化学兵器禁止機関・国連合同派遣団がハマー県で一時拉致(2014年5月28日)

化学兵器禁止機関は、27日にハマー市郊外で化学兵器禁止機関・国連合同派遣団のスタッフら11人が拉致された事件に関して声明を出した。

そのなかで化学兵器禁止機関は、政府支配地域を出た直後に、4台からなる車列の先頭を走っていた車が爆弾によって大破し、乗っていたスタッフを救出後に、市街地に避難したが、そこで至近距離から発砲を受け、2台の車が武装集団によって拉致されたことを明らかにした。

またその後、カフルズィーター市での塩素ガス使用疑惑の調査のために政府と停戦合意を行った反体制勢力の仲介により、拘束されていたスタッフらは釈放されたとし、調査チームを襲撃、拉致したのが反体制武装集団であることを示唆した。

OPCW, May 28, 2014をもとに作成。

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諸外国の動き(2014年5月28日)

バラク・オバマ米大統領は、ニューヨーク州ウエストポイントにある陸軍士官学校の卒業式に出席し、南シナ海への中国の進出、ウクライナ情勢などに関する包括的な外交演説を行った。

この演説のなかで、オバマ大統領はシリア情勢にも触れ、「恐ろしい苦しみをすぐになくすことができるような簡単な答え、軍事的解決はない。大統領として、私はこの宗派戦争のただなかに米兵を派遣すべきでないと決断し、それが正しい決断だと信じている」と述べた。

そのうえで、オバマ大統領は「このことは、自国民を空爆し、飢えさせている独裁者に反抗するシリア国民を助けるべきでないということではない。自分の将来を選ぶというすべてのシリア人の権利のために戦っている人々を助けることで、我々はまた混乱のなかで安住の地を乱している多数の過激派に対抗している」と強調した。

さらにオバマ大統領は「我々は、シリアの隣国であるヨルダン、レバノン、トルコ、イラクが避難民に対処し、シリア国境を越えて活動するテロリストに対抗するよう支援する。私は議会に対し、テロリストや野蛮な独裁者への最善のオルターナティブとなるシリアの反体制派への支援を増加させるべく活動するだろう」と付言、そのために西欧やアラブ世界の同盟国との連携を続けると述べた。

AFP, May 28, 2014、AP, May 28, 2014、ARA News, May 28, 2014、Champress, May 28, 2014、al-Hayat, May 29, 2014、Kull-na Shuraka’, May 28, 2014、al-Mada Press, May 28, 2014、Naharnet, May 28, 2014、NNA, May 28, 2014、Reuters, May 28, 2014、SANA, May 28, 2014、UPI, May 28, 2014などをもとに作成。

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イラクの動き(2014年5月28日)

ヌーリー・マーリキー首相は毎週定例の声明のなかで、アンバール県の全住民に、イラク・シャーム・イスラーム国(ダーイシュ)およびアル=カーイダを殲滅するよう呼びかけた。

マダー・プレス(5月28日付)が伝えた。

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マダー・プレス(5月28日付)は、ジャズィーラ砂漠作戦司令室筋の話として、軍・治安部隊合同部隊がアンバール県ラマーディー市西部の対シリア国境地帯で、シリア領内から潜入しようとしたイラク・シャーム・イスラーム国(ダーイシュ)と交戦し、7人を殺害、5人を逮捕したと報じた。

またファッルージャ市南部のヌアイミーヤ地方で、軍ヘリコプターの砲撃により、ダーイシュ戦闘員4人が死亡した。

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マダー・プレス(5月28日付)は、ニネベ県作戦司令室筋の話として、モスル市東部のアルバジーヤ地方で、治安部隊がイラク・シャーム・イスラーム国(ダーイシュ)戦闘員3人を射殺した、と報じた。

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マダー・プレス(5月28日付)は、内務省筋の話として、ベイルート県南部のユースフィーヤ地区で、軍がイラク・シャーム・イスラーム国(ダーイシュ)の攻撃を受け、兵士3人が死亡、5人が負傷したと報じた。

