バイデン米大統領はロシアのプーチン大統領との会談で越境(クロスボーダー)人道支援を定めた国連安保理決議第2165号の延長の確約を得ず(2021年6月16日)

ジョー・バイデン米大統領は、スイスのジュネーブで行われたロシアのヴラジミール・プーチン大統領との会談後、記者会見を開いた。

記者会見では、シリア情勢についても言及、以下の通り述べた。

その他にも、我々が時間を費やした多くの論題があった。シリアの人道回廊を維持、再開する火急の必要がある。餓死しかけている人々に食糧と必需品を確保するために。また、イランが核兵器を保有しないことを確実にすることをロシアと米国の双方にとっての利益にするのか。我々と同様にロシアの利益にもなるがゆえに、協力することに合意した。

彼ら(ロシア側)は、なぜシリアの大統領との問題を抱え続けていることを重要だと思っているのかと私に訊いてきた。私はこう答えた。「なぜなら彼(アサド大統領)は、国際規範に違反しているからだ。その規範とは、化学兵器禁止条約だ。信用できない」と。

彼(プーチン大統領)は、我々がある程度平和と安全を維持することを望んでいると言った。これに対して私はこう答えた。「それはあなたと大いに関係がある」。彼はアフガニスタンをめぐって「助ける」用意があると述べた。そのことについて今は詳しく立ち入ることはしないが。イランを「助ける」と言った。これに対して、我々は彼に、シリアとリビアの国民に、ある程度の安定、経済的な安定、あるいは物理的な安全をもたらすために我々が何をしたいと考えているかを説明した。

ロイター通信(6月16日付)は、米高官の話として、バイデン大統領がプーチン大統領との会談で、越境(クロスボーダー)人道支援を定めた国連安保理決議第2165号の延長について確約を得ることはなかったと伝えた。

同高官は、会談でこの問題についての「コミットメントはなかった」としたうえで、「しかし、我々は、シリアをめぐってさらなる協力が行われる場合、この問題がきわめて重要になることを明確に示した」と述べた。

AFP, June 17, 2021、ANHA, June 17, 2021、al-Durar al-Shamiya, June 17, 2021、Reuters, June 16, 2021、SANA, June 17, 2021、SOHR, June 17, 2021などをもとに作成。

(C)青山弘之 All rights reserved.

ロシア軍戦闘機とシリア軍ヘリコプターがヒムス県とハマー県の砂漠地帯でダーイシュに対して130回以上の爆撃を実施(2021年6月16日)

シリア人権監視団によると、ロシア軍戦闘機が、ヒムス県とハマー県の砂漠地帯で、ダーイシュ(イスラーム国)を狙って100回以上の爆撃を実施、シリア軍ヘリコプターも同地に「樽爆弾」15発以上を投下した。

過去48時間での爆撃回数は、130回以上に達しているという。

AFP, June 16, 2021、ANHA, June 16, 2021、al-Durar al-Shamiya, June 16, 2021、Reuters, June 16, 2021、SANA, June 16, 2021、SOHR, June 16, 2021などをもとに作成。

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ハサカ県タッル・タムル町近郊に潜入したシリア国民軍がシリア民主軍の返り討ちに遭い、戦闘員1人死亡(2021年6月16日)

ハサカ県では、シリア人権監視団によると、シリア国民軍に所属するハムザ師団の部隊が、シリア政府と北・東シリア自治局の共同統治下にあるタッル・タムル町郊外のアリーシャ村に近い農地に略奪のために潜入しようとしたが、人民防衛隊(YPG)主体のシリア民主軍の返り討ちに遭い、戦闘員1人が死亡、4人が負傷した。

AFP, June 16, 2021、ANHA, June 16, 2021、al-Durar al-Shamiya, June 16, 2021、Reuters, June 16, 2021、SANA, June 16, 2021、SOHR, June 16, 2021などをもとに作成。

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米軍航空機がダイル・ザウル県シュハイル村で空挺作戦を実施し、ダーイシュ・メンバーと思われる住民を拘束(2021年6月16日)

ダイル・ザウル県では、SANA(6月16日付)が複数の住民の話として伝えたところによると、ダイル・ザウル民政評議会(北・東シリア自治局)の支配下にあるシュハイル村中心部のシャバカ地区で、米軍航空機が人民防衛隊(YPG)主体のシリア民主軍と連携して空挺作戦を実施し、住宅1棟を急襲、中に居た住民多数を拘束、連行した。

また、米軍航空機は、シリア民主軍への従軍を拒否してシリア政府支配地に避難しようとする若者たちがユーフラテス川を渡河するのを阻止するために、両岸を結ぶ水上通行所を砲撃した。

シリア人権監視団によると、米軍が拘束したのは、バーグーズ村出身のダーイシュ(イスラーム国)・メンバー1人。

この作戦で、米軍はバーグーズ村出身の別の男性1人を殺害した。

AFP, June 16, 2021、ANHA, June 16, 2021、al-Durar al-Shamiya, June 16, 2021、Reuters, June 16, 2021、SANA, June 16, 2021、SOHR, June 16, 2021などをもとに作成。

