イラク・シャーム・イスラーム国(ダーイシュ)をめぐる動き(2014年6月20日)

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シリア政府の動き

ハサカ県では、ARA News(6月20日付)によると、シリア軍ヘリコプターが、イラク・シャーム・イスラーム国(ダーイシュ)が占拠しているタッル・ハミース村、タッル・ブラーク町を空爆した。

空爆と前後して、カーミシュリー市の空港、ハイムー村が砲撃を受けたという。

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ダイル・ザウル県では、シリア人権監視団によると、イラク・シャーム・イスラーム国(ダーイシュ)が「無血入城」したムーハサン市を軍が6回にわたって空爆し、女性2人を含む15人が死亡した。

シリアの反体制勢力の動き

ダイル・ザウル県では、クッルナー・シュラカー(6月20日付)によると、ムーハサン市を占拠していた「自由シリア軍」がイラク・シャーム・イスラーム国(ダーイシュ)と無血開城に合意して撤退、ダーイシュが同市を掌握した。

ダーイシュはまた、ムーハサン市とともに、ブー・ウマル村、ブー・ライル村にも無血入城した。

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イスラーム戦線シューラー評議会のアフマド・イーサー・シャイフ議長は、ツイッターでイラク人にイラク・シャーム・イスラーム国(ダーイシュ)を信用するな、と警鐘を鳴らした。

シャイフ議長(イスラーム戦線所属のシャームの鷹旅団司令官)は「勝利のイラクにおける同胞よ、あなたたちに忠告しよう。たとえダーイシュがよいことをしたとしても彼らを信用するな。彼らは求愛しておきながら、その後どれだけ矛盾したことをしてきたことか」と綴った。

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ダマスカス郊外県では、シリア人権監視団によると、ザマルカー町で、イラク・シャーム・イスラーム国(ダーイシュ)の前筆頭カーディーのアナス・クワイディル氏(アブー・ハマーム)が武装した何者かに襲撃され、暗殺された。

これに関して、イスラーム軍は、ダーイシュによって粛清されたとの見方を示し、関与を否定しているという。

複数の活動家によると、クワイディル氏は、ダーイシュの振る舞いに異議を唱えて、ダーイシュを離反し、東グータ地方で活動するイスラーム戦線に身を寄せていたという。

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ARA News(6月21日付)は、イラク・シャーム・イスラーム国(ダーイシュ)がラッカ県タッル・フドル村に残っていたクルド人農民を脅迫し、追放したと報じた。

イラク国内の戦況

ARA News(6月20日付)は、イラク・クルディスタン地域で活動するというシリア・クルド人戦闘員の話として、同地域内のシリア人避難民の多くが軍事教練を受け、イラク・シャーム・イスラーム国(ダーイシュ)との戦闘に動員されている、と報じた。

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ロイター通信(6月20日付)によると、「ジハードなくして命なし」とのタイトルで、インターネット上で公開されたビデオ映像において、英国出身のアブー・ムサンナー・ヤマニーを名乗る戦闘員を含む英国人3人とオーストラリア人2人が、イラクとシャームにおけるシャリーアの適用を呼びかけた。

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サラーフッディーン県治安筋によると、バイジ製油所一帯でのイラク軍とイラク・シャーム・イスラーム国(ダーイシュ)の戦闘で、軍兵士10人、ダーイシュ戦闘員10人が死亡した。

この戦闘でイラク軍はバイジ製油所周辺からダーイシュを放逐したという。

またイラク軍総司令部報道官のカースィム・アター大将は、治安部隊がティクリート市南部のムウタリム村でイラク・シャーム・イスラーム国(ダーイシュ)の浄化を完了したと発表した。

マダー・プレス(6月20日付)が伝えた。

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ニナワ県のフナイン・カッドゥー議員は、マダー・プレス(6月20日付)に、イラク軍と部族民兵の合同部隊はイラク・シャーム・イスラーム国(ダーイシュ)との戦闘の末、タッルアラフ郡ほぼ全域を奪還したと述べた。

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ワースィト県警察は、サラーフッディーン県に派遣中の部隊が、イスハーキー市、サーマッラー市でのイラク・シャーム・イスラーム国(ダーイシュ)との戦闘で、ダーイシュ戦闘員32人を殲滅、7人を逮捕したと発表した。

マダー・プレス(6月20日付)が伝えた。

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ディヤラ県消息筋によると、イラク・シャーム・イスラーム国(ダーイシュ)が占拠していたミクダーディーヤ郡、アズィーム村をイラク治安部隊が奪還、サラーフッディーン県に接する西部一帯をほぼ完全制圧した。

またイラク・クルディスタン地域ペシュメルガがヤアクーバ市北東のジャルーラー村でダーイシュと交戦、ダーイシュの狙撃手2人を殺害、同地を制圧した。

マダー・プレス(6月20日付)が伝えた。

諸外国の動き

デンマーク外務省はHPを通じて声明を出し、2013年5月17日にシリア国内で取材中に拉致されたデンマーク人カメラマンのダニエル・ラーイ・オトセン(Daniel Rye Ottosen)氏が解放されたと発表した。

ロイター通信(6月20日付)によると、オトセン氏は、イラク・シャーム・イスラーム国(ダーイシュ)と思われる戦闘員に拉致され、身代金を支払い解放されたという。

AFP, June 20, 2014、AP, June 20, 2014、ARA News, June 20, 2014、Champress, June 20, 2014、al-Hayat, June 21, 2014、June 22, 2014、Kull-na Shuraka’, June 20, 2014、al-Mada Press, June 20, 2014、Naharnet, June 20, 2014、NNA, June 20, 2014、Reuters, June 20, 2014、SANA, June 20, 2014、UPI, June 20, 2014などをもとに作成。

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