1日のイスラエルによる駐シリア・イラン大使館への爆撃をめぐる国連安保理緊急会合:米国、英国、フランスはイスラエルではなく、イランを非難(2024年4月2日)

国連安保理緊急会合(議長:ヴェネッサ・フレージャー・マルタ常駐代表)が米ニューヨークにある国連本部で開催された。

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ロシアのワシリー・ネベンジャ駐国連大使は以下の通り発言した。

ロシアは、シリアの領土に対して今も行われている攻撃を、この国の主権と領土保全に対する重大な侵害とみなし、強く非難する。
我々は、紛争をさらに激化させることを目的としたイスラエルによるこうした攻撃的な行動を容認することは決してできず、阻止されなければならないとの姿勢に基づいている。我々は、イスラエルに対して、シリアや他の近隣諸国における挑発的な武力行使を放棄するよう強く求める。こうした行為は、地域全体において極めて深刻なリスクと結果をもたらしかねない。
国連安保理決議第2728号の即時停戦の要求にもかかわらず、死傷者の数は増加を続けている。
米国の黙認のもと、イスラエル指導部が、法的拘束力のある安保理の決定を露骨に無視していることを大いに懸念している。
我々は国際社会に対し、シリアの主権と外交財産の不可侵性を侵害するイスラエルの無謀な行動を無条件で非難するよう求める…。イスラエルの侵略は、国連憲章の規定と安保理および総会の関連決議だけでなく、外交および領事関係に関するウィーン条約の基本原則も無視している。
我々は、イラン外交施設に対するイスラエルの行動を公正に評価してくれることを期待している。

そのうえで、この攻撃によって事態が悪化した場合、攻撃を非難していない米国、英国、フランスが全面的にその責任を負うことになるだろうと強調した。

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中国の馬朝旭国連大使は、国連憲章と国際法への深刻な違反だと非難したうえで、「国際法のレッドラインと国際関係の基本的な基準がたびたび違反されている」と警鐘を鳴らした。

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フランスのニコラ・ドゥ=リビエール国連大使は、ハマースとイスラエルの戦闘が始まった昨年10月7日以降、イランと地域におけるその協力者は事態のエスカレートに思い責任を負っているとしたうえで、国際社会が緊張を緩和するためにあらゆることを行い、すべての当事者に自制を呼びかけねばならないと主張した。その一方で、シリアに対しては、国連安保理決議第2254号に沿った政治プロセスに専念するよう呼びかけた。

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日本の志野光子国連大使は、イスラエルによる駐シリア・イラン大使館爆撃に伴われるであろう事態を深い懸念をもって注視しているとしたうえで、すべての当事者に自制を呼びかけた。

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英国は、外交施設の不可侵性や外交官および領事職員の保護が重要だとしつつ、地域を不安定化させようとするイランの役割は受け入れられないと非難、イランの支援を受けるハマース、パレスチナ聖戦機構、ヒズブッラー、シリアとイラクの民兵、フーシー派は国際船舶や多国籍軍への攻撃に対して責任があると非難した。

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米国は、シリアでの爆撃に関与しておらず、事前に承知しておらず、また標的となったビルが何だったのかを確認してないと強調する一方、イランとそのプロキシ、協力組織は地域の緊張を高めることを回避する必要があると主張した。また、イランは、地域情勢に乗じてイスラエルなどへの代理戦争をエスカレートさせてはならないとの米国の警告を無視してきたと非難した。

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イランのザフラー・エルシャーディー駐国連大使も以下の通り発言した。

米国は…(中東)情勢に乗じて、シリアと地域を不安定化させようとしている。(ガザ地区で)イスラエル政権が犯したすべての犯罪に責任があるのは米国だ。

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シリアのクサイ・ダッハーク国連常駐代表は、1日のイスラエルによる駐シリア・イラン大使館への爆撃に関して、外交使節やその職員の保護を定めた国連憲章と国際監修に違反していると非難、米政権がイスラエルによって繰り返される攻撃に対して完全なる責任を負っている、と主張した。

AFP, April 2, 2024、ANHA, April 2, 2024、‘Inab Baladi, April 2, 2024、Reuters, April 2, 2024、RIA Novosti, April 2, 2024、SANA, April 2, 2024、SOHR, April 2, 2024などをもとに作成。

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