AFP, May 28, 2014、AP, May 28, 2014、ARA News, May 28, 2014、Champress, May 28, 2014、al-Hayat, May 29, 2014、Kull-na Shuraka’, May 28, 2014、al-Mada Press, May 28, 2014、Naharnet, May 28, 2014、NNA, May 28, 2014、Reuters, May 28, 2014、SANA, May 28, 2014、UPI, May 28, 2014などをもとに作成。

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レバノンの動き(2014年5月28日)

ジャディード・テレビ(5月28日付)は、イスラエル軍兵士25人からなる部隊が、占領下のガジャル村(ナバティーヤ県マルジャアユーン郡)のゲートを越え、レバノン領内に一時侵入したと報じた。

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NNA(5月28日付)によると、ベカーア県バアルベック郡アルサール村郊外のワーディー・フマイイドにシリア軍戦闘機が侵入し、空爆を行った。

AFP, May 28, 2014、AP, May 28, 2014、ARA News, May 28, 2014、Champress, May 28, 2014、al-Hayat, May 29, 2014、Kull-na Shuraka’, May 28, 2014、al-Jadid TV, May 28, 2014、al-Mada Press, May 28, 2014、Naharnet, May 28, 2014、NNA, May 28, 2014、Reuters, May 28, 2014、SANA, May 28, 2014、UPI, May 28, 2014などをもとに作成。

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シリア国内の暴力(2014年5月28日)

ラッカ県では、クッルナー・シュラカー(5月28日付)によると、ラッカ市サクナ地区のラーズールド・ホテル前にあるイラク・シャーム・イスラーム国(ダーイシュ)の本部の一つに対して、民主統一党人民防衛隊の「フィダーイーイーン部隊」が爆弾を積んだ自動車で自爆攻撃を行った。

この自爆攻撃で、ホテルと周辺の民家が損壊し、ダーイシュのメンバーと住民数十人が死傷した。

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アレッポ県では、シリア人権監視団によると、アレッポ市マガーイル地区、マイサル地区を軍が空爆し、子供9人を含む22人が死亡した。

シリア人権監視団によると、27日晩にも、軍はアレッポ市カッターナ地区、ブスターン・カスル地区、バーブ街道地区、バニー・ザイド地区、ムギール地区、ライラムーン地区を軍が「樽爆弾」などで攻撃し、44人が死亡したという。

一方、SANA(5月28日付)によると、フライターン市、タッル・スースィーン村、タッル・リフアト市、ハンダラート・キャンプ、タッル・ジャニーン村、シャイフ・ナッジャール市工業団地地区、アターリブ市、カフルハムラ村東部、クワイリス村、ラスム・アッブード村、アナダーン市、自由貿易区、カフルダーイル村、ハーン・アサル村、アレッポ市旧市街、バニー・ザイド地区、ラーシディーン地区、ライラムーン地区、アーミリーヤ地区、バーブ・ハディード地区、ブスターン・カスル地区、カースティールー地区、ジャンドゥール地区、ハナーヌー地区、ジュダイダ地区で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ダマスカス郊外県では、SANA(5月28日付)によると、カースィミーヤ市郊外、ドゥーマー市郊外、ザバダーニー市で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備、地下トンネルを破壊した。

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ダマスカス県では、SANA(5月28日付)によると、ジャウバル区で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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イドリブ県では、SANA(5月28日付)によると、マアッル・ハッタート村、アルバイーン山周辺、マアッル・バアリート村、マンタフ村、カフルラーター村で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ダルアー県では、SANA(5月28日付)によると、フラーク市郊外、シャラーイア町西部、ウンム・ハウラーン村北部、アトマーン村、ダルアー市ビラール・ハバシー・モスク一帯、ガラズ刑務所周辺などで、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ヒムス県では、SANA(5月28日付)によると、ワーディー・ミーラ、ワーディー・フィーハ、タッル・ナッサール一帯、ハッターブ村、ウンク・ハワー村、キースィーン港、ハーリディーヤ村、マンシャラ村、ドゥワイル村、ダール・カビーラ村、ガースィビーヤト・ナイーム村、タッルドゥー市、カフルラーハー市で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

