シリア人権監視団によると、スワイダー県のイラー村近郊のキリスト教墓地を占拠するベドウィン・部族系武装勢力が2日深夜から3日未明にかけて同村を砲撃した。
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これに対して、内務省は、フェイスブックを通じて、スワイダー県の反乱武装集団が、複数の方面で治安部隊に対して奇襲攻撃を仕掛け、複数の村をロケット弾や迫撃砲で砲撃し、これにより治安部隊の要員に死傷者が出ていると発表した。
また、SANAによると、スワイダー県のタッル・ハディード村、リーマト・ハーズィム村、ウルガー村で、「ヒクマト・ヒジュリーの民兵」が停戦合意を破り、アフマド・シャルア暫定政権の治安拠点に対して組織的な攻撃を仕掛け、同地一帯に侵攻、一時制圧したのに対して、内務省の治安部隊が応戦し、これを撃退、侵攻地域すべてを奪還した。

「ヒクマト・ヒジュリーの民兵」は早朝、治安部隊に対して複数方面で奇襲攻撃を仕掛け、複数の村落をロケット弾や迫撃砲で攻撃、治安部隊の隊員に死傷者が出たが、治安部隊は、当該地域を確保し、戦闘を停止させたことで、停戦が維持されたという。
シリア人権監視団によると、この攻撃で、シャルア暫定政権側の兵士5人とドゥルーズ系武装勢力のメンバー1人が死亡した。
また、シャルア移行期政権の部隊は支援部隊とともに、スワイダー市西部に位置するサアラ村一帯に増援部隊を展開させ、同村の住宅地に対して無差別発砲を行う方、スワイダー市の西部郊外に向けて重機関銃と迫撃砲による攻撃を加えた。
これに対して、ドゥルーズ系武装勢力は、タッル・ハディード村東部やスワイダー市の西部郊外でシャルア移行期政権の部隊の進軍を阻止することに成功した。
また、シャルア暫定政権の内務省総合治安局の部隊が、ダマスカス郊外県のカナーキル村方面からスワイダー県のラサース村に対して砲撃を行った。
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シリア人権監視団は、7月13日以降の戦闘、処刑、イスラエルによる爆撃による死者数の総計が、8月3日の時点で1,496人に達していると発表した。
内訳は以下の通り。
・スワイダー県住民:708名(うち民間人164名、子ども21名、女性56名を含む)
・国防省、内務省総合治安局の要員:474名(うちベドウィン部族出身者40名、レバノン人武装者1名を含む)
・国防省・内務省の要員:15名(イスラエルの爆撃による死亡)
・防衛省庁舎へのイスラエル爆撃で死亡:3名(うち女性1名、身元不明者2名)
・ジャーナリスト:2名(スワイダー県での戦闘中に死亡)
・国防省・内務省の要員による処刑で死亡:291名(女性17名、子ども10名、高齢男性1名を含む)
・ドゥルーズ派武装勢力による処刑:ベドウィン部族出身の民間人3名(女性1名、子ども1名を含む)
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ANHAによると、ドゥルーズ派の最高宗教指導者であるヒクマト・ヒジュリー師は、スワイダー県の住民およびその防衛部隊に対して声明を発表し、命の安全と尊厳を守ることを目的とした複数の指示を出した。
具体的な指示内容は以下の通り。
・あらかじめ定められた従来の防衛拠点への組織的撤退を徹底すること。
・あらゆる手段を用いて防御施設を強化し、あらゆる潜在的な侵入に備えること。
・共同作戦司令部との直接の調整なしに、個別に行動することを禁ずること。
・自制心を保ち、挑発に乗らないよう努めること。
・新たな指示が出るまでは、住民は自宅に留まること。
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アレッポ県では、ANHAによると、北・東シリア地域民主自治局の支配下にあるアレッポ市のシャイフ・マクスード地区とアシュラフィーヤ地区で、女性らがデモを行い、スワイダー県の女性との連帯を表明、アフマド・シャルア暫定政権による侵害行為を非難した。

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