アサド大統領がRIAノーヴォスチのインタビューに応じる「米国とトルコの駐留は占領。撤退しなければ人民抵抗しかない」(2020年10月8日)

SANA(シリア・アラブ通信)は、ロシアのRIAノーヴォスチがアサド大統領に行ったインタビューの全文(http://www.sana.sy/?p=1232835)と映像の一部(https://www.youtube.com/watch?v=kyPTOMc6umI&feature=emb_title)を公開した。

インタビューの一部はRIAノーヴォスチが10月6日に公開していた。

アサド大統領の主な発言は以下の通り:

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ロシア軍の軍事作戦から5年を経ても戦争は続いている

(2015年9月30日に開始されたロシア軍のシリアでの軍事作戦で戦争は終わったと言えるかとの問いに対して)いいえ、もちろん、そうは言えない。テロリストが我々の国の一分地域を占領し、さまざまな犯罪、暗殺などを犯している限り、戦争は終わらない。彼らを利用している者たちは戦争を長期に持続させようとしていると考えている。

過酷な戦争でのシリア軍とロシア軍の5年にわたる協力を経て、武勇伝は個人の活動ではなく、集団的な行為になったと考えている。

ロシア軍の参戦によるアレッポ市東部解放が大きな転換点

戦争が始まってから10年が経った。だから、その間に転換点は1つではなく、幾つもあったと言うことができる。最初の転換点は2013年だ。このとき我々は、とくにシリア中部で多くの地域をヌスラ戦線(現在のシャーム解放機構から)解放し始めるようになった。次に、2014年に別の方向に向けた転換点があった。このとき、ダーイシュ(イスラーム国)が米国の支援を受けて突如台頭し、シリアとイラクの重要な地域を同時に占領した。また、テロリストたちが別の地域を占領し始めた。なぜなら、ダーイシュはシリア西部解放という任務を実現しようとするシリア軍の注意を逸らしたからだ。もう一つの転換点は、ロシアがシリアに来た2015年だ。我々はロシアがシリアを支援するためにやって来たこの段階で、多くの地域を解放し始めた。この転換点はアレッポ市東部の解放に代表されている。この転換点以降、シリアのそれ以外の地域も解放され始めた…。

トルコのエルドアン大統領がアゼルバイジャンとアルメニアの紛争を煽った主要人物

はっきりさせておこう。(トルコのレジェップ・タイイップ・)エルドアン(大統領)はシリアのテロリストを支援してきた。リビアのテロリストを支援している。アゼルバイジャンとアルメニアの間に位置するナゴルノ・カラバフで今も続く最近の紛争を煽動し、焚きつけた主要人物だ。また、その振る舞いは様々な理由で危険なものだと言いたい。なぜなら、第1に、ムスリム同胞団の振る舞いを反映しているからだ。ムスリム同胞団は過激なテロ組織だ。第2に、シリアでダーイシュとのスキャンダラスな関係を築いて以降、トルコの民衆の視線を国内から逸らすためだけに、さまざまな地域で戦争を煽っているからだ。ダーイシュが、米空軍の庇護を受けて、トルコ経由でシリアの石油を売却していことは皆が知っている。もちろん、トルコは石油売却に関与していた。国際社会、つまり一言で言うと一部列強と富裕国が知っているかどうかはともかく、彼の目的は危険だ…。この国際社会なるもののほとんどが、トルコとともにテロリストの支援に関わっている。トルコがしていることを承知していて、それを喜んでいる。トルコはこうした国々の政策や夢をこの地域で実行する腕なのだ。我々は国際社会に委ねるなどできない。国際法に委ねたいが、それを執行する機関がない。だから、我々は自分自身と友好国に頼らなければならない。

(シリアの反体制武装集団戦闘員がアゼルバイジャンに派遣されているとの報道について)我々は間違いなく確認できる。証拠を持っているからではない。証拠がなくても…、兆候が幾つもある。トルコはさまざまな国からシリアにやって来たテロリストを利用していた。リビアでも同じ方法を使った。リビアでシリア人テロリスト、そしておそらくはそれ以外の国のテロリストを利用したのだ。であれば、トルコがナゴルノ・カラバフで同じ方法を使うことは自明であり、その可能性もきわめて高い…。トルコがシリアなどのテロリストをナゴルノ・カラバフで利用している、そう強く言うことができる。

