル・シャーミーヤの特派員によると、トルコ軍の車列は、装甲車輌など100輌以上からなり、イドリブ県カフル・ルーサイン村に設置された通行所を経由して夜間にシリアに侵入し(https://youtu.be/34Z2mUm5AGA)、ハーディル村近郊に位置するアイス丘の後背地(第4ポイント)に終結しようとしていたところを、シリア軍によって砲撃されたという。

これに対して、トルコ空軍は、車列を防衛するため、F16戦闘機2機を派遣した。

なお、トルコ軍は2017年9月でのアスタナ6会議でのロシア、イランとの合意に基づくかたちで、イドリブ県北東部にあるシャーム解放機構最大の軍事拠点であるタフタナーズ航空基地、アレッポ県西部の複数カ所に部隊を進駐させている。

al-Durar al-Shamiya, January 29, 2018

AFP, January 29, 2018、ANHA, January 29, 2018、AP, January 29, 2018、al-Durar al-Shamiya, January 29, 2018、al-Hayat, January 30, 2018、Reuters, January 29, 2018、SANA, January 29, 2018、UPI, January 29, 2018などをもとに作成。

 

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ロジャヴァ幹部は、トルコ軍の侵攻を食い止めるため、自治の維持を前提条件とするシリア軍の国境地帯への展開をロシアとアサド政権に提案(2018年1月29日)

AFP(1月29日付)は、クルド人の複数高官が、ロシアおよびシリア政府に対してトルコによるアレッポ県アフリーン市一帯への侵攻を食い止めるための具体的な提案を行っていると伝えた。

提案を行った高官の一人で、民主統一党の支持団体である民主連合運動(TEV-DEM)の幹部の一人アルダール・ハリール氏は、「アフリーン市一帯を防衛するため、国境に(アサド)制憲が国境警備隊を展開させる可能性をロシア側に提案した」ことを明らかにした。

これに関して、西クルディスタン移行期民政局(ロジャヴァ)人民防衛隊(YPG)主体のシリア民主軍の政治母体であるシリア民主評議会の渉外担当顧問を務めるアフド・ヒンディー氏は「この提案は、この地域(アフリーン市一帯)に人民防衛隊、警察治安部隊(アサーイシュ)が残留することを条件に、シリア国旗を掲げる国境警備隊が対トルコ国境地帯に進軍することを認める」という内容であると述べるとともに、「アフリーンをシリア政府に引き渡すことは不可能だし、トルコに引き渡すことも同様に不可能だ」と強調した。

AFP, January 29, 2018、ANHA, January 29, 2018、AP, January 29, 2018、al-Durar al-Shamiya, January 29, 2018、al-Hayat, January 30, 2018、Reuters, January 29, 2018、SANA, January 29, 2018、UPI, January 29, 2018などをもとに作成。

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ロシア外務省「シリア軍にダマスカス郊外県東グータ地方で武装集団の挑発に乗らず停戦を履行するよう呼びかけた」(2018年1月29日)

ロシア外務省は声明を出し、ラタキア県フマイミーム軍事飛行場のシリア駐留ロシア軍司令部に設置された当事者和解調整センターが、「シリア政府軍に対して、(ダマスカス郊外県)東グータ地方での完全な停戦に関して、ウィーンでなされた合意に従い、合意に加わっていない武装集団の挑発に乗らないよう呼びかけた」と発表した。

AFP, January 29, 2018、ANHA, January 29, 2018、AP, January 29, 2018、al-Durar al-Shamiya, January 29, 2018、al-Hayat, January 30, 2018、Reuters, January 29, 2018、SANA, January 29, 2018、UPI, January 29, 2018などをもとに作成。

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ロシアのソチでシリア国民対話大会が開幕、トルコが後押しする反体制武装集団が代表団を派遣(2018年1月29日)

ロシアのリゾート都市ソチで、内戦後のシリアの未来像や復興・人道支援について協議するためのシリア国民対話大会が開幕した。

大会は、2017年10月にロシアのヴラジミール・プーチン大統領が「シリア諸国民大会」の名で提唱、同月のアスタナ7会議で、シリア政府と反体制武装集団の停戦の保証国であるロシア、トルコ、イランが合意して開催が決定された。

