シャーム解放機構のジャウラーニー指導者「ロシアと政権の攻撃を停止させることができる政治案などない。民間人、軍人の区別なく戦わねばならない」(2019年9月8日)

シリアのアル=カーイダと目されるシャーム解放機構に近いイバー・ネット(9月8日付)は、シャーム解放機構のアブー・ムハンマド・ジャウラーニー指導者は、9月3日に反体制派支配地域内某所でシューラー評議会とシリア救国内閣の幹部、地元名士、学術関係者と会談したことを明らかにした。

会談では、イドリブ県を中心とする反体制派支配地域の現状について意見が交わされた。

ジャウラーニー指導者が出席者からの質問に答え、「ロシアと政権の攻撃を停止させることができる政治案など存在しない。戦いは政治的側面を超えた軍事的なもので、アッラーのほかに存在する唯一の保証人がムジャーヒディーンなのだ。そして彼らの背後に住民がいる。解放区における力の源泉は、今も昔も存在し、その最たるものとは、諸派の調和と組織の維持、そして安定した活動だ」と述べた。

また「こうしたありようは、政権の制度が衰退し、解体の危機に苦しんでいるなかで敵を憤慨させるものだ。加えて、諸派と住民の社会的な結束は強く、自治を担い、大学や組織を建設できるグループもいる。このグループは自らの責任を果たすことができる。これは敵を大いに脅かすものだ」と付言した。

そのうえで「我々は最後の戦いで降伏してはならない。我々は(ハマー県北部での)敗北が闘いの終わりだと見てはいない。戦いで負けることはあるが、戦闘に勝つことが義務なのだ。過去にこだわることが敗北の始まりとなる…。戦争は大概が心理的なものだ。相手の意志を挫いたものが勝つ」と強調した。

さらに「イスラーム軍、ラフマーン軍団は、グータから(シャーム解放)機構が退去する際に救ってくれたか? (シャーム解放)機構に以前から敵意を持ち、自らの家族をトルコなど安全な場所に逃がしたこれらの組織の一部のメンバーは、革命は終わったとの憎しみの念を募らせた…。この地域(反体制派支配地域)のかたちはこの闘争の結果で変わることになるだろう…。解放区における軍事力は、諸派が糾合を続け、一致団結すれば、政権を打ち負かし、奪われた地域を奪還するのに十分だ…。民間人と軍人の区別はない。解放区のすべての住民が戦わねばならない」と述べた。

一方、ロシアについては「ロシアにもっとも痛みを与えているのが(シャーム解放)機構だ…。ロシアは大国だ…。それゆえ、我々は戦いが大規模なものであることを知るべきだ。ロシアは最小限の代価で勝利を収めたいと思っている。かつて(ソ連時代)の地位に自らを復活させるために負けたくないと考えている…。ロシアがイドリブ県での戦いに参戦するのには地政学的な目的がある。そこは地中海への玄関であり、ガスがあり、シリアに軍事基地を建設しており、これらの基地の安全を保障しようとしている」と述べた。

AFP, September 8, 2019、ANHA, September 8, 2019、AP, September 8, 2019、al-Durar al-Shamiya, September 8, 2019、Reuters, September 8, 2019、SANA, September 8, 2019Shabaka Iba’ al-Ikhbariya, September 8, 2019、SOHR, September 8, 2019、UPI, September 8, 2019などをもとに作成。

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米・トルコ軍はシリア北西部国境地帯(ラッカ県~ハサカ県)での合同パトロールを本格始動、シリア外務省は国際法違反と非難(2019年9月8日)

ラッカ県では、ANHA(9月8日付)によると、イスラーム国に対する「テロとの戦い」を行う有志連合を主導する米軍が、人民防衛隊(YPG)主体のシリア民主軍に所属するタッル・アブヤド(ギレ・スピ)軍事評議会と連携して、タッル・アブヤド市東のハシーシャ村からハサカ県ナッス・タッル村に至る国境地帯で合同パトロールを実施した。

反体制派系のドゥラル・シャーミーヤ(9月8日付)によると、合同パトロールは米軍とトルコ軍によるもの。

ハサカ県ラアス・アイン市(スィリー・カーニヤ)でも、米軍は、スィリー・カーニヤ軍事評議会と連携した、ラアス・アイン市に面する国境地帯でトルコ軍と合同パトロールを実施した。

なお、タッル・アブヤド市一帯での合同パトロールは、トルコと米国の合意に沿って、シリア民主軍がラアス・アイン市からタッル・アブヤド市に至る国境地帯から拠点を撤去させて以降初めて。

