人民議会選挙高等委員会のムハンマド・ターハー・アフマド委員長はSANAのインタビューに応じ、そのなかで前日のアフマド・シャルア暫定大統領との会談で手渡した人民議会選挙の暫定的制度の最終案の内容について明らかにした。

アフマド委員長によると、この最終案は、社会のさまざまな階層や組合との複数回にわたる協議と意見交換を経て、高等委員会内の法務委員会および大統領府の法務委員会による見直しを受けたうえでまとめられた。
また、選挙は9月15日から20日の間に実施される予定で、人民議会の定数はこれまでよりも増加し、210議席に拡大されることも確認された。
この取り組みは、政治参加の拡大と代表性の強化、選挙制度の近代化を通じて、国家の再構築と民主的正統性の確立を図るための一環だという。
シャルア暫定大統領との会談では、シリアのすべての県において選挙プロセスを推進することの重要性が強調され、大統領は、すべてのシリア人が拒絶する国家の分断に反対する姿勢を明確にし、犯罪者を支援した者、分離主義・宗派主義・宗教的分断を扇動する者を排除する必要性を強く訴えた。
日程についてアフマド委員長は、暫定選挙制度に関する大統領令の署名後、まず1週間以内に各選挙区の選挙委員会(支部委員会)を選出し、その後15日間で選挙人団(有権者)を確定する。その後、立候補の受付を3日間行い、さらに1週間を候補者による選挙運動と公開討論の期間とし、選挙は9月15日から20日の間に完了する予定であると説明した。
暫定選挙制度の内容については、支部委員会と選挙人団に関する定義や、構成員の資格条件が明記されている。また、議席数は2011年国勢調査に基づいて、150から210に増加され、その配分も示されている。
制度にはさらに、選挙運動の詳細なスケジュール、候補者および選挙人団の行動規範が含まれ、女性の議会参加率を最低20%とする規定や、若者の立候補および積極的な参加を奨励する内容も盛り込まれている。これに関連して、市民社会組織と連携し、女性や若者を対象とした啓発・研修講座も実施される予定だという。
議席のうち大統領が任命する3分の1(70議席)について、アフマド委員長は、高度な専門技術を有する人材(テクノクラート)に充てられると述べた。これは、選挙過程で生じうる空白を補完し、社会のあらゆる層が代表されることを保証するためだという。
アフマド委員長はまた、高等委員会がアラブ諸国の大使や一部の外交使節団と面会し、選挙制度の仕組みと透明性の担保について説明を行ったことを明かし、この方式が現在のシリアの状況に最も適しているとの評価を受けたと語った。
選挙プロセスの監視について、アフマド委員長は、国内の市民社会および国際的な機関が、高等委員会の監督と調整のもとで関与することが認められると述べた。加えて、立候補者名簿および選挙結果に対する異議申し立ての自由も保証されるという。
アフマド委員長は、「シリアという国とその指導部、そして国民の犠牲にふさわしい人民議会」を目指していると伸べ、この議会が旧来の法律や制度の改正を担い、再建と発展の次の段階を主導していくことになると強調した。
アフマド委員長は、そのうえで、選挙の透明性を保証する仕組みとして、支部委員会の選定段階から、選挙人団や選挙結果に対する異議申し立て、そして国際監視の受け入れまで、すべてのプロセスにおいて厳格な基準を適用し、旧政権下で根付いた「形骸化した議会」のイメージを打破することを目指すと語った。
人民議会選挙でこうした仕組みが採用された理由について、アフマド委員長は「シリアは現在、例外的な時期を迎えており、それに対応するため、世界的にもあまり例のない選挙手法、すなわち、公開選挙と対決選挙を組み合わせた「ハイブリッド方式」を採用する必要があった」と説明した。
この方式は、現時点におけるシリアの現実と、選挙委員会が直面する制約を踏まえた対応であり、現状に即して議会が本来の役割を果たせるようにすることを目的としているという。高等委員会はそのために、各県に出向いて、地元当局、地域社会の代表、社会的に影響力を持つ人物などと意見交換を行い、住民からの批判や提案、各地域特有の事情を取り入れ、それを暫定選挙制度に反映させた。
アフマド委員長は、こうした現地訪問と対話が、現在のシリアの状況にふさわしい暫定的な選挙制度の設計において極めて重要な役割を果たしたと述べた。この制度は、社会の実情を的確に反映し、現段階および社会の要請に応える技術的・制度的要件を備えた人民議会の実現を目指すものである。
特に議論の中で注目されたのは「社会参加」の問題であり、委員会は支部委員会の初期名簿に対して公式決定前に異議申し立てを認め、また、選挙人団の構成員についても、より優れた人材の代替案の提出を可能にし、そうした異議や提案を真剣に考慮する方針を取った。
さらに、委員会は宗派・教派の区別なく、あらゆる社会層・代表者・活動家と面会し、女性の積極的な参加も確保した。こうした広範な協議が委員会の活動を豊かにし、多くの提案が暫定選挙制度に盛り込まれ、最終的に昨日シャルア暫定大統領に提出されたという。
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