SANA, January 29, 2018

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ロシア外務省によると、大会は、ロシア、トルコ、イランの連名で呼びかけ国となり、シリア人1,600人を招待するとともに、ヨルダン、エジプト、サウジアラビア、イラク、レバノン、カザフスタン、米国、中国、英国、フランス、国連などもオブザーバーとして招待されている。

ジュネーブ会議に参加する反体制派代表団の一つ最高交渉委員会、西クルディスタン移行期民政局は参加をボイコットすると表明した。

だが、『ハヤート』(1月30日付)によると、トルコが後押しする「自由シリア軍」諸派(ハワール・キリス作戦司令室、ユーフラテスの盾作戦司令室、オリーブの枝作戦司令室に参加するシャーム軍団など)の代表団、大会に参加するためにソチに向かったという。

SANA, January 29, 2018

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一方、『ハヤート』(1月29日付)などがフランス消息筋の話として伝えたところによると、オブザーバーとして招待を受けた諸外国のうち、米国とフランスは、ロシアがダマスカス郊外県東グータ地方での停戦を履行していないとの理由で、大会への参加をボイコットした。

同消息筋によると、ロシアは1月26日にスイスで開幕したジュネーブ9会議において、東グータ地方での停戦を実施する旨誓約したが、同地では、アル=カーイダ系のシャーム自由人イスラーム運動、ラフマーン軍団、シャーム解放機構などからなる「彼らが不正を働いた」作戦司令室に対するシリア軍の攻撃が続いており、そのことが米国とフランスのボイコットにつながったという。

しかし、国連は、ジュネーブ会議の仲介役を務めるスタファン・デミストゥラ・シリア問題担当国連特別代表の派遣を決定、同氏がソチ入りした。

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『ハヤート』(1月30日付)は、複数の消息筋の話として、シリア国民対話大会を運営するロシア、イラン、トルコ、そしてシリア政府は、大会期間中に大会を統括する議長評議会、最高委員会、組織委員会に加えて、制憲委員会、人道委員会を含む三つの分科会を設置することで合意済だと伝えた。

なお、大会は、バアス党が指導する連立与党の進歩国民戦線に加盟するアラブ社会主義連合党のサフワーン・クドスィー書記長が議長を務め、議長評議会には、「モスクワ・リスト」(モスクワ・プラットフォーム)を主導してきたカドリー・ジャミール前副首相、シリア革命反体制勢力国民連立元議長でカタール在住のアフマド・ウワイヤーン・ジャルバー氏、ドイツで活動する「モスクワ・リスト」のメンバーの一人ランダー・カスィース氏、国内で活動を続ける反体制組織「民主主義のためのシリア人」の代表のマイス・クライディー氏、欧州で活動するシリア国家建設潮流のリーム・トゥルクマーニー氏が参画する見込みだという。

また、制憲委員会の議長に関しては、ロシアとシリア政府は、人民議会議員のアシュワーク・アッバース氏を任命することで合意しているという。

だが、インターファックス(1月29日付)は、シリア国民対話大会で設置が予定されている制憲委員会の委員長にスタファン・デミストゥラ・シリア問題担当国連特別代表が就任する見込みだと伝えた。

SANA, January 29, 2018

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アスタナ会議におけるロシア代表団を率い、シリア国民対話大会のロシア代表団の団長も務めるアレクサンドル・ラヴレンチエフ・シリア問題担当大統領特使は、大会開幕に先立って、「目標は、憲法について議論するための委員会の活動に参加する候補者を選定することにある」としたうえで、「大会に出席者に閉幕声明の審議と、シリア復興支援を求める文書を国連、国際機関に送ることを提案する」との方針を明らかにした。

一方、参加予定のシリア人に関して「シリア社会のすべての集団、そしてシリアの未来に関心を持つすべての人が大会に参加するだろう…。クルド人は個人として招聘した」と述べた。

