国連はシャルア移行期政権に民族や宗教を問わず全てのシリア人を保護するよう求める安保理議長声明を採択(2025年8月10日)

UNニュースによると、国連安保理は議長声明を採択し、7月中旬以降シリア・スワイダー地域で激化した暴力に深い懸念を示し、民間人への攻撃を非難するとともに、緊急の保護措置と人道的アクセスの確保を求めた。

議長声明では、スワイダー県での戦闘について深い懸念を表明し、そのなかに大量殺害が含まれていると指摘、民間人に対する暴力を強く非難し、「全当事者が停戦合意を順守し、民間人保護を確実にするよう求めた。

また、生命は、すての当事者に対し、人権法および国際人道法上の義務、とりわけ全ての医療・人道要員を尊重し、保護する義務に基づき、スワイダー県およびシリア全土の被災地への完全かつ安全、迅速で妨げのない人道アクセスを、人道・中立・公平・独立の原則に沿って認めるよう要請、降伏者、負傷者、拘束者、武装解除者を含む全ての戦闘員に対し、人道的な扱いを確保する必要性を強調した。

一方、アフマド・シャルア移行期政権に対しては、民族や宗教を問わず全てのシリア人を保護するよう求め、全てのシリア人に真の安全と保護がなければ、意味ある復興はあり得ないと警告した。

そのうえで、移行期政権による暴力の非難と、加害者を捜査するという約束を歓迎しつつ、信頼でき、迅速、透明、公正かつ包括的な国際基準に沿った捜査を確保するよう促した。

さらに、国連安保理決議第2254号の内容などを再確認し、シリアの主権、独立、統一、領土保全への強い意志を改めて表明、全ての国に対しさらなる不安定化を招く否定的・破壊的干渉を避けるとともに、1974年の兵力引き離し協定などを遵守するよう呼びかけた。

このほか、テロの脅威については、シリアにおける外国人テロ戦闘員がもたらす深刻な脅威に重大な懸念を表明した上で、ダーイシュ(イスラーム国)やアル=カーイダに対して、関連決議に沿った断固たる措置を取るよう同国に求めた。

最後に、包摂的で、シリア主導・シリア所有の政治プロセスの必要性を改めて訴え、安保理決議第2254号に基づき、全てのシリア人の権利を守り、彼らが平和的かつ自主的、民主的に自らの将来を決定できるようにすることを呼びかけた。

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