シリア軍の近代化以外に優先事項はある

我々(自身とヴラジミール・プーチン大統領)は主に電話で定期的に連絡を取り合っている。新たなことは起こるたび、あるいは話し合う必要が生じるたびに。もちろん、今後も話し合いを続けるし、将来会談するだろう。だが、それはシリアにかかわる政治状況次第だ。ご存知の通り、今は新型コロナウイルスで世界が自主隔離をしている。だから、話し合いは今後の会談は電話で続けられる。

我が国の経済状況を踏まえると、債務は非常に重要だが、同時に、債務返済能力がないのに、こうした措置を講じるべきではない…。我々はこの問題についてロシアと協議したが、実施に先だってこうした措置(債務返済能力の確保)を準備しなければならない。

(S-400の新規購入、S-300の追加購入の可能性について)ロシア国防省との協力によって我が軍の近代化を実現することになる…。だが、我々には優先順位があり、ミサイルは必ずしも必要ではない…。土地をめぐる紛争にかかわる別の優先事項がある…。だが、我々は通常、文事的な計画の詳細については話すことはない…。だが、我々はあらゆる軍事的分野において自らの軍を近代化する。

米大統領選挙には何も期待しない

我々は通常、米大統領選挙で(選ばれる)大統領に期待はしない。彼らは行政担当者に過ぎない。なぜなら、「会議」があるからだ。この「会議」は、圧力団体、銀行、武器製造業界、石油業界などの大企業によって構成されている。行政担当者には(政策を)見直す権利も権限もなく、行政を執行することしかできない…。トランプはいかなる時も行政担当者に過ぎない…。政策変更について話すのであれば、「会議」がある。だが、この「会議」も政策を変更はしない。行政担当者は代わるが、「会議」はそのままだ。だから、何も期待はしない…。「会議」は…自分たちのやりたいことを行い、議会などの機関、メディアを牛耳っている。

(トランプ大統領が2017年にアサド大統領の殺害を言及したことについて)暗殺は米国のやり口を代表している。何十年にもわたり、世界のさまざまな地域のあらゆる場所で行っている。新しいことではない。だから、この手の計画がさまざまな理由で常に存在するということを留意すべきだ。そうしたことがシリアの現状において起こると予測しておかねばならない。米国は我が国の土地を占領し、テロリストを支援している…。何の情報もなかったが、当然自明のことだった。それをどう予防できるのか?… 国際社会にバランスを除いて、米国によるこの手の邪悪な行為を阻止するものはない。

(2021年の大統領選挙への出馬の是非について)それについて話すのは時期尚早だ。

西側は、世界に対する覇権主義的な政策を変更しない限りは、世界のあらゆる場所に介入してくるだろう。小さかろうが、大きかろうが問題があれば、介入してくる。それが国内問題であれば、西側は介入したいためだけに、それを国際問題にして、内政干渉してくる。問題がなくても、全力で問題を作り出そうとする…。シリアであれ、ベラルーシであれ、あなたの国(ロシア)であれ、世界のどの国であってもだ…。西側に介入する権利があるのか、ないのか? だから、我々は抵抗しなければならない…。

ロシアから新型コロナウイルス感染症のワクチンを入手する

(ロシアが開発した新型コロナウイルス感染症のワクチンを入手したいかとの問いに対して)もちろんだ…。我々はこの問題についてロシア当局と協議している。世界全体に普及すれば、我々もシリアの市場でワクチンを入手することになる…。ロシアは11月に普及すると言っていた。

我々は現在、ジュネーブでの会談で憲法について議論している。1ヶ月ほど前に(制憲委員会)の(第3)ラウンド交渉を開いた。新型コロナウイルス感染症で延期されたが、交渉は終了していない。だが、ジュネーブでの交渉は政治的ゲームを表したものに過ぎない。シリアの大衆はそのことに注目してないい。シリア国民は憲法のことなど考えていない…。彼らの関心は改革に関連したものだ。我々は彼らのニーズに対応するために改革を実行し、政策を打たねばならない…。

