ロシア国防省のイゴール・コナシェンコフ報道官は、モスクワ時間で17日深夜23時にシリア沖の地中海上でロシア空軍のIL-20が消息を絶ったと発表、シリア軍がイスラエル軍戦闘機と誤ってミサイルで撃破したことを明らかにした。
また、イスラエル軍戦闘機の攻撃と合わせて、フランス海軍のフリゲート艦オーヴェルニュもミサイルを発射していたと付言した。
この誤射により、IL-20に乗っていたロシア軍将兵15人が死亡した。
コナシェンコフ報道官によると、IL-20は偵察任務を終えてラタキア県のフマイムーム航空基地に帰還しようとしていたが、消息を絶つ約1時間前、イスラエル軍戦闘機F-16がラタキア市一帯をミサイル攻撃しており、シリア軍の防空部隊は、これへの報復としてミサイルを発射、これによってIL-20が撃墜された。
コナシェンコフ報道官はそのうえで、イスラエル軍戦闘機がロシア軍機を装い、IL-20を盾として攻撃を行ったことが、今回の事件の原因となったと指摘、こうした行為を厳しく非難するとともに、「イスラエルの挑発行為に対する相応の報復措置を取る権利を持つ」と表明した。
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ロシア上院(連邦会議)国防委員会のフランツ・クリンツェヴィチ委員はスプートニク・ニュース(9月18日付)の取材に対して、撃墜されたIL-20が「あらかじめ計画にそって試験飛行を行っていた」ことを明らかにしたうえで、「イスラエル軍のパイロットらはロシア軍機を装い、IL-20をシリア対空防衛の砲火にさらした」と述べた。
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ロシア国防省はその後、声明でロシア海軍の捜索船が墜落現場付近を捜索し、タルトゥース県バーニヤース市沖約27キロの地点でIL-20の残骸や乗組員の遺体を回収したと発表した。
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セルゲイ・ショイグ国防大臣は国防省での会合で、イスラエルのアヴィグドール・リーベルマン国防大臣と電話会談を行い、イスラエルによるこうした行為を放置しないと抗議、事件の全責任がイスラエル側にあると追究したことを明らかにした。
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ヴラジミール・プーチン大統領は事件に関して「悲劇的な偶然の連鎖だ」と指摘し、「特にこのような悲劇的な状況で人々が非業の死を遂げるとき、これは常に不幸であり、不幸は我々全員にとって、国々にとって、そして非業の死を遂げた我々の同志の近しい人々にとって不幸である。これを受け、私はもちろん命を落とした人々の近親者に哀悼の意を表明する」と述べた。
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ロシア大統領府のドミトリー・ペスコフ報道官は、IL-20の撃墜事件がイドリブ県情勢に影響を及ぼすかとの記者の質問に対して「この事件の影響はまったくない」と述べた。
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スプートニク・ニュース(9月18日付)などが伝えた。
AFP, September 18, 2018、ANHA, September 18, 2018、AP, September 18, 2018、al-Durar al-Shamiya, September 18, 2018、al-Hayat, September 18, 2018、Reuters, September 18, 2018、SANA, September 18, 2018、Sputnik News, September 18, 2018、UPI, September 18, 2018などをもとに作成。
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