『ワシントン・ポスト』によると、米国の首都ワシントンDCを訪問中のアフマド・シャルア暫定大統領に対するインタビューを掲載した。
インタビューは約1時間に及び、シャルア暫定大統領はそのなかで以下の通り述べた。
最も重要な目的は、シリアと米国との関係を築き始めることだ。というのも、過去100年間、それはあまり良い関係ではなかったからだ。
我々は米国とシリアの間の共通の利害を探していた。そして、我々は多くの共通の利害を持っていることを見出した…。例えば、安全保障上の利害、経済的利害などだ。シリアの安定は地域全体に影響を与え、シリアの不安定もまた地域に影響を与える。
安定は経済と結びついており、経済、すなわち経済発展は制裁の解除と結びついている。この議論は数ヵ月にわたって続いており、私は良い結果に到達したと信じている。しかし、我々はまだ最終的な決定を待っている。まず、戦うということは、それが高貴な目的のために行われるならば、恥ずかしいことではない。特に、自らの土地と、不正義に苦しむ人々を守るために戦っている場合には、私は、それはむしろ称賛されるべきことだと信じている。
私は多くの戦争で戦ってきた。だが、私は無実の人間の死を引き起こしたことは一度もない。
人が戦いに身を投じるときには、非常に強い倫理的基盤を持っているべきだ。この地域は、西側諸国、とりわけ米国の政策の影響を受けてきた…。それらの政策の一部は誤りであり、無意味な戦争をいくつも引き起こしたと認める米国人が非常に多くいる。(マイノリティ宗派への攻撃を止めるための具体的策について)シリアはつい最近まで激しい戦争から抜け出したばかりであり、60年にわたって国を支配していた独裁的で苛酷な体制の下に生きてきた。我々は今、移行期にあります。移行期には、安定した国々とは異なる状況、条件、法律が存在する。例えば、米国の南北戦争が終わった後、1年で安定していたと言えるのか?… 我々は今、国家を再建し、法を回復・再構築する段階にある。だが、私はシリアに問題がまったくないとは言っていない。物語はまだ終わっていないのだ。独立や自治を求める集団には個別の利害がある。そのような党派の中には、自らの利害を正当化しようとし、宗派や信仰をその傘として利用する者もいる。彼らは、自らの宗派や信仰に対する存在的脅威について語ります。シリアでは、我々は1400年間、異なる集団、異なる宗教集団と共存してきた。我々は今も存在しており、その多様性を今も保持している。
我々はダーイシュ(イスラーム国)と10年間にわたって戦争をしてきた。そしてそれを、西側のいかなる勢力や他のいかなる国とも協調することなく行ってきた。今日のシリアは、この責任を担う能力を持っている。シリアを分断したままにしておくこと、あるいは政府の管理下にないいかなる軍事力を持つことも、ダーイシュが繁栄するための最良の環境を意味する。私は、最良の解決策は、シリアに駐留している米軍が、(シリア民主軍のシリア軍への統合を)監督することだと信じている。そうすれば、シリア領土を防衛する任務は国家の責任となるだろう。
シリアは50年前にイスラエルと戦争状態に入った。そして1974年には、停戦協定(兵力引き離し協定)があった。この協定は50年間続いた。だが、旧体制が崩壊したとき、イスラエルはこの協定を破棄した。彼らはシリアでプレゼンスを拡大し、国連の(平和維持)任務を排除し、新たな領土を占領した。
イスラエルは12月8日以来、シリアで1,000回を超える爆撃を実施しており、その中には大統領宮殿と国防省の爆撃も含まれている。しかし、我々はシリアを再建したいので、これらの侵略に対して報復はしなかった。
イスラエルがシリアで行った進攻は、安全保障上の懸念から来ているのではなく、彼らの拡張主義的野心から来ている。
イスラエルは常に、「イランの民兵」やヒズブッラーがもたらす脅威を恐れているため、シリアに対して懸念を抱いていると主張してきた。しかし、我々こそがそれらの勢力をシリアから追い出したのだ。
我々はイスラエルと直接交渉を行っており、合意に達するまでの道のりを大きく進んでいる。しかし最終合意に至るためには、イスラエルが12月8日以前の国境まで撤退しなければならない。
米国はこの交渉で我々と共にあり、この件に関しては多くの国際的当事者が我々の見解を支持している。今日、我々はトランプ大統領も我々の見解を支持していることを確認した。そして彼は、これに対する解決策をできるだけ早く達成するよう全力を尽くすだろう。この地域全体(首都ダマスカス南方)を非武装化することについて語るのは難しい。なぜなら、もし何らかの混乱が起きた場合、誰がそこを防衛するのだ? もし、この非武装地帯が、ある勢力によってイスラエルを攻撃するための発射台として利用されたら、その責任は誰が負うのか? そして最終的に言えば、これはシリアの領土であり、シリアは自国の領土を自らの意思で扱う自由を持つべきだ。
イスラエルは、イスラエルを守るためとしてゴラン高原を占領した。そして今、彼らはゴラン高原を守るためとして、シリア南部に条件を課している。数年後、彼らはシリア南部を守るために、シリア中央部を占領するかもしれない。その道のりの果てには、彼らはミュンヘンにまで到達することになるでしょう。我々はロシアと10年間にわたって戦争をしてきた。それは厳しく、困難な戦争だった。彼らは何度も私を殺害したと発表した。
だが、我々はロシアを必要としている。なぜなら、彼らは国連安保理の常任理事国だからだ。我々はいくつかの問題で、彼らの票が我々の側にあることを必要としている。また、我々は彼らと戦略的な利害関係を共有している。我々は、ロシアがシリアに関して別の選択肢、あるいは他の方法を取るように追い込まれることを望んでいない。
バッシャール・アサドの問題はロシアにとって厄介なものだ。そして、我々の彼らとの関係は始まったばかりだ。我々はシリア人として、アサドを裁きにかけるよう求める権利を保持し続ける。
(C)青山弘之 All rights reserved.