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新型コロナウイルスの新規感染者はシリア政府支配地域で42人(2021年6月16日)

保健省は政府支配地域で新たに42人の新型コロナウイルス感染者が確認される一方、感染者9人が完治し、5人が死亡したと発表した。

これにより、6月16日現在の同地での感染者数は計24,946人、うち死亡したのは1,826人、回復したのは21,699人となった。

SANA(6月16日付)が伝えた。

AFP, June 16, 2021、ANHA, June 16, 2021、al-Durar al-Shamiya, June 16, 2021、Reuters, June 16, 2021、SANA, June 16, 2021、SOHR, June 16, 2021などをもとに作成。

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シリア軍がイドリブ県内のトルコ軍拠点一帯を砲撃、トルコ軍が応戦(2021年6月16日)

イドリブ県では、シリア人権監視団によると、シリア軍が「決戦」作戦司令室の支配下にあるザーウィヤ山地方のサルジャ村近郊(タルアーン村)に設置されているトルコ軍の拠点一帯を砲撃した。

「決戦」作戦司令室は、シリアのアル=カーイダであるシャーム解放機構とトルコの庇護を受ける国民解放戦線(シリア国民軍)などからなる武装連合体。

シリア軍はまた、バーラ村、フライフィル村、アイン・ラールーズ村、ファッティーラ村、バイニーン村、スフーフン村を砲撃した。

これに対して、トルコ軍はシリア政府の支配下にあるカフルナブル市などを砲撃し、応戦した。

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ハマー県では、シリア人権監視団によると、シリア軍が「決戦」作戦司令室の支配下にあるガーブ平原のアンカーウィー村、ズィヤーラ町を砲撃した。

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アレッポ県では、シリア人権監視団によると、シリア軍が「決戦」作戦司令室の支配下にあるマアッラト・ハルマ村を砲撃した。

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ダルアー県では、HFL(6月16日付)によると、シリア政府支配下のダイル・アダス村近郊で車に仕掛けられていた爆弾が爆発し、乗っていた政治治安局のメンバー複数が死傷した。

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ロシア国防省は声明を出し、過去24時間で「緊張緩和地帯設置にかかる覚書」への違反を36件(イドリブ県16件、ラタキア県12件、アレッポ県2件、ハマー県6件)確認したと発表した。

シリア政府によると、停戦違反は31件。

一方、トルコ側の監視チームは、停戦違反を14件確認したと発表した(ただし、ロシア側はこれらの違反を確認していない)。

AFP, June 16, 2021、ANHA, June 16, 2021、al-Durar al-Shamiya, June 16, 2021、HFL, June 16, 2021、Ministry of Defence of the Russian Federation, June 16, 2021、Reuters, June 16, 2021、SANA, June 16, 2021、SOHR, June 16, 2021などをもとに作成。

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ロシア難民受入移送居住センター:難民264人と国内避難民(IDPs)2人が新たに政府支配地域に帰還、2018年半ば以降帰還した難民は675,372人、2019年以降帰還したIDPsは89,172人に(2021年6月16日)

ロシア国防省は、合同調整センター所轄の難民受入移送居住センターの日報(6月16日付)を公開し、6月15日に難民264人(うち女性79人、子供135人)が新たに帰国したと発表した。

このうちレバノンから帰国したのは難民264人(うち女性79人、子供135人)、ヨルダンから帰国したのは0人。

これにより、2018年7月18日以降に帰国したシリア難民の数は675,372人となった。

内訳は、レバノンからの帰還者280,124人(うち女性84,195人、子ども142,590人、ザムラーニー国境通行所、ジュダイダト・ヤーブース国境通行所、ダブスィーヤ国境通行所、クサイル国境通行所、タッルカルフ国境通行所を経由して帰国)、ヨルダンからの帰国者395,248人(うち女性118,618人、子ども201,569人、ナスィーブ国境通行所を経由して帰国)。

43カ国で難民登録したシリア人の数は6,755,749人。

なお、ロシアがシリア領内で航空作戦を開始した2015年9月30日以降に帰国した難民の数は904,652人(うち女性271,471人、子供460,081人)となった。

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一方、国内避難民2人が新たに帰宅した。

ダイル・ザウル県サーリヒーヤ村の通行所を経由して帰宅したのは0人、ヒムス県南東グラーブ山のジュライギム通行所を経由して帰還したのは2人、イドリブ県の「緊張緩和地帯」から帰宅したのは0人だった。

グラーブ山通行所経由の帰還者のうち、米主導の有志連合が占領するヒムス県タンフ国境通行所一帯地域(55キロ地帯)に面するヨルダン北東部のルクバーン・キャンプから帰国した難民は2人だった。

これにより、2019年1月以降に帰宅した国内避難民の数は89,172人(うち女性33,126人、子供32,068人)に、2015年9月30日以降に帰宅した国内避難民の数は1,357,768人(うち女性415,685人、子供675,834人)となった。

Ministry of Defence of the Russian Federation, June 16, 2021をもとに作成。

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