アサド大統領はバアス党中央委員会会合で「混乱やテロの温床となってきた一部社会階層をリハビリするための戦いに打って出る」と表明する一方、党の組織改革を断行(2018年10月7日)

シリアの支配政党バアス党(アラブ社会主義バアス党)シリア地域の最高意思決定機関である中央委員会の会合が開かれ、同地域の最高執行機関であるシリア地域指導部書記長を務めるアサド大統領が政治・軍事情勢の進捗についての報告を行った。

報告では、米国とロシアによるいわゆる「世紀の合意」に関して言及、それが最近のシリア情勢に少なからぬ影響を与えているとの見方を示す一方、多くの国がこれを利用し、イスラエルとの対決から身を引こうとしていると批判した。

報告におけるアサド大統領の主な発言は以下の通り:

SANA, October 8, 2018

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「イドリブ県での戦闘を前にして我々が目の当たりにした西側諸国のヒステリーは、この戦いが彼らにとって運命的な出来事になるためだ。そこでのシリア人の勝利はシリアに対する彼らの計画の失敗をもたらすだろう。シリアの復活は、この地域における彼らの計画に立ちはだかる脅威なのだ。この勝利が「世紀の取引」というかたちをとるにせよ、それ以外のかたちをとるにしても、それはこの地域の国々、そして世界にとって新たなモデルとなろう」。

「シリア政府の姿勢は明白で、同県、そしてシリア政府の支配下にないそのほかのシリアの領土がシリア政府の支配下に復帰する、というものだ。(ロシア・トルコによるイドリブ県での非武装地帯設置にかかる)合意は一時的な措置だ。国家はこの間、現場で多くの成果を実現した。その筆頭にあげられるのが流血の停止だ」。

「我々が勝利に向かって前進するたびに、シリアの敵は、軍事、政治、経済、社会といって面でシリアを消耗させるための試みを集中させるだろう。その一方で、我々は、戦争と同じように深刻な国内の諸問題に対処することになる…。我々は、混乱やテロの温床となってきた一部社会階層をリハビリするための戦いに打って出る。これらの社会階層が亀裂をもたらし、シリアが将来再び狙われことがないようにするために」。

「バアス党は、戦争がもたらした結果に対処するための役割を担わなければならない。社会、そして社会が経験した変化を精査し、社会のなかで広まった主題や概念のイメージ、そして定義を明示しなければならない。言動と信条を一致させるための活動を実行しなければならない。社会のさまざまな階層に党は到達する能力を持つために、これらのことをしなければならない」。

「党中央委員会の活動に力点を置き、その役割を活性化させる必要がある。この会合を通じて示されたすべての提案は、実施のための明確な仕組みを伴うもので、この仕組みを通じて、明確な日程を伴った任務が定められることになる…。対話の仕組みを構築し、党のさまざまな指導部のレベルで決定を遂行するためのより良い仕組み確立するために、対話を継続する必要がある」。

アサド大統領は報告ののち、中央委員会メンバーとの質疑応答を行った。

SANA(10月8日付)が伝えた。

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『ワタン』(10月8日付)は、複数の消息筋の話として、アサド大統領がこの会合で、シリア地域指導部の名称を「中央指導部」に変更することを決定した、と伝えた。

アサド大統領はまた、地域指導部書記長(أمين)および副書記長の呼称を、それぞれ「総書記」(الأمين العام)、「副総書記」に変更することも決定したという。

この名称変更は、アラブ世界全体の党活動を統括する民族指導部を廃したことに伴う組織改編の一環だという。

AFP, October 8, 2018、ANHA, October 8, 2018、AP, October 8, 2018、al-Durar al-Shamiya, October 8, 2018、al-Hayat, October 9, 2018、Reuters, October 8, 2018、SANA, October 8, 2018、UPI, October 8, 2018、al-Watan, October 8, 2018などをもとに作成。

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