シリア民主軍がダイル・ザウル軍事評議会司令官を包囲、拘束し、両者の緊張が一気に高まるなか、グワイラーン刑務所でダーイシュ収監者が暴動(2023年8月27日)

ハサカ県では、RT(8月27日付)やシリア人権監視団によると、人民防衛隊(YPG)主体のシリア民主軍が、同軍に所属するアラブ系部族からなるダイル・ザウル軍事評議会のアフマド・ハビール(アブー・ハウラ)司令官を、シリア政府と北・東シリア自治局の共同支配下にあるタッル・タムル町近郊のワズィール休憩所で拘束、軟禁するとともに、ハビール司令官の護衛部隊を包囲した。

ハビール司令官は、ワズィール休憩所に設置されているシリア民主軍のマズルーム・アブディー司令官の本営で開催される緊急会合への参加を求められ、同地を訪れていた。

シリア民主軍のダイル・ザウル軍事評議会に対する締め付け、関係者らの逮捕の一環で、ワズィール休憩所に対するシリア民主軍の包囲が続くなか、ダイル・ザウル軍事評議会の司令官の1人ジャラール・ハビール氏は、事態打開に向けて米主導の有志連合に介入を要請する一方、アカイダート部族に対してダイル・ザウル県内のシリア民主軍の拠点を包囲するよう呼びかけた。

これを受け、シリア民主軍側もラッカ県の部隊をダイル・ザウル県に派遣するとともに、内務治安部隊(アサーイシュ)がダイル・ザウル県農村地帯で外出禁止令を発出した。

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シリア人権監視団によると、同刑務所では収監中のダーイシュのメンバーが暴動を起こし、北・東シリア自治局内務治安部隊(アサーイシュ)が刑務所を封鎖した。

ダーイシュがハサカ市グワイラーン刑務所での暴動は、シリア民主軍とダイル・ザウル軍事評議会の対立激化に乗じるかたちで発生したという。

イフバーリーヤ(8月27日付)によると、北・東シリア自治局の管理下にあるハサカ市のグワイラーン刑務所(ハサカ県グワイラーン地区工業高校)に収監されていたダーイシュ(イスラーム国)のメンバー数人が脱走した。

暴動は約2時間で鎮圧され、ダーイシュのスリーパーセルのメンバーと見られる3人が拘束された。

一方、サアダ村では、ダーイシュのスリーパーセルと見られるオートバイ2台に乗った武装グループがシリア民主軍の車輌を襲撃し、兵士1人を殺害、1人を負傷させた。

AFP, August 27, 2023、ANHA, August 27, 2023、al-Durar al-Shamiya, August 27, 2023、al-Ikhbariya, August 27, 2023、‘Inab Baladi, August 27, 2023、Reuters, August 27, 2023、RT, August 27, 2023、SANA, August 27, 2023、SOHR, August 27, 2023などをもとに作成。

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