またダイル・バアルバ村、カフルアブド村、ダイル・マアッラ村、ハラーリーヤ村、ダール・カビーラ村で、投降していた反体制武装集団266人が釈放された。

AFP, May 28, 2014、AP, May 28, 2014、ARA News, May 28, 2014、Champress, May 28, 2014、al-Hayat, May 29, 2014、Kull-na Shuraka’, May 28, 2014、al-Mada Press, May 28, 2014、Naharnet, May 28, 2014、NNA, May 28, 2014、Reuters, May 28, 2014、SANA, May 28, 2014、UPI, May 28, 2014などをもとに作成。

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シリア政府の動き(2014年5月28日)

クッルナー・シュラカー(5月28日付)は、複数の活動家などの話として、シリア政府が近くハサカ県の部族の青年からなる新たな民兵(義勇軍)「アラブ人民防衛隊」の結成準備を進めていると報じた。

Kull-na Shuraka', May 28, 2014
Kull-na Shuraka’, May 28, 2014

同報道によると、「アラブ人民防衛隊」は、ハサカ県でアサド大統領の選挙キャンペーン(いわゆる「祖国のテント」)を統括する「シャッビーハ」のファーイズ・ナーミス氏が結成に向けた準備を進めているという。

また、「アラブ人民防衛隊」が結成されれば、民主統一党の人民防衛隊との緊張が高まることは必至だとする一方、ナーミス氏がスンナ派であるにもかかわらず、シリア東部でのシーア派の布教に深く関与していると付言した。

AFP, May 28, 2014、AP, May 28, 2014、ARA News, May 28, 2014、Champress, May 28, 2014、al-Hayat, May 29, 2014、Kull-na Shuraka’, May 28, 2014、al-Mada Press, May 28, 2014、Naharnet, May 28, 2014、NNA, May 28, 2014、Reuters, May 28, 2014、SANA, May 28, 2014、UPI, May 28, 2014などをもとに作成。

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大統領選挙をめぐる動き(2014年5月28日)

SANA(5月28日付)などによると、シリア大統領選挙在外投票が在外公館で実施された。

これに関して、『ワタン』(5月28日付)は、外務在外居住者省筋の話として、在外投票に先だって、38の在外公館に約20万人の在留シリア人が選挙登録を行った、と報じた。

SANAなどによると、在外投票が実施された主な国は以下の通り:

アラブ諸国:ヨルダン、イラク、レバノン、スーダン、モーリタニア、オマーン、イエメン、アルジェリア。

そのほかの中東諸国:イラン、アルメニア、キプロス。

西中北欧諸国:スペイン、オーストリア、スウェーデン、チェコ。

東欧諸国:ロシア、ポーランド、ウクライナ、セルビア、ベラルーシ、ルーマニア。

中南米諸国:ヴェネズエラ、ブラジル、アルゼンチン、キューバ。

アフリカ諸国:南アフリカ、ナイジェリア、セネガル。

アジア諸国:日本、中国、北朝鮮、マレーシア、インド、パキスタン。

しかし、「シリアの友連絡グループ」に参加する11カ国を含むアラブ連盟加盟国12カ国、米、英、仏などの欧米諸国では在外投票は禁止された。

SANA, May 28, 2014
SANA, May 28, 2014
SANA, May 28, 2014
SANA, May 28, 2014
SANA, May 28, 2014
SANA, May 28, 2014
SANA, May 28, 2014
SANA, May 28, 2014
SANA, May 28, 2014
SANA, May 28, 2014
SANA, May 28, 2014
SANA, May 28, 2014
SANA, May 28, 2014
SANA, May 28, 2014
SANA, May 28, 2014
SANA, May 28, 2014
SANA, May 28, 2014
SANA, May 28, 2014

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SANA(5月28日付)によると、在外投票が実施された在外公館のうち、ベイルートのシリア大使館では、予定されていた投票時間(5月28日午前7時~午後5時)を過ぎても、在留シリア人による投票が終わらなかったため、外務在外居住者省は投票時間を午後10時まで延長、また29日も在外投票も行うことを決定した。

