トルコ占領下のシリア北部各所でパンの値上げに抗議するデモ(2020年6月22日)

ラッカ県では、ANHA(6月22日付)やシリア人権監視団によると、トルコの占領下にあるタッル・アブヤド市で、同地の自治を委託されている地元評議会に抗議するゼネストが行われ、すべての店舗が閉められた。

ゼネストは、6月21日に地元評議会が、シリア・ポンドの急落に対応するためとして、支配地域内でのパンの価格を2倍に設定、その購入をトルコ・ポンドに限定すると決定したのを受けたもの。

トルコ占領下のシリア北部では、これまで、8枚入りのパンの袋は250シリア・ポンドで販売されていたが、ワーイル・ハマド地元評議会議長は6月21日からこれを1トルコ・ポンド(約500シリア・ポンド)で販売すると発表していた。

1米ドル=1,670シリア・ポンドで推移していた為替レートは、この1ヶ月で1米ドル=3,500シリア・ポンドへと一気に下落した(なお、「アラブの春」が波及する以前は、1米ドル=47~50シリア・ポンドで推移していた)。

タッル・アブヤド市ではまた、地元評議会が本部として転用している市庁舎の前で抗議デモが行われ、パンの価格上昇とトルコ・リラでの販売に異議が唱えられた。

デモには数百人が参加、その一部が市庁舎内に侵入し、抗議の意思を露わにした。

SANA(6月22日付)、ザマーン・ワスル(6月22日付)などによると、同様のデモは、ラッカ県スルーク町、ハマーム・トゥルクマーン村、そしてハサカ県ラアス・アイン市でも行われた。

ザマーン・ワスルによると、デモでは、アサド政権打倒ならぬ、地元評議会打倒が訴えられた。

また、SANAによると、デモ参加者は、トルコ軍とその支援を受けるシリア国民軍による農地への放火、略奪、強制退去など、市民への犯罪行為に対する抗議の声を上げた。

AFP, June 22, 2020、ANHA, June 22, 2020、AP, June 22, 2020、al-Durar al-Shamiya, June 22, 2020、Reuters, June 22, 2020、SANA, June 22, 2020、SOHR, June 22, 2020、UPI, June 22, 2020、Zaman al-Wasl, June 22, 2020などをもとに作成。

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