アレッポ県バーブ市近郊でシャーム戦線とシャーム自由人イスラーム運動が交戦するなか、シャーム解放機構はシャーム自由人イスラーム運動を支援するかたちでアフリーン市近郊に進軍、ハサカ県ラアス・アイン市でも東部自由人運動がハムザ師団などと交戦(2022年6月18日)

アレッポ県では、ANHA(6月18日付)によると、トルコ占領下のバーブ市で、シリア国民軍に所属するシャーム戦線とシャーム自由人イスラーム運動のメンバーどうしが、戦車や57mm砲などで撃ち合い、激しく交戦した。

これを受けて、イスラーム軍がイドリブ県方面から重火器を装備した増援部隊を派遣し、シャーム戦線を支援、戦闘は周辺のカアル・カルビーン、ワーシュ村、ドゥワイル・ハワー村、アシュドゥード村、バルアーン村、バールーザ村、アルバ村、タッル・バッタール村にも拡大した。

シャーム戦線はまた、アフリーン市一帯地域から増援部隊を派遣した。

対するシャーム自由人イスラーム運動はバーブ市とラーイー村を結ぶ街道を封鎖し、対抗した。

この戦闘で、5人が死亡、4人が負傷した。

なお、SANA(6月18日付)によると、交戦したのはシリア国民軍に所属する第32師団とシャーム自由人イスラーム運動のメンバーどうし。

一方、シーラーワー町一帯のトルコ占領地(「オリーブの枝」地域)と反体制派の「解放区」が接する境界地帯で、シャーム解放機構とシリア国民軍のメンバーどうしが激しく交戦し、シャーム解放機構がバースーファーン村、バイーヤ村、ガザーウィーヤ村の通行所を制圧した。

シリア人権監視団によると、交戦したのは、シャーム解放機構、シャーム自由人イスラーム運動と、シャーム戦線、シャーム軍団。

ガザーウィヤ村、ハダス・キャンプ、アウラーン村、ナフダ地区キャンプ、ラワービー・キャンプ、スースィヤーン村、バラーサ村、アブラ村、タッル・バッタール村の9ヵ所で激しく交戦した。

シャーム解放機構とシャーム解放自由人イスラーム運動の双方が、シャーム軍団の支配下にある境界地帯に増援部隊を派遣したのを受けて、シャーム軍団はガザーウィーヤ村の通行所などから撤退、同市はシャーム解放機構によって掌握されたという。

戦闘発生を受けて、シリア国民軍は「解放区」との境界に位置するガザーウィヤ村とダイル・バッルート村に設置されている2ヵ所の通行所を閉鎖した。

この戦闘で、民間人3人、シリア国民軍側の戦闘員4人が死亡、子供や老人を含む9人が負傷したという。

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オリエント・ニュース(6月21日付)によると、戦闘は、シリア国民軍第3軍団(シャーム戦線が主導)に所属していた第32師団が軍団からの離反を宣言したことを受けて発生した。

第32師団は、アレッポ県農村地帯のシャーム自由人イスラーム運動のメンバーが結成した組織で、シリア北西部でのシャーム解放機構との闘争に敗れた2017年にシャーム戦線の傘下に入っていたが、最近になってシリア国民軍第3軍団、そしてシャーム戦線から分離することを求めていた。

シャーム戦線と第32師団はこれまでにも一度、バーブ市で衝突していた。

この時はシリア革命反体制勢力国民連立傘下の暫定内閣国防省が「国民和解委員会」を設置し、対立解消を試みたが、第32師団は「国民和解委員会」の一連の決定を拒否していた。

また、シャーム自由人イスラーム運動「総司令部」を名乗る勢力(ハサン・スーファーン前総司令官)も「国民和解委員会」の決定がシャーム戦線寄りだとして批判していた。

複数筋によると、シャーム自由人イスラーム運動総司令部は、シャーム解放機構とつながりがあり、同機構がトルコ占領地に進出するための口実を見つけようと、批判を続けていたという。

なお、シャーム自由人イスラーム運動の指導部は現在ジャービル・アリー・バーシャー氏が総司令官を務めている。

 

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ラッカ県では、シリア人権監視団によると、トルコ占領下の「平和の泉」地域のラアス・アイン市近郊のタッル・ズィヤーブ村でシリア国民軍に所属する東部自由人運動が、ハムザ師団、第20師団と、重火器などを撃ち合い激しく交戦、ハムザ師団側が東部自由人運動の拠点複数カ所を制圧した。

この戦闘で、戦闘員2人が死亡、3人が負傷、住民が避難を強いられた。

AFP, June 18, 2022、ANHA, June 18, 20222、al-Durar al-Shamiya, June 18, 2022、Orient News, June 21, 2022、Reuters, June 18, 2022、SANA, June 18, 2022、SOHR, June 18, 2022などをもとに作成。

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