ロシアの国防省と外務省は共同記者会見を開き、シリア国内での化学兵器使用やその調査の実態に関する報告を行った。
記者会見を行ったのは、ロシア軍放射線化学生物学防護部隊のイゴール・キリロヴ司令官(中将)、ロシアのマリア・ザハロワ外務省報道官ら。
会見でのキリロヴ司令官の主な発言は以下の通り:
「米英仏、そしてその同盟国は国際社会を再び誤った方向に導き、対立させようとしている。これらの国は、演出された化学兵器攻撃を利用し、シリアが化学兵器禁止条約に違反し、ロシアがそれを促していたとの非難を向けている。しかも化学兵器禁止機関(OPCW)を政治利用しようとする動きもある…。シリアでのOPCWの事実調査団は、こうした動きのなかでなくてはならない役割を担い、米国やその同盟国の監視下で調査を行っている」。
「(イドリブ県)ハーン・シャイフーン市、サラーキブ市、(ハマー県)ラターミナ町での調査が、現地での実査なしに行われたことが、プロフェッショナルさを欠いたアプローチを示している…。「おそらく」、「仮定できる」、「可能性がある」といった言葉が使われているのは偶然ではない。公式文書でこうした言葉が用いられるのは受け入れられない」。
「証拠の出所は、ホワイト・ヘルメット、シリア米・・・医療協会、暴力文書センターだけだ。だが、これらの証拠は甚だ疑わしい。特にホワイト・ヘルメットはアル=カーイダ、すなわちヌスラ戦線(シャーム解放機構)やイスラーム軍といったテロ組織を支援している。これらの組織は化学兵器を使用したと白状しており、こうしたことが公式レベルで考慮されるべきだ」。
「(2017年4月4日のハーン・シャイフーン市での化学兵器使用疑惑事件に関して)複数の証拠が示しているのは、地面に設置された小規模の爆発物によってクレーターが作られたということで、(シリア軍が)投下した爆弾によってではない。しかもこのクレーターが調査が終了する直前にコンクリートで埋められてしまった点も強調されるべきだ…。つまりは、クレーターにサリン・ガスはなかったということになる。もし化学兵器がクレーターのなか、ないしは近くで使用されていたら、近くにいた人(救出活動にあたっていたホワイト・ヘルメット)が直接被害を受けないはずない」。
「(2018年4月7日のダマスカス郊外県東グータ地方ドゥーマー市での化学兵器使用疑惑事件に関して)偽の証拠に基づくもう一つの報告書が出されようとしている」。
「40トン以上の化学物質がテロリストから解放された地域で発見された…。テロリストの秘密化学実験室と有毒ガスの貯蔵庫を多数発見した」。
「(ドゥーマー市で2018年4月17日に、テロリストが爆発物や有毒物質を製造するために使用していた化学実験室と化学物質貯蔵庫が発見された…。だが、理解不能な理由により、OPCWの調査員に提出された物質は、何の関心も得られなかった」。
Ministry of Defence of the Russian Federation, June 22, 2018をもとに作成。
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