アサド大統領は第1回閣議を主催:「シリアをかつてのように戻すことは許されない。この時代においてあるべき場所へとシリアを導かねばならない」(2021年8月14日)

第3次フサイン・アルヌース内閣の各閣僚は大統領府に参集し、アサド大統領の前で宣誓を行った。

**

就任式に続いて、アサド大統領は第1回閣議を主催し、今次内閣における最優先課題を示した。

閣議におけるアサド大統領の主な発言は以下の通り:

**

任務は多く、責任は大きい。成功は我々が現実の詳細、そしてその影響を、真実のままに捉えることができるかどうかにかかっている。悲観のなかではなく、楽観のなかに身を置かねばならない。

もっとも重要な点は、我々政府が、自分たちの前にある課題が何かを特定することだ。どの課題が基本的で、どの課題が副次的かをだ。我々はしばしば、副次的な課題に囚われ、基本的なものを無視してしまう。我々が現状においてどの課題…を解決できるのか。どの課題が現状の能力の外にあるのか。どの課題が国内の状況と結びついているのかを特定しなければならない。ここでいう国内の状況とは、祖国全般の状況のことだ。同時に、国家機関にとっての活動状況のことだ。そこには、麻痺、脆弱さ、汚職など、活動に悪影響を及ぼす諸々も含まれている。

こうした諸々を体系的に捉えることで、我々はあらゆる状況に個別に対応できるようになり、これらすべてを互いに寄せ集めて、何にも到達できず、その場に留まるというようなことはなくなる。またそれらを正確に捉えることができれば、それを市民に明確に伝えることができるようになる。そうすることで、社会が持つシリアの全体像が明らかになり、我々の対話、批判、さまざまなレベルでの議論は客観的なものになる。そして、そうすることで皆が免疫力を獲得できる。ここで言う皆とは、責任者のことだ。なぜなら、そのなかにプロパガンダの影響を受けている者がいるからだ。物事の詳細が明らかにされた時、皆が外国のプロパガンダに対する免疫力を身につけることになる。そのプロパガンダは基本的には、市民に対して集中的に向けられており、国家を市民の敵、そして市民を国家、さらには祖国の敵に仕立てようとするものだ。

こうした困難で複雑な状況における我々の行動の全般的な方向性、あるいは一般原則は、我々を戦争前の状況に戻るために取り組ませることではない。多くの人々が「アッラーが望めば、元通りになる」と言う。こうした言葉は大衆の間で交わされてはいるが、政府にとっては、シリアをかつてのように戻すことは許されない。この時代においてあるべき場所へとシリアを導かねばならない…。我々は突破できる場所を特定し、これを実行する。それは、政府の改革、国家機関の改革を通じて行われるものであり、我々は戦争のなかでそれを始めた。国家のオートメーション化、デジタル・トランスフォーメーション、電子決済、電子サービスなどだ…。これらを戦争前の状態に戻すことなど期待しない。

これまでの優先課題は治安の回復だった。だが、今日の優先課題は生産、雇用機会に向けられねばならない。治安は生産を始め、立ち上げ、続けるのに必要だった。だが、今日はその逆が正しい。とりわけシリアの領土の大部分がテロリストから解放されたなかで、生産が安定を持続させるうえで必要なのだ…。たかだか数十人によって構成される組織、数百人によって構成される国家機関が、すべての国民に代わって思考することなどできない…。だから、参加するという発想が我々の行動を成功させるうえでの基本だ。民衆のイニシアチブ、組織、人員、有資格者をもってできる限り参加を拡大することは、さらなる発想を生み出すことを意味する。我々の前に多くの発想が示されれば、第1に、責任者の負担や努力は軽減される。そして第2に、より多くの選択肢が用意され、より良い選択肢を選ぶことができる。つまり、失敗率を減らし、成功率を高める。手段行動は個人行動よりも優れ、より生産的で、正しいというのが、人類にとって周知の原則だ。我々が参加について話す時、トランスパレンシーの原則がなければ、市民を参加させることはできない。トランスパレンシーを我々の行動の基本原則としなければならない。市民が参加し、意見を表明し、我々の決定を支援するには、それが何かを知らなければならない…。トランスパレンシーを伴う参加があれば、我々責任者の過ちも減る…。我々はすべてのデータを明確に市民に伝えねばならない。そうすれば、我々が市民に理解を求める必要はなくなり、市民は自ら理解する。

