米中央軍(CENTCOM)は7日付で声明を出し、「シリアの親政権部隊」が8日未明、西クルディスタン移行期民政局(ロジャヴァ)人民防衛隊(YPG)主体のシリア民主軍の司令部複数カ所に対して攻撃を行ったことを受け、有志連合がこの部隊に対して爆撃を実施したと発表した。
CENTCOMの声明内容は以下の通り:
シリアの親政権部隊が7日(シリア時間8日未明)、確固たる基盤を有する(well-established)シリア民主軍の司令部複数カ所に対していわれのない攻撃を開始した。
攻撃を受けた際、顧問・支援・随行任務にあたっていた有志連合の隊員は、設置合意されたユーフラテス川の衝突回避線(de-confliction line)東部8キロ地点にシリア民主軍とともにいた。
有志連合と協力部隊を防衛するため、有志連合は、攻撃してきた部隊を爆撃し、ダーイシュ(イスラーム国)壊滅という有志連合の任務に従事する協力者への攻撃に対して報復を行った。
有志連合は引き続き、中部ユーフラテス川渓谷において、ダーイシュを壊滅する任務に注力し、交渉の余地のない自衛権を行使する。
**
この爆撃に関して、米匿名高官は、AFP(2月8日付)に対して、「100人以上が死亡した」との見方を示すとともに、「シリア民主軍が2017年9月に(ダーイシュから)解放した領土を親政権部隊が制圧しようとしていたと疑っている」と指摘、「(新政権部隊に)参加していた戦闘員は約500人に達し、装甲車、戦車、多連装ロケット・システム、迫撃砲がこれを支援していた」と述べた。
同高官はそのうえで「この部隊はおそらく、2014年から2017年にかけてダーイシュ(イスラーム国)の重要な収入減だったヒシャーム村の油田地帯を制圧しようとしていたのだろう」と付言した。
**
一方、SANA(2月8日付)のダイル・ザウル県の特派員は、県北東部のヒシャーム村・タービヤ村間でダーイシュ(イスラーム国)とQSD(西クルディスタン移行期民政局(ロジャヴァ)人民防衛隊(YPG)主体のシリア民主軍(SDF))との戦闘に従事する「人民諸部隊」に対して、有志連合が攻撃を加え、数十人が死亡、多数が負傷した、と伝えた。
有志連合の爆撃は、この諸部隊の拠点複数カ所に対して10回にわたり行われ、甚大な被害が出たという。
**
このほか、複数の消息筋によると、爆撃によってアフガン人戦闘員からなるファーティミーユーン旅団、パキスタン人戦闘員からなるザイナビーユーン旅団、ハトラ村出身のその他(シーア派以外)の宗派からなる民兵、イラン・イスラーム革命防衛隊士官多数、シリア軍兵士も死亡したという。
**
なお、シリア人権監視団によると、有志連合の爆撃で死亡したのは45人で、そのほとんどはシリア軍とともに戦闘に参加していた部族の戦闘員だったという。
また、アフガン人の戦闘員も死亡したほか、戦車などの重火器が破壊されたという。
シリア人権監視団によると、シリア軍はCONOCO油田、ウマル油田など西クルディスタン移行期民政局がダーイシュから奪った油田の奪還をめざしているという。
**
『ハヤート』(2月10日付)によると、攻撃には、F-15戦闘機、F-22戦闘機、アパッチ攻撃ヘリコプター、海兵隊砲兵部隊が参加し、3時間あまり続いたという。
AFP, February 8, 2018、ANHA, February 8, 2018、AP, February 8, 2018、CENTCOM, February 8, 2018、DPA, February 8, 2018、al-Durar al-Shamiya, February 8, 2018、al-Hayat, February 9, 2018、February 10, 2018、Reuters, February 8, 2018、SANA, February 8, 2018、UPI, February 8, 2018などをもとに作成。
(C)青山弘之 All rights reserved.