米下院の金融サービス委員会はシーザー法の廃止ではなく、修正を目的とする法案を可決(2025年7月23日)

イナブ・バラディーによると、

米下院の金融サービス委員会は7月22日(シリア時間23日)、シーザー・シリア市民保護法(シーザー法)の修正を目的とする法案(H.R. 4427)を可決した。

同法案には、制裁法の延長が盛り込まれており、賛成31票、反対23票で通過した。

反対票を投じた議員らは、法律の全面撤廃を求めた。

法案の条文の内容は以下の通り。

第1条:略称
本法律は「2025年シリア制裁説明責任法(Syrian Sanctions Accountability Act of 2025)」と名づけられる。
第2条:シリア商業銀行に対する特別免除の見直し
本法律の公布日から360日以内に、金融犯罪取締ネットワーク(FinCEN)の長官は、下院金融サービス委員会および上院の銀行・住宅・都市問題委員会に対し、以下の内容を含む報告を行わなければならない:
1. 2025年5月23日にシリア商業銀行に付与された特別免除の影響評価。これには、その免除が米国の国家安全保障や外交政策の目的にかなっていたかどうかの評価が含まれる。
2. 特別免除の継続または修正、あるいは同銀行に関する結論の変更が妥当かどうかに関する勧告。
第3条:国際通貨基金および世界銀行における措置
(a)一般規定:
財務長官は、国際通貨基金(IMF)および国際復興開発銀行(世界銀行)の米国代表理事に対し、以下の事項を支援するよう、その発言権と投票権を行使するよう指示するものとする:
1. シリアにおける健全なデータ報告および定期的な経済監視体制の回復。
2. シリア政府への技術支援の提供。これは、金融通信の改善、マネーロンダリング防止、兵器拡散防止、腐敗対策の強化に資するものであり、国際基準に準拠することが求められる。
3. シリアにおける経済成長の優先課題に取り組むための戦略。
(b)議会への報告義務:
この法律の公布から180日以内、そしてその1年後に、財務長官は上下両院の金融サービス委員会および外交委員会に対し、前述の活動に関する報告を行う義務がある。
(c)失効規定:
本条の規定は、この法律の公布から2年後に失効する。

第4条:米国輸出入銀行によるシリアへの制限の見直し
この法律の公布から180日以内に、米国輸出入銀行総裁は次の措置を取らなければならない:
1. シリアに対する既存の制限措置が引き続き妥当かどうかの判断を行う。
2. この判断に関する報告を、下院金融サービス委員会および上院銀行・住宅・都市問題委員会に提出する。
第5条:シリア政府に対する制裁の修正
2019年に制定されたシーザー法は、以下の通り修正される:
(1) 第7431条(a) の修正:
〇「180日以内で再延長可能な期間」という文言を削除する。
〇以下の項目(1)~(4)が要件として適用される:
1. シリアの領空が、もはや焼夷弾(ナパーム弾など)、樽爆弾、化学兵器、従来兵器(航空ミサイルや爆弾を含む)を用いて民間人を標的とするために政府によって使用されていないこと。
2. シリア政府の支配地域が、国際支援から遮断されることなく、安定的に人道支援を受けており、移動の自由や医療へのアクセスが保障されていること。
3. シリア政府がすべての政治犯を強制拘束から解放し、国際的な人権団体が拘禁施設を完全に調査できるようにしていること。
4. 政府軍が、医療施設、学校、住宅地、市場などの集会所を意図的に攻撃していないこと(国際基準への違反がないこと)。
〇上記に加え、以下の2項目が新たに追加される:
・シリア政府が、違法薬物カプタゴンの製造および国際的拡散への対策において、検証可能な措置を講じていること。
・シリア政府が、宗教的少数派を違法に標的にしたり、司法手続きを経ずに拘束したりしていないこと。
(2) 第7432条の修正:
〇「再延長可能な期間の指定」に関する文言を削除。
〇「免除が継続している間、180日ごとに報告書を提出する義務」に関する規定を削除。
(3) 第7438条:失効日について
この条項では、シーザー法修正の有効期限が以下のいずれか早い方によって終了することが定められている:
1. 米大統領が、第7431条(a)の条件1〜8が、連続2年間にわたりシリア政府によって満たされたことを示す報告書を議会に提出した日から30日後。
2. あるいは、2029年12月31日。

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