社会は過去40~50年の間に何倍にも大きくなった。加えて、大規模な人口増加が世界の発展に伴い、生活における様々な新たな部門を生み出した…。中央の権力が国、あるいは祖国のすべての問題を中央集権的に運営することは不可能になった。権限を分散させねばならない。そしてここに、地方行政が果たす役割がある。戦争前に改正地方自治法が施行された…。だが、戦争がこの法律の活性化や適用を遅らせ、中央集権から分権制への移行を遅らせた…。今がこのステップを行う好機だと考えている。なぜなら、地方議会は、地方の利益を知り、解決策を提示する能力を高めたからである。それによって、中央の権力、中央の責任者が、枝葉末節に埋没することが防げ、戦略的な思考、監督、計画策定などといった基本的な任務に向かうことができるだろう…。同時に、分権制は豊かな地域と貧しい地域の間、そして農村と都市の間でバランスの取れた成長を実現する…。つまり、我々はこの法律の適用を通じて地方議会に依存できるようになる。テロによって破壊された地域で復興に取り組む現段階において、分権制やバランスの取れた成長について話す時、我々は農村地域を優先させねばならない。戦争中ではなく、戦争前の経験を通じて、我々は常に都市部のサービスなどに力点を置いてきた。それによって、農村から都市への市民の移動が促されてきた。だが、それによって、都市のサービスの価値が失われ、農村のサービスも失われた…。我々が農村を発展させれば…、それがその復興のチャンスとなる…。我々が農村から都市への移動を促すことができれば、農村も都市も利益を得られる。

すでに述べた通り課題は多いが、最優先事項はもちろん生活にかかる課題だ…。すべての国には政策があり、その政策に基づいて自らの活動を行う。政策は様々な部門にかかわる全般的なビジョンであり、政策から諸々の戦略、数年にわたる実施計画が作り出される…。シリアの政策のほとんど、行政府の政策は過去数十年にわたって揺らいでいない…。だが、戦略、仕組みは状況に応じて変化している。例えば、我々には農民支援策、戦略的作物支援策、国営セクター保護策などといった大きな題目があり、それらを見直し、変更する必要があるとは見ていない。だが、こうした政策から生じる行動計画には見直しが必要だ。第1に、そこには多くの欠陥、抜け道がある。我々が計画やプロジェクトを目にしても、そもそも戦略に従ってなかったり、戦略がなかったりすることもしばしばある。だから、混乱、麻痺に直面するし、多くの計画があるにもかかわらず、何も実現していないこともある…。だから、政府が最初に行うべき任務は、各省レベルでの見直し、政策の見直しだと考えている…。

あなた方みな(閣僚)にとっての優先課題は、第1に、投資法だと考えている。数カ月に施行され、この部門に関心がある人々や投資家から非常に良い反響があった。だが、周知の通り、実施要領が出されてない。実施要領とは法律の実施形態を示したもので、つまりは、法律の成否の基礎をなしている。みなが実施要領、そしてそれに続く決定や措置を待っている。それによって、シリアにおける投資の障害を取り除くことができる…。また、別の側面もある…。当時を促進し、刺激するための新たな環境を創出することと並行して、我々が推し進めることができる重要なポイントとして、投資環境にかかる電子サービスの促進がある…。

第2のポイントは、小規模事業だ。投資法施行の数カ月前に、小規模融資法が施行された。これは、小規模事業にかかわる法律だ…。我々は想定される投資の重要な部分を(投資法と小規模融資法で)カバーした。いずれの法律もまだ成果を上げていない…。だが、世界のすべての国において、経済の上昇をもたらすもっとも重要な投資とは、中小規模の事業への投資だ。

最後のポイントは、積極的な介入機関だ。ここの問題については2020年に会合があり、介入機関が活動を開始し…、一定の成果を実現した。つまり、現行法のもとで介入できることが立証された…。介入機関を最大限活性化させることで、独占、価格引き上げに対処することを期待する…。

汚職に関して、我々はその拡大をもたらす道徳の衰退について後半に話すことができるが…、国家は汚職を撲滅するために道徳を改善することを待ってはいない。我々は常に明確な規制、基準、仕組みを作り出さねばならない。これらの基準や仕組みを通じて我々が正しく行動をすることで、汚職の抑止につながるだろう…。

汚職について話す時…、私はいつも異なった例をあげてきたが、今日は簡単にではあるが、特に税について話したい。なぜなら経済改革は基本的に財政改革にかかっているからだ…。つまり、我々が税制にうまく対処し、それを発展させ、関連機関のレベルを改善し、スタッフのパフォーマンスを向上させることに成功した時、我々は基本目標、つまり、税の公正性の実現と脱税撲滅に到達できる…。我々が脱税を撲滅できれば、国家は莫大な資金を得ることができ、市民により良いサービスを提供できる。我々はまた、密売も汚職の一環として見ている…。密売が一方でシリア・ポンドの再現のない下落、他方でシリアの産業、シリアの生産者、さらにはシリア経済全般を疲弊させている…。

