イスラーム国(ダーイシュ)をめぐる動き(2014年7月1日)

バグダーディー氏声明発表

ダーイシュ(イスラーム国)のカリフを名乗るアブー・バクル・バグダーディー氏はイスラーム・カリフ制樹立後初となる音声声明(https://www.youtube.com/watch?v=_kjajeNX-84)を発表した。

19分にわたる声明は「ムジャーヒディーンとイスラームのウンマへのラマダーン月のメッセージ」と題され、そのなかでバグダーディー氏は、イスラーム教徒に対して「イスラームの家へのヒジュラ(聖遷)」が義務だと主張、結集を呼びかけた。

バグダーディー氏は「科学専攻の学生、法学者、説教師、とりわけカーディー、軍事、行政、福祉に関する技能を持つ者たち、医師、さまざまな専門・分野の技師に呼びかける…。彼らへの号令は…、イスラーム教徒の必要に応えるための義務である…。イスラーム国の兵士たちよ、各地にいるあなたたちの同胞は、あなたたちの助けを待っている。あなたたちの前衛に期待している。中央アジア、そしてそれ以前にはビルマであなたたちに行われたことだけで十分だ…。アッラーに誓って、復讐しようではないか。今でなくとも復讐しようではないか」と述べた。

シリア国内の動き

Kull-na Shuraka', July 1, 2014

Kull-na Shuraka’, July 1, 2014

イスラーム戦線のシャリーア評議会などイスラーム主義組織9団体が共同声明を出し、「カリフ制の条件は、とりわけ国家機関という面で、現時点においてまだ達成されていない」と表明し、ダーイシュ(イスラーム国)によるイスラーム・カリフ制を「ハワーリジュのカリフ制」と非難し、「無効」と断じるとともに、ダーイシュを「ビドア(婉曲)と誤導」の組織と糾弾し、参加を禁じた。

声明において9団体は、「カリフ制国家樹立宣言が、アサド政権の打倒をめざす革命家に対抗するためパワー・バランスの転換を望む外国諸勢力の口実として利用され、西側において合法的な指導者としての彼(アサド大統領)のイメージを改善することに資してしまう」と警鐘をならした。

共同声明を出したのは以下の団体:

東部ムジャーヒディーン・シューラー評議会

ムジャーヒディーン軍シャリーア委員会

イスラーム連合シャリーア委員会

アレッポ・シャリーア委員会

シリア・イスラーム教ウラマー総合委員会

地域中央シャリーア委員会

イスラーム戦線シャリーア評議会

イドリブ・イスラーム委員会

海岸イスラーム委員会

ダイル・ザウル県では、シリア人権監視団が、ダーイシュ(イスラーム国)が、シャームの民のヌスラ戦線などからなるジハード主義武装集団との交戦の末、早朝にブーカマール市の大部分を制圧したと発表した。

ブーカマール市攻防戦では、ヌスラ戦線側の司令官2人を含む多数の戦闘員が死亡した。

また同市の複数の消息筋によると、ダーイシュはブーカマール市を完全制圧、早朝から戦闘は行われていないという。

一方、ARA News(7月1日付)によると、ブーカマール市でのダーイシュとヌスラ戦線らとの戦闘激化、シリア軍による空爆、ダーイシュの同市制圧を受け、住民約4,000人が市外に避難した。

ブーカマール市はヌスラ戦線などジハード主義武装集団のダイル・ザウル県における拠点と目されており、ダーイシュは同県を「ハイル州」と自称し、制圧をめざしている。

ブーカマール市を制圧したダーイシュはまた、ヌスラ戦線などとの交戦の末、キサール村も制圧し、同村の南部に位置するヌスラ戦線の拠点シュハイル市に進軍を続けたという。

さらにダーイシュは、ザッル村に進軍し、ヌスラ戦線などからなるジハード主義武装集団と交戦した。

これを受け、シリア軍がダーイシュの拠点などを狙い、ブーカマール市各所に4度、ブサイラ市に2度、カスラー村に2度、県西部の製塩工場周辺を1度、空爆を行った。

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ダマスカス郊外県では、シリア人権監視団によると、東グータ地方でダーイシュ(イスラーム国)とジハード主義武装集団が未明に交戦し、後者の戦闘員2人が死亡した。

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ラッカ県では、シリア人権監視団によると、ダーイシュ(イスラーム国)が占拠するラッカ市各所およびその周辺をシリア軍が空爆した。

またARA News(7月1日付)によると、ラッカ市各所をシリア軍が空爆、また同市南部郊外にスカッド・ミサイルが着弾した。

イラク国内の戦況

ニナワ県では、マダー・プレス(7月1日付)によると、モスル市郊外の新市街で、武装した何者かがダーイシュを要撃し、アフガン人戦闘員ら3人を殺害した。

また、モスル市北部のモスル大学入口のダーイシュ(イスラーム国)の拠点をイラク軍戦闘機が空爆した。

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バービル県では、マダー・プレス(7月1日付)によると、イラク軍がジュルフ・サフル地方で特殊作戦を行い、ダーイシュ(イスラーム国)の拠点複数箇所、車輌2台を破壊、戦闘員6人を殺害した。

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マダー・プレス(7月1日付)は、内務省筋の話として、バグダード県北部のマシャーヒド地区で、イラク軍および義勇兵がダーイシュ(イスラーム国)と交戦し、義勇兵2人が死亡、5人が負傷、ダーイシュ戦闘員3人が負傷したと報じた。

ヨルダンの動き

ヨルダンのジハード主義潮流の理論家アブー・ムハンマド・マクディスィー氏(本名イサーム・バルカーウィー)は、ダーイシュ(イスラーム国)によるイスラーム・カリフ制樹立について「きちんと目を通していない…。イラク・シャーム・イスラーム国を自称していた組織は私に危害を与えるものではないが…、時間を割いて批判するまでもなかろう…。時期尚早にことを急いだ者は、自らの禁忌を罰せられる」と消極的な姿勢を示した。

『ハヤート』(7月2日付)が伝えた。

AFP, July 1, 2014、AP, July 1, 2014、ARA News, July 1, 2014、Champress, July 1, 2014、al-Hayat, July 2, 2014、Kull-na Shuraka’, July 1, 2014、al-Mada Press, July 1, 2014、Naharnet, July 1, 2014、NNA, July 1, 2014、Reuters, July 1, 2014、SANA, July 1, 2014、UPI, July 1, 2014などをもとに作成。

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