ただし、ラアス・アイン市一帯でのパトロールは今回が3度目。

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シリアとイラクでイスラーム国に対する「テロとの戦い」を行う有志連合CJTF-OIR(「生来の決戦作戦」統合任務部隊)は、米国・トルコ両軍が、ラッカ県のタッル・アブヤド市からハサカ県のラアス・アイン市にいたる地域で合同パトロールを実施したと発表した。

合同パトロールは、同地に展開していた人民防衛隊(YPG)と女性防衛隊(YPJ)が撤退したのを受けたもので、「トルコの安全保障上の懸念の払拭」が目的だという。

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シリア外務在外居住者省の公式筋は、米国とトルコがシリア北東部での「安全地帯」設置に向けて、同地での合同パトロールを開始したことに関して、国際法への明確な違反にあたるとし、もっとも厳しい表現で非難した。

SANA(9月8日付)が伝えた。

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ハサカ県では、シリア人権監視団によると、貨物車輌など約150台からなる米主導の有志連合の車列が、人民防衛隊(YPG)主体のシリア民主軍への軍事兵站物資を積んで、イラク北部から北・東シリア自治局支配地域に入った。

AFP, September 8, 2019、ANHA, September 8, 2019、AP, September 8, 2019、al-Durar al-Shamiya, September 8, 2019、Reuters, September 8, 2019、SANA, September 8, 2019、SOHR, September 8, 2019、UPI, September 8, 2019などをもとに作成。

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アフリーン解放軍団はトルコ占領下のアレッポ県北部で反体制派戦闘員2人を殺害したと発表(2019年9月8日)

アレッポ県では、アフリーン解放軍団が声明を出し、5日、7日、8日にトルコ占領下のアアザーズ市近郊に位置するカフルカルビーン、マーリア市近郊で反体制武装集団の拠点などを攻撃し、戦闘員2人を殺害したと発表した。

AFP, September 8, 2019、ANHA, September 8, 2019、AP, September 8, 2019、al-Durar al-Shamiya, September 8, 2019、Reuters, September 8, 2019、SANA, September 8, 2019、SOHR, September 8, 2019、UPI, September 8, 2019などをもとに作成。

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所属不明の航空機複数機が、ダイル・ザウル県ブーカマール市とその一帯に展開する「イランの民兵」の拠点を爆撃(2019年9月8日)

ダイル・ザウル県では、シリア人権監視団によると、所属不明の航空機複数機が、シリア政府支配下のブーカマール市とその一帯に展開する「イランの民兵」および親政権民兵の拠点複数カ所を爆撃した。

DPN(9月9日付)によると、攻撃を受けたのは、ブーカマール市一体の「イランの民兵」の拠点複数カ所。

ユーフラテス・ポスト(9月9日付)は、この爆撃が米主導の有志連合によるものだと伝えている。

RT(9月9日付)が、複数のイラク筋の話として伝えたところによると、この爆撃で「イラクのシーア派諸派」18人が死亡、38人が負傷した。

AFP, September 8, 2019、ANHA, September 8, 2019、AP, September 8, 2019、DPN , September 9, 2019、al-Durar al-Shamiya, September 8, 2019、Euphrates Post, September 9, 2019、Reuters, September 8, 2019、RT, September 9, 2019、SANA, September 8, 2019、SOHR, September 8, 2019、UPI, September 8, 2019などをもとに作成。

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シリア軍はイドリブ県、ハマー県北西部への砲撃を激化、トルコ軍監視所一帯を砲撃(2019年9月8日)

シリアのアル=カーイダと目されるシャーム解放機構が軍事・治安権限を掌握するイドリブ県、ハマー県北部、ラタキア県北部、アレッポ県西部の緊張緩和地帯では、シリア・ロシア軍が一方的停戦を宣言してから8日目(爆撃を激化させてから129日目)を迎えた9月8日、シリア・ロシア軍の爆撃は記録されなかったが、シリア軍による砲撃は再び激しさを増した。

シリア軍の砲撃激化は、6日にハマー県北西部に反体制武装集団の無人航空機(ドローン)3機が飛来(シリア軍防空部隊が撃破)したのを受けたもので、地上部隊は160発以上の砲撃を行った。

シリア人権監視団によると、シリア・ロシア軍が緊張緩和地帯への攻撃を激化させた4月30日以降の戦闘による犠牲者数は前日より1人(民間人1人、シリア軍兵士は0人、反体制武装集団戦闘員0人)増えて4,127人となった。