我々の前には密売撲滅の道は続いている。この問題を政府の最優先課題としなければならず、関連機関は躊躇なく断固として汚職を打破しなければならない…。

汚職には支援とかかわる別の側面もある…。市民への基本物資の支援が…悪用され、シリアの一部の腐敗した人々が私服を肥やしている…。支援を整備することは、それを廃止することには決して繋がらない…市民の支援はシリアの政策の一部であり、それを変更することはまったく考えていない。だが、我々はそれを整備し、戦略や仕組みを変更することは考えている。整備の本質は第1に、だれが支援を受けるに値し、だれがそうでないかにかかわっている…。これにはトランスパレンシーが必要である。そしてトランスパレンシーとはサービスと措置のオートメーション化がなければ実現し得ない…。

我々が法律について話す時、我々が話すことができるのは、手続きと行政だけであるが、三つのものが、人間の体のように一体をなしている。すべての体には骨格があって、各組織はそれなくしては機能しない。ここでいう骨格とは行政改革を表している。これに対して、法律は、体、頭、心臓…などを維持するための組織のようなものだ。手続きとは栄養やホルモンなどを運ぶ血液のようなものだ。どれか一つを抜きに話すことはできないし、どれか一つを抜きに成果をあげることもできない。だから、健全な行政、健全な手続きを抜きにして法律を語ることに何の価値もない。だからこそ、我々は立法革命を行ったのだ。みなが、15年以上前から立法革命と呼んできたが、その成果は行政が弱く、我々が手続きに関心を示さなかったことで限られたものだった。問題は互いに結びついており、行政改革の基本目標は、公務員の正義なのだ。公務員の正義という場合、不義な公務員がいることを意味しない。我々は公務員にあるべき権利を返さねばならない。正義とは、ふさわしい地位を与えることを意味している…。それは、我々が国家の仕事の仕組みを改善することを意味している…。

代替エネルギーは広く話されるようになったテーマ、新しいテーマである…。国家が人々に代替エネルギーの利用を促しているという考え方がある。我々は誰にも促していないが、我々の現状、とりわけ、電気、燃料の問題が、人々に代替エネルギーの利用を促していると考えている…。現在の緊急の課題は、我々が政策を持ち、このセクターを整備することだ。なぜなら、早急に整備のプロセスに着手しなければ、利害関係者による悪用が生じてしまうからだ…。だが、別の側面もある、それは議論を提起することだ…。そのなかで生じる一連の質問に答えたうえで、財源の利用の是非や融資について話すべきである。なぜなら、我々は検討中だからだ…。政府においては、この部門を今後数年間でどの方向に推し進めるかを特定するための政策が基本的に検討されなければならない。

メディアに関して…、シリア社会に入り込んでいる異質な概念と戦うことに注力されなければならない。なぜなら、我々は、どの国でも例外なく愛国的な諸概念を歪めようとする世界的な攻撃のただなかにあるからだ。その狙いは、人間と祖国の結びつきを断ち、人間を本能や損得感情だけで動かす存在に変えようとすることにある。これはメディアだけでなく、文化、教育、高等教育、宗教問題、国家機関にもかかわる大きな問題だ…。

(メディアにおける)第2のポイントは、メディアには市民と責任者を架橋する役割があるということだ…。メディアは十分な情報がなければ成功しない。そして情報は基本的には省庁にある。つまり、省庁がメディアと協力し合わなければ、メディアは成功しない。また、メディアの成功も失敗は、あなた方(閣僚)がその一部となることにかかっている。メディアの要請に、情報、声明などを通じて答えることを期待している…。我々が活動するだけ、あるいは仕事について説明するだけでは不十分で、人々にとって具体的なものを示せない。現実が説明と組み合わさることで具体的なものになる。この点を重視することを期待している。訪問、活動、面談のニュースに市民は関心を示していない。誰も、我々が誰と会って、誰と会わなかったかには関心がない。関心があるのは、決定と成果だ…。

最後に、我々は過ちを恐れずに常に率先して行動しなければならない。だが、我々は過ちを繰り返すことを恐れねばならない。過ちから学ばないことを恐れねばならない。進歩できないことを恐れねばならない…。

**

SANA(8月14日付)が伝えた。

AFP, August 14, 2021、ANHA, August 14, 2021、al-Durar al-Shamiya, August 14, 2021、Reuters, August 14, 2021、SANA, August 14, 2021、SOHR, August 14, 2021などをもとに作成。

(C)青山弘之 All rights reserved.