ロシア軍戦闘機がイドリブ県内のシャーム軍団の基地を爆撃し、戦闘員78人を殺害(2020年10月26日)

イドリブ県の緊張緩和地帯(第1ゾーン)は、ロシア・トルコが3月5日の首脳会談で停戦に合意してから235日目を迎えた。

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イドリブ県では、シリア人権監視団によると、ロシア軍戦闘機複数機が「決戦」作戦司令室の支配下にあるトルコ国境に近いカフルタハーリーム町近郊のドゥワイラ山にあるシャーム軍団の基地を爆撃した。

「決戦」作戦司令室は、シリアのアル=カーイダであるシャーム解放機構とトルコの庇護を受ける国民解放戦線(シリア国民軍)などからなる武装連合体。

爆撃を実施したのは、ラタキア県のフマイミーム航空基地に配備されているロシア軍戦闘機21機。

シャーム軍団は、国民解放戦線を主導するシリア・ムスリム同胞団系の武装集団の一つで、トルコから装甲車の供与を受けるなど、もっとも手厚い支援を受けている。

この爆撃で、基地内にいた戦闘員少なくとも78人が死亡、90人以上が負傷した。

爆撃が行われた時、基地内では戦闘員の教練の修了式が行われていたと思われる。

また、シリア軍も、「決戦」作戦司令室の支配下にあるザーウィヤ山地方のスフーフン村、ファッティーラ村などを砲撃した。

これに対して、「決戦」作戦司令室は、シリア政府の支配下にあるサラーキブ市を砲撃した。

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ハマー県では、シリア人権監視団によると、シリア軍が「決戦」作戦司令室の支配下にあるガーブ平原各所を砲撃した。

これに対して、「決戦」作戦司令室は、シリア政府の支配下にあるガーブ平原のジューリーン村を砲撃した。

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ロシア国防省は声明を出し、過去24時間で「緊張緩和地帯設置にかかる覚書」への違反を39件(イドリブ県17件、ラタキア県16件、アレッポ県4件、ハマー県2件)確認したと発表した。
ロシア国防省は声明を出し、過去24時間で「緊張緩和地帯設置にかかる覚書」への違反を確認しなかったと発表した。

一方、トルコ側の監視チームは、停戦違反を9件確認したと発表した(ただし、ロシア側はこれらの違反を確認していない)。

AFP, October 26, 2020、ANHA, October 26, 2020、al-Durar al-Shamiya, October 26, 2020、Ministry of Defence of the Russian Federation, October 26, 2020、Reuters, October 26, 2020、SANA, October 26, 2020、SOHR, October 26, 2020などをもとに作成。

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