内訳は、民間人1,050人(うち女性186人、子供261人)、シリア軍兵士1,406人、反体制武装集団戦闘員1,671人。

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イドリブ県では、シリア人権監視団によると、シリア軍地上部隊がカフルナブル市、マアッルシャムシャ村、ダイル・シャルキー村、マアッル・シャマーリーン村、ナキール村を砲撃した。

ドゥラル・シャーミーヤ(9月8日付)によると、カフルナブル市に対するシリア軍の砲撃で住民1人が死亡した。

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ラタキア県では、シリア人権監視団によると、シリア軍地上部隊がカッバーナ村一帯を砲撃した。

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ハマー県では、シリア人権監視団によると、シリア軍地上部隊がガーブ平原、シャフシャブー山(イドリブ県)に面する村々を砲撃した。

シリア軍は、トルコ軍の監視所が設置されているシール・マガール村一帯を砲撃したという。

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アレッポ県では、シリア人権監視団によると、シリア軍地上部隊がハイヤーン町、フライターン市、アナダーン市を砲撃した。

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ダルアー県では、ドゥラル・シャーミーヤ(9月9日付)によると、空軍情報部ダルアー支部長のスライマーン・ハンムード大佐がダルアー市で遺体で発見された。

何者かによって暗殺されたと思われる。

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ロシア国防省は声明を出し、過去24時間で「緊張緩和地帯設置にかかる覚書」への違反を28件(アレッポ県5件、ラタキア県10件、ハマー県4件、イドリブ県9件)確認したと発表した。

トルコ側の監視チームは停戦違反を6件(イドリブ県3件、アレッポ県3件)確認した。

AFP, September 8, 2019、ANHA, September 8, 2019、AP, September 8, 2019、al-Durar al-Shamiya, September 8, 2019、September 9, 2019、Ministry of Defence of the Russian Federation, September 8, 2019、Reuters, September 8, 2019、SANA, September 8, 2019、SOHR, September 8, 2019、UPI, September 8, 2019などをもとに作成。

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ロシア難民受入移送居住センター:レバノンから408人、ヨルダンから1,083人の難民が帰国、避難民8人(うちルクバーン・キャンプからの帰還者0人)が帰宅(2019年9月8日)

ロシア国防省は、合同調整センター所轄の難民受入移送居住センターの日報(9月8日付)を公開し、9月7日に難民1,491人が新たに帰国したと発表した。

このうちレバノンから帰国したのは408人(うち女性123人、子供208人)、ヨルダンから帰国したのは1,083人(うち女性325人、子供552人)。

これにより、2018年7月18日以降に帰国したシリア難民の数は390,407人となった。

内訳は、レバノンからの帰国者122,505人(うち女性37,209人、子ども62,916人、ザムラーニー国境通行所、ジュダイダト・ヤーブース国境通行所、ダブスィーヤ国境通行所、クサイル国境通行所、タッルカルフ国境通行所を経由して帰国)、ヨルダンからの帰国者266,902人(うち女性80,105人、子ども136,108人、ナスィーブ国境通行所を経由して帰国)。

45カ国で難民登録したシリア人の数は6,648,041人(うち女性1,994,412人、子供3,390,501人)。

また、ロシアがシリア領内で航空作戦を開始した2015年9月30日以降に帰国した難民の数は 619,687人(うち女性185,972人、子供315,946人)となった。

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一方、国内避難民8人が新たに帰宅した。

うち東グータ地方に帰宅したのは0人、ダイル・ザウル県サーリヒーヤ村の通行所を経由してダマスカス郊外県、ヒムス県などに帰宅したのは7人(うち女性2人、子供4人)、ヒムス県南東グラーブ山の通行所を経由して帰還したのは1人、イドリブ県アブー・ズフール町郊外の通行所およびハマー県スーラーン町の通行所を経由して帰宅したのは0人だった。

グラーブ山通行所を経由して帰還した1人のうち、米主導の有志連合が占領するヒムス県タンフ国境通行所一帯地域(55キロ地帯)に面するヨルダン北東部のルクバーン・キャンプから帰国した難民は0人だった。

これにより、2019年1月以降に帰宅した国内避難民の数は35,319人(うち女性10,931人、子供16,207人)に、2015年9月30日以降に帰宅した国内避難民の数は1,303,915人(うち女性393,490人、子供659,973人)となった。

Ministry of Defence of the Russian Federation, September 8, 2019をもとに作成。

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