イスラーム国(ダーイシュ)をめぐる動き(2014年8月15日)

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シリア国内の動き

西クルディスタン移行期民政局人民防衛隊に近い某消息筋は、ARA News(8月15日付)に対し、ダーイシュ(イスラーム国)がハサカ市侵攻を試みていた今年7月末、シリア政府とダーイシュが秘密合意を交わしていた(未確認情報)、と主張した。

同消息筋によると、この秘密合意は、①ダーイシュによるハサカ市、ダイル・ザウル市および同市郊外への攻撃中止、②ダーイシュによるミールビーヤ穀物センターからの小麦など200トンの接収、③シリア政府からダーイシュへの10億ドル相当の供与、を骨子としていたという。

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ハサカ県では、ARA News(7月15日付)が、カーミシュリー市で活動するNGO団体「ビッル社会福祉協会」が、カフターニーヤ市で、イラクのニナワ県スィンジャール郡からのイラク人(クルド人、ヤズィード教徒)に対する人道支援を行っていると報じた。

ビッル社会福祉協会は、シリア政府に近いいわゆる「官制NGO」。

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アレッポ県では、シリア人権監視団によると、ダーイシュ(イスラーム国)がジハード主義武装集団と交戦の末、トルコ国境に近いラーイー町(ダーイシュがすでに制圧)近郊のブガイディーン村を制圧した。

またダーイシュとジハード主義武装集団が、スーラーン・アアザーズ町周辺(アフティームッラート村方面)で交戦、同地一帯をダーイシュが砲撃した。

これに関して、イスラーム戦線は声明を出し、ダービク村、アルシャーフ村一帯で戦線がダーイシュとの戦闘を続けていると主張した。

一方、自由シリア軍クルド人戦線旅団のアフマド・ハッスー報道官はARA News(8月16日付)に対し、ダーイシュがアフタリーン市、ラーイー村でクルド人戦線旅団戦闘員8人を斬首した、と述べた。

Kull-na Shuraka', August 15, 2014

Kull-na Shuraka’, August 15, 2014

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ダイル・ザウル県では、シリア人権監視団によると、アイヤーシュ村などをシリア軍が砲撃するなか、第137旅団基地と放送塔観のシリア軍検問所で爆発が起きた。

シリア軍はまた、ダーイシュ(イスラーム国)が占拠するウマル油田各所を空爆した。

一方、SANA(8月15日付)によると、ダイル・ザウル市工業地区、ラシュディーヤ地区、ハウィーカ地区で、シリア軍が「テロリスト」(ダーイシュ)と交戦し、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

またシリア軍は、アイヤーシュ村のフジャイフ地点(放送塔)近くで、「テロリスト」による自爆攻撃を阻止した。

他方、ARA News(8月16日付)によると、ダーイシュは、シャフア村で避難生活を送っていたシュアイタート部族の子息10人を斬首した。

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ラッカ県では、シリア人権監視団によると、ダーイシュ(イスラーム国)の検閲査察局が、ラッカ市内の商店多数を、「賞味期限切れの商品を販売している」との理由で閉鎖処分にし、商店主を逮捕、シャリーア委員会に起訴した。

またシリア軍は、ダーイシュによって占拠されているタブカ市第2地区を砲撃した。

イラク国内の動き

バービル県では、バービル作戦司令室によると、ジュルフ・サフル地方でイラク軍がダーイシュ(イスラーム国)戦闘員32人を殲滅した。

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サラーフッディーン県では、治安筋によると、ティクリート市南部でのイラク軍とダーイシュ(イスラーム国)の戦闘で義勇兵6人が死亡した。

マダー・プレス(8月15日付)が伝えた。

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米国中央司令部は声明を出し、アルビール市近郊のダーイシュ(イスラーム国)の車輌に対して2度空爆を行ったと発表した。

AFP, August 15, 2014、AP, August 15, 2014、ARA News, August 15, 2014、August 16, 2014、Champress, August 15, 2014、al-Hayat, August 16, 2014、Kull-na Shuraka’, August 15, 2014、al-Mada Press, August 15, 2014、Naharnet, August 15, 2014、NNA, August 15, 2014、Reuters, August 15, 2014、SANA, August 15, 2014、UPI, August 15, 2014などをもとに作成。

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