『ハヤート』(1月30日付)などが伝えた。

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ドゥラル・シャーミーヤ(1月29日付)が入手した議事次第によると、2日間の日程(29日午前6時から30日午後8時40分)のうち、対話に割かれているのは6時間半のみで、32時間40分もの時間が、休憩と飲食(12時間)、移動(10時間10分)、就寝(10時間半)に充てられているという。

al-Durar al-Shamiya, January 29, 2018

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SANA(1月29日付)は、ソチの複数の消息筋の話として、2日間の議事終了後に発表される予定の「閉幕声明」(案)がリークされたことに関して、「まったくもって不正確なものだ」と伝えた。

また、ロシアのマリア・ザハロワ外務省報道官も、フェイスブックのアカウントを通じて「閉幕声明」(案)が陸されたことに不快感を示した。

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『シャルク・アウサト』(1月30日付)は、西側高官からの情報として、ワリード・ムアッリム外務在外居住者大臣が、29日のソチでのシリア国民対話大会の開幕に先立って、ロシアに向かう出席者数百人を首都ダマスカスのオペラ・ハウス(ウマウィーイーン広場)に招集し、大会で設置が予定されている議長評議会や制憲委員会メンバーの最終候補の氏名を開示した、と伝えた。

それによると、議長評議会メンバーの最終候補は10人で、サフワーン・クドスィー(アラブ社会主義連合党書記長)、ランダ・カスィース、アフマド・ウワイヤーン・ジャルバー(ガド潮流代表)、ジャマール・カーディリー(労働総連合総裁)、アマル・ヤーズジー(シリア民族社会党)、マイス・クライディー、ファーリス・バイユーシュ(自由イドリブ軍元司令官)、ハイサム・マンナーア(カムフ潮流代表)、ズハイル・ラマダーン(芸術組合)らからなる。

一方、制憲委員会メンバーは25人からなり、アフマド・クズバリー(ジュネーブ会議のシリア政府代表団)、アフマド・アッカーム氏、カドリー・ジャミール(モスクワ・リスト代表)、ランダ・カスィース、アマル・ヤーズジーらからなる。

AFP, January 29, 2018、ANHA, January 29, 2018、AP, January 29, 2018、al-Durar al-Shamiya, January 29, 2018、al-Hayat, January 29, 2018、January 30, 2018、Interfax, January 29, 2018、Reuters, January 29, 2018、SANA, January 29, 2018、al-Sharq al-Awsat, January 30, 2018、UPI, January 29, 2018などをもとに作成。

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ダルアー県で対立し合う自由シリア軍諸派の兵力引き離しの任務についていたアル=カーイダ系のシャーム解放機構(旧ヌスラ戦線)の拠点が爆破され複数の戦闘員が死傷(2018年1月29日)

ダルアー県では、ドゥラル・シャーミーヤ(1月29日付)によると、ムサイフラ町近郊にあるアル=カーイダ系のシャーム解放機構の拠点で爆弾が仕掛けられた車が爆発し、シャーム解放機構司令官のアブー・ハムザ・ガーディヤ氏を含む戦闘員および民間人複数が死傷した。

検問所に展開していたシャーム解放機構の部隊は、最近になって対立を深めていた革命軍とスンナ青年部隊(いずれもいわゆる「自由シリア軍」諸派)の兵力引き離しの任務についていたという。

al-Durar al-Shamiya, January 29, 2018

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イドリブ県では、シリア人権監視団によると、シリア軍が、シャーム解放機構などからなる反体制武装集団の支配下にあるサラーキブ市の野菜市場などを爆撃し、16人が死亡した。

この爆撃により、「国境なき医師団」の支援をうけているウダイ病院が被弾し、子供1人を含む5人が死亡、6人が負傷したという。

一方、SANA(1月29日付)によると、アブー・ズフール航空基地を制圧したシリア軍部隊が同盟部隊とともに、県南東部でシャーム解放機構などからなる反体制武装集団に対する掃討作戦を継続し、ジャフル村、ハフィーヤ村、ダフラト・ハフィーヤ拘置を新たに制圧した。

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ダマスカス郊外県では、ドゥラル・シャーミーヤ(1月29日付)によると、シリア軍が東グータ地方のハラスター市に対して砲撃を行い、複数人が負傷した。

al-Durar al-Shamiya, January 29, 2018

一方、SANA(1月29日付)によると、反体制武装集団がハラスター市近郊の住宅街を砲撃し、4人が負傷した。

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ダマスカス県では、SANA(1月29日付)によると、ダマスカス郊外県東グータ地方で活動を続ける反体制武装集団がアッシュ・ウルール地区を砲撃し、3人が負傷した。