ホワイト・ヘルメットは犯罪者でシリアの法に服さねばならない

(ホワイト・ヘルメットの処罰の是非について)犯罪が発生したとき、それを裁くとして、ナイフや武器を用意することはなく、犯罪者を法廷に差し出すだろう…。ホワイト・ヘルメットは、道具、手段に過ぎない。テロが駆使する武器に過ぎない。英国によって作られ、米国、そしてもちろんフランスや西側諸国によって支援された。トルコによって直接利用された。こうした国がホワイト・ヘルメットの本当の親だ…。こうした行為を追及する国際法があるだろうか? ない…。例えば、米国はイラクで、イエメンで、そしてそれ以外の地域での犯罪から免れてきた。米国だけではなく、フランス、英国などの国もだ。これらの国はシリアでの犯罪から免れてきた。

彼らは犯罪者だ…。ホワイト・ヘルメットになる前はヌスラ戦線だった。シリアの法廷に従わなければならない。だが、ホワイト・ヘルメットは西側によって作られた組織だ。彼らは個人としては犯罪者だが、ホワイト・ヘルメットは西側の組織であり、ヌスラ戦線に準じた過激なテロ組織なのだ。

米国とトルコの駐留が続けば、人民抵抗以外にない

それ(米国とトルコの駐留)は占領だ。現時点において我々は二つのことを行わねばならない。第1は、これらの国が乗じている占領の口実をなくすことだ。それはテロリスト、現状においてはダーイシュだ。世界のほぼすべては、ダーイシュが米国によって作られ、米国の支援を受け、米国から任務を与えられていることを知っている…。シリアでテロリストを根絶することが我々にとって最優先課題だ。そのうえで、米国とトルコが去らないのなら、人民による抵抗が起こらざるを得ないというのが当然の流れだ。それが唯一の手段となる。

(米国とシリア民主軍の石油売買に関する契約について)窃盗だ。こうした盗みを食い止める唯一の方法は、土地の解放である…。シリア政府はシリアのすべての土地を掌握し、事態を正常化すべきだ。

テロリストはトルコか自分たちの国に戻るか、シリアで死ぬしかない

2013年から、我々はテロリストが支配する地域に対処する際に…ある方法を採用してきた。彼らに武装解除の機会を与え、その見返りとして政府が恩赦を与えるというものだ。これは、シリア国内の多くの地域で成功した。だが、彼らが和解に応じなければ、軍事的に攻撃しなければならない…。だが、イドリブ県は異なっている。シリアにいる外国人テロリストのほとんどがこの地域に集まっている。彼らはトルコ…、あるいは自分たちの国に戻るか、シリアで死ぬしかない。

主に欧州に戻るしかない。一部はロシア、アラブ諸国から来た…。

トルコはテロリストを説得して撤退し、シリア軍、政府などの機関が支配を回復するための道を空けねばならなかった。だが、トルコはそうしなかった。毎回約束を破った…。だから、(ロシアとトルコの)協力は有効だなどと言ったことはない。だが、様子を見ることにしよう。トルコにはテロリストに圧力をかけて、イドリブ県内のM4高速道路以北に撤退させるチャンスがもう一度だけある。

イスラエルとの和平は実質不可能

(イスラエルとの和平に関する)我々の姿勢は、1990年代、すなわち約30年前に和平交渉が始まって以来非常に明白だ。この時から、我々は、シリアにとっての和平は権利と関わっていると言ってきた。我々の権利とは我々の土地のことだ。イスラエルとの関係正常化できるのは、我々が自らの土地を取り戻した時だけだ。問題は非常に簡単だ。だから、イスラエルの準備ができれば可能になる…。だが、まったく準備していない。イスラエルの体制のなかに、和平に向けて一歩でも前進する準備ができているという高官は一人も見当たらない。だから、論理的には和平か可能だが、実質的には、今のところ答えは「いいえ」だ。

(イスラエルとの間に)いかなる交渉もまったくない。まったく何もない。

イランはシリア占領とテロ支援の口実

(イランのシリアからの撤退がシリアへの経済制裁解除の条件だとの主張に関して)まず、我が国にイランの部隊は存在しない…。イランはシリアを支援し、軍事顧問を派遣し、我が軍と共に行動し、シリア軍とともにいるだけだ…。イランの問題はシリアの領土の占領とテロリスト支援を続ける口実だ。真の思惑を覆い隠す仮面のように利用しているのだ。

AFP, October 8, 2020、ANHA, October 8, 2020、al-Durar al-Shamiya, October 8, 2020、Reuters, October 8, 2020、SANA, October 8, 2020、SOHR, October 8, 2020などをもとに作成。

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