またSANAなどシリアの主要なメディアは、ベイルートのシリア大使館に投票に向かう在留シリア人の車が渋滞する様子を報じた。

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AFP(5月28日付)によると、ヨルダンの首都アンマン(アブドゥーン地区)にあるシリア大使館で、大統領選挙在外投票が行われ、治安当局が厳戒態勢を敷くなか、大使館前には数百人の在留シリア人が列を作り、投票の順番を待った。

しかし、SANA(5月28日付)は「数万人の在留シリア人」が在外投票を済ませたと報じた。

またAFP、SANなどによると、投票を行った在留シリア人は、シリア国旗やアサド大統領の掲げ、選挙実施への支持を表明した。

これに対し、大使館から200メートル弱の場所で、反体制活動家数十人が集まり、「血の選挙に反対」、「と殺人再選に反対」といったプラカードを掲げて選挙に抗議した。

なおヨルダンには、60万人以上がUNHCRに難民登録を行っているが、ヨルダン当局によると避難民を含む在留シリア人は約700万人に達するという。

国連によると、周辺諸国などで避難生活を送るシリア人の数は2014年4月の段階で280万人以上おり、うち100万人以上がレバノン、77万人がトルコ、60万人がヨルダン、22万人がイラク、13万7,000人がエジプトで避難生活を送っている。

また国内で避難生活を余儀なくされているシリア人は650万人に達している。

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イラクの首都バグダードでは、SANA(5月28日付)によると、予定されていた投票時間(5月28日午前7時~午後5時)を過ぎても、在留シリア人による投票が終わらず、投票時間が深夜まで延長された。

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日本では、東京都港区赤坂にあるシリア大使館に「日本の南北から多数」の在留シリア人が訪れ、で在外投票が行われた。

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なおSANA(5月28日付)によると在外投票が行われた各国(ロシア、ヨルダン、レバノンなど)では、投票に訪れた在留シリア人が選挙実施を支持する示威行動を行った。

また、大統領選挙在外投票が実施されなかった米国(ウィスコンシン州)、エジプト(カイロのシリア大使館前)、スイス、フランス、ドイツ、ベルギーでは、在留シリア人が、大統領選挙実施を禁じた当局に抗議するためのデモ集会を開き、参加者が用意した投票箱に投票用紙を入れ、抗議の意を示した。

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最高憲法裁判所のマージド・フドラ報道官はAFP(5月28日付)に対し「(6月3日に投票が行われる大統領)選挙は、ラッカ市以外のすべての都市で実施される」と述べた。

これに関して『ハヤート』(5月29日付)は、「すべての都市」という言葉に、ダマスカス郊外県、シリア北部よび東部、さらにはアレッポ市やダイル・ザウル市の反体制勢力制圧地区での選挙は想定されていない、としたうえで、約600万人が居住するシリア領内の40%の地域で選挙が行われるに過ぎないとの見方を示した。

なお、シリアの総人口(2013年)は約2,300万人。

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SANA, May 28, 2014
SANA, May 28, 2014

SANA(5月28日付)によると、アレッポ市(アレッポ大学)で、大統領選挙実施と軍による「テロとの戦い」を支持する集会が開かれ、バアス党支部幹部、学生、人民諸組織、職業諸組合メンバーらが参加し、アサド大統領への支持を訴えた。

集会には、バアス党シリア地域指導部のヒラール・ヒラール副書記長が出席した。

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クッルナー・シュラカー(5月28日付)は、ラタキア県ジャブラ市で、6月3日に行われる大統領選挙への投票をボイコットするよう呼びかけるビラが配布されたと報じた。

Kull-na Shuraka', May 28, 2014
Kull-na Shuraka’, May 28, 2014

AFP, May 28, 2014、AP, May 28, 2014、ARA News, May 28, 2014、Champress, May 28, 2014、al-Hayat, May 29, 2014、Kull-na Shuraka’, May 28, 2014、al-Mada Press, May 28, 2014、Naharnet, May 28, 2014、NNA, May 28, 2014、Reuters, May 28, 2014、SANA, May 28, 2014、UPI, May 28, 2014などをもとに作成。

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