AFP, January 29, 2018、ANHA, January 29, 2018、AP, January 29, 2018、al-Durar al-Shamiya, January 29, 2018、January 30, 2018、al-Hayat, January 30, 2018、Reuters, January 29, 2018、SANA, January 29, 2018、UPI, January 29, 2018などをもとに作成。

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トルコ軍はアフリーン市北西の第915丘、ウーシャーギー村を制圧(2018年1月29日)

アレッポ県では、ドゥラル・シャーミーヤ(1月29日付)によると、「オリーブの枝」作戦を遂行するトルコ軍とその支援を受ける反体制武装集団(自由シリア軍)が、西クルディスタン移行期民政局(ロジャヴァ)人民防衛隊(YPG)主体のシリア民主軍との戦闘を続け、ラージュー町南部の第915丘、ウーシャーギー村を制圧した。

トルコ軍はまた、アフリーン市一帯のシリア民主軍拠点に対して、戦闘機・ヘリコプターによる爆撃、砲撃を継続した。

ANHA, January 29, 2018

一方、アレッポ県では、SANA(1月29日付)によると、トルコ軍がジャンダリース市、ハマーム村、4月17日ダム一帯、アフリーン市近郊のカバリー村などに対して越境爆撃と砲撃を続け、同地のインフラが破壊され、住民18人が死亡、11人が負傷した。

シリア人権監視団によると、トルコ軍の爆撃・砲撃により、新たに民間人14人が死亡、民間人の犠牲者総数は55人になったという。

また、ANHA(1月29日付)によると、西クルディスタン移行期民政局(ロジャヴァ)人民防衛隊(YPG)主体のシリア民主軍が、ジャンディールス市近郊のハマーム村一帯に侵攻したトルコ軍および反体制武装集団と交戦した。

さらに、西クルディスタン移行期民政局(ロジャヴァ)人民防衛隊(YPG)主体のシリア民主軍は声明を出し、ブルブル町近郊でトルコ軍の無人航空機を撃墜したと発表した。

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ANHA(1月29日付)によると、アレッポ市の青年男女30人からなるアレッポ青年大隊が、西クルディスタン移行期民政局アフリーン地区での総動員発令に応えるかたちでアレッポ県アフリーン市一帯での戦闘に参加すると発表した。

ANHA, January 29, 2018

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ANHA(1月29日付)は、トルコ軍が「オリーブの枝」作戦の開始を宣言した1月20日から28日にかけてのアレッポ県アフリーン市一帯に対するトルコ軍の攻撃の実態を明らかにした。

それによると、トルコ軍はこの8日間で戦闘機72機を投入し、アフリーン市一帯で100回以上の爆撃を実施するとともに、断続的に砲撃を行い、民間人50人が死亡、137人が負傷、そのほとんどが女性と子供だという。

AFP, January 29, 2018、ANHA, January 29, 2018、AP, January 29, 2018、al-Durar al-Shamiya, January 29, 2018、al-Hayat, January 30, 2018、Reuters, January 29, 2018、SANA, January 29, 2018、UPI, January 29, 2018などをもとに作成。

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ロシア国防省:ロシア・トルコ停戦監視委員会のロシア側監督チームは8件の停戦違反を、トルコ側は8件の違反を確認(2018年1月29日)

ロシア国防省は声明を出し、過去24時間(1月29日)で、「緊張緩和地帯設置にかかる覚書」への違反を8件(ラタキア県3件、ダマスカス県・ダマスカス郊外県2件、ヒムス県2件、アレッポ県1件)確認したと発表した。

またトルコ側の監視チームも8件(ラタキア県3件、ダマスカス県・ダマスカス郊外県4件、イドリブ県4件)の停戦違反を確認したという。

ほとんどの停戦違反は、シャーム解放機構の支配地域として登録されている地域で発生したという。

Ministry of Defence of the Russian Federation, January 29, 2018をもとに作成。

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