国連のシリアに関する独立国際調査委員会(パウロ・ピネイロ委員長)は、3月にシリア沿岸地域で民間人に対して行われた人権侵害についての報告書を発表、一部の行為が戦争犯罪に該当すると指摘し、加害者が所属や地位に関係なく全員が処罰されるべきだと訴えた。
生存者や目撃者ら200人以上への聞き取り調査をもとに作成された報告書は、沿岸地域での殺戮や略奪に外国人戦闘員が関与していたことを明らかにしたうえで、加害者のなかにはスルターン・スライマーン・シャー師団(アムシャート師団)、ハムザ師団、シャーム自由人イスラーム運動に加え、シャーム解放機構に所属していた部隊、前政権を支持する武装勢力らが含まれていたと断じた。
また、アフマド・シャルア移行期政権の部隊が、一部の事案で侵害行為を阻止し、民間人の避難を支援したとしつつ、治安部隊に統合されていた諸派の要員が法に反する行為に関与していたと明らかにした。
さらに、複数の民間人が特定宗派への帰属を理由に尋問を受けたこと、継続する敵対行為や報復への恐れから遺体の収集・埋葬がこれらの宗派の儀式に沿って行えず、数日間自宅に遺体を安置せざるを得ない状況が生じたことが指摘された。
報告書は、遺体の尊厳侵害として、焼却、踏みつけ、損壊、さらには犠牲者を嘲笑し殺害を喜ぶ映像の公開や埋葬の妨害を確認、その他、殺害、拷問、家屋の焼き払いにより、数万人規模の民間人が避難を余儀なくされたことを明らかにした。
そのうえで、委員会は、被害地域に対して緊急の保護強化が必要だと強調、容疑者を直ちに治安・軍事関連職務から外すべきだと勧告した。
**
トーマス・バッラク在トルコ米大使兼務シリア担当特使は、Xを通じて報告書について以下の通り評価した。
3月に発生した沿岸部での暴力に関する委員会の事実調査報告は、シリア政府の責任、透明性、説明責任に関して明確かつ追跡可能な指標を構築するための重大な一歩である。これは測定可能で明確に定義された成果である。統一され、包摂的なシリアの実現には、一貫して追求される正義と、国際社会からの一定のリズムをもった忍耐が必要である。
The Commission’s fact-finding report on March coastal violence is a serious step towards definable and traceable metrics to the Syrian government’s responsibility, transparency, and accountability. Here is a measurable and definable accomplishment. A united, inclusive Syria… https://t.co/gyvfce9OZV
— Ambassador Tom Barrack (@USAMBTurkiye) August 14, 2025
**
外務在外居住者省は、フェイスブックなどを通じて声明(アラビア語、英語)を通じて声明を出し、アスアド・ハサン・シャイバーニー外務在外居住者大臣が、ピネイロ委員長に対して、報告書作成における努力に謝意と感謝を表し、その内容が独立調査国民委員会の結論と一致していることを確認したと発表した。
**
アン・スノウ英シリア担当特使は、Xを通じて、国連のシリアに関する独立国際調査委員会(パウロ・ピネイロ委員長)の報告書への支持を表明した。
Good to see the @UNCoISyria’s report on the horrific coastal violence. The findings, which align to those of the National Independent Commission, provide clear recommendations to ensure accountability and protections for all Syrians.
— Ann Snow (@UKSyriaRep) August 14, 2025
I also welcome the Syrian Government’s support for the work of the @UNCOISyria & its commitment to the recommendations set out in the report. The UK stands ready to support implementation.@syrianmofaex
— Ann Snow (@UKSyriaRep) August 14, 2025
(C)青山弘之 All rights reserved.
