イスラエル軍はスワイダー県に進行したシャルア移行期政権国防省の部隊を爆撃:ドゥルーズ派の保護を主張(2025年7月14日)

ダルアー県では、シリア人権監視団によると、イスラエル軍戦闘機が県上空に飛来した。

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SANAによると、イスラエル軍の航空機が、スワイダー県のマズラア町一帯に対して2回、カナーキル村一帯に対して1回の爆撃を実施し、物的被害が発生した。

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シリア人権監視団によると、イスラエル軍の爆撃は、アフマド・シャルア移行期政権のシリア国防省に所属する部隊の集結地や軍用車輌を狙ったもの。

ANHAによると、この爆撃と前後して、マズラア町、カナーキル村、タッル・ハディード村に展開していたアフマド・シャルア移行期政権傘下の武装グループが撤退した。

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イスラエル軍のアヴィハイ・アドライ報道官は、Xを通じて、以下の通り発表した。

速報:イスラエル軍は先ほど、シリア南部スワイダー県のサミーア村一帯で複数の戦車を攻撃した。続報あり。

アドライ報道官はまた、Xを通じて、以下の通り発表した。

速報:本日早く、サジーン村とサミーア村間の地域で複数の戦車が確認され、それらがスワイダー市方面に向けて移動していた。
イスラエル国防軍は、それらの戦車の到達を阻止するため攻撃を実施した。

●このような兵器がシリア南部に存在することは、イスラエル国家に対する脅威となり得る。
●イスラエル軍は、シリア南部における軍事的脅威の存在を決して許容せず、それに対抗して行動を取る。また、同地域の情勢を今後も注視し続ける。

一方、タイム・オブ・イスラエルによると、イスラエル・カッツ国防大臣は、この爆撃について「シリアの体制へのメッセージであり明確な警告だ、我々はシリアのドゥルーズ派に危害を加えることを許さない」と述べた。

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ハダス・チャンネル(アラビーヤ・チャンネル)は、イスラエルの治安当局者の話として、同国がダルアー県およびスワイダー県に地上侵攻するつもりはなく、ドゥルーズ派を守るため、ダマスカス(アフマド・シャルア移行期政権)と連携して措置を調整していると伝えた。

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シリア人権監視団は、イスラエルがアフマド・シャルア移行期政権に対して、国防省の部隊が掌握したシリア南部の地域から、14日12時までに完全に撤退するよう求めたと発表した。

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シリア人権監視団によると、2025年に入って以降、イスラエル軍はシリア領内を62回にわたって攻撃している。

うち52回が爆撃、10回が地上攻撃で、これにより弾薬庫、司令部、拠点、車輌などおよそ92ヵ所の標的が破壊または損傷を受けた。

また、攻撃による死傷者は以下の通り。
●シリア軍事作戦総司令部(「攻撃抑止」軍事作戦局および国防省所属の兵士:9人死亡、21人負傷
●身元不明者:3人死亡(うち2人はレバノン国籍)
●民間人:15人死亡、3人負傷
●武装した民間人:9人死亡

県別の爆撃の回数と死者は以下の通り:
●アレッポ県:7回
●ダマスカス県およびダマスカス郊外県:17回(民間人2人、身元不明3人(うちレバノン人2人、兵士2人死亡)
●スワイダー県:4回
●ヒムス県:8回(うち2回はシリア・レバノン国境の非公式の通行所)
●クナイトラ県:6回(民間人1人、シリア軍事作戦指令部の兵士2人死亡、1人負傷)
●ダルアー県:8回(民間人4人、シリア軍事作戦指令部の兵士1人死亡、その他負傷者)
●タルトゥース県:2回
●ラタキア県:4回(民間人1人死亡、3人負傷)
●ハマー県:2回(シリア軍事作戦指令部所属4人死亡)

県別の地上攻撃の回数と死傷者は以下の通り:
●ダルアー県:5回(武装した民間人16人死亡、2人負傷)
●ダマスカス郊外県:1回
●クナイトラ県:4回

なお、アサド政権が崩壊した2024年12月8日から同年末までの間に、イスラエル軍はシリア国内の軍事拠点に対して約500回の爆撃を実施しており、旧シリア軍の主力兵器は事実上壊滅した。

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