米国務省近東問題担当次官補代理「外国政府や企業は、シリアとの取引が、シーザー法に基づく米国からの制裁に晒されないよう注意する必要がある」(2021年6月25日)

米国務省のジョーイ・フッド近東問題担当次官補代理は、記者会見でシリア政府との関係正常化をめざす一部諸国の動きに関して、「行動を起こそうと考える人たちに関しては、我々は、過去10年間にシリア国民に対して体制が犯した残虐行為、そしてこの体制が人道支援と安全保障へのアクセスを拒否する努力を続けていることを慎重に検討するように求めている」と述べた。

そのうえで、「また、シーザー法(シーザー・シリア市民保護法)があるということも付言しておきたい…。外国政府や企業は、自分たちが提案、想定している取引が、この法律に基づく米国からの制裁に晒されないよう注意する必要がある」と強調した。

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一方、国務省近東局は6月26日、ツイッターのアカウント(https://twitter.com/StateDept_NEA/)を通じて、「ゴラン高原にかかる米国の政策に変化はない。レポートは矛盾している」と発表した。

https://twitter.com/StateDept_NEA/status/1408421393671372801

発表は、ジョー・バイデン政権が、ゴラン高原に対するイスラエルの主権を承認したドナルド・トランプ米政権の決定を撤回するとの情報が流れたのを受けたもの。

AFP, June 26, 2021、ANHA, June 26, 2021、al-Durar al-Shamiya, June 26, 2021、Reuters, June 26, 2021、SANA, June 26, 2021、SOHR, June 26, 2021などをもとに作成。

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スーサーン外務在外居住者省次官:「越境(クロスボーダー)での人道支援は5%のニーズも満たしていない、その狙いはシリアの主権を侵害し、テロ組織を支援する手段を確保すること」(2021年6月25日)

フサイン・マフルーフ地方行政環境大臣、アイマン・スーサーン外務在外居住者省次官、シリア軍政治局長のハサン・スライマーン少将、ロシア当事者和解調整センターのコレッテ・ヴァディム・フランツェヴィッチ少将は、首都ダマスカスで合同記者会見を開き、難民・国内避難民(IDPs)の帰還や人道支援の状況についての報告を行った。


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記者会見のなかで、マフルーフ地方行政環境大臣は、2021年政令第13号(恩赦法)の施行、政府の支配下に復帰した地域におけるインフラ整備やサービスの拡充、さらには工業・農業振興プロジェクトを通じて、これまで以上に難民やIPDsが帰還する環境が整っていると述べた。

そのうえで、シリア政府が現在、欧米諸国による一方的な制裁の悪影響を軽減することに注力し、新たな工業施設の建設を通じた生産拡大、雇用創出を行っていると強調した。

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続いて、スーサーン外務在外居住者省次官は、シリア国境経由(クロスボーダー)で反体制派支配地域への国連関連機関による人道支援を定めた安保理決議第2165号の有効期間の終了が7月10日に迫っていることに言及、この問題がシリアの主権を侵害し、テロ組織を支援する手段を確保することにあると非難した。

スーサーン外務在外居住者省次官は、同決議によって越境(クロスボーダー)人道支援が認められているイドリブ県バーブ・ハワー国境通行所からの支援が、必要とされている支援の5%にも満たず、しかもそれらは、住民の苦難の軽減ではなく、テロ組織の支援に向けられていると指摘した。

そのうえで、シリア政府が現在友好国とともに、この通行所を閉鎖する取り組みを続けているとしたうえで、シリアが全土において、国際機関との協力のもとに、相応の支援を提供することに専念すると強調した。

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次に、フランツェヴィッチ少将が、緊張緩和地帯第1ゾーン(イドリブ県)でのシャーム解放機構に対する「テロとの戦い」や食糧・医療支援の成果について報告した。

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最後に、スライマーン少将が、米軍による違法駐留の実態について報告、人民防衛隊(YPG)主体のシリア民主軍などと連携して、原油、小麦などを国外に違法に持ち出していると非難した。

SANA(6月25日付)が伝えた。

AFP, June 25, 2021、ANHA, June 25, 2021、al-Durar al-Shamiya, June 25, 2021、Reuters, June 25, 2021、SANA, June 25, 2021、SOHR, June 25, 2021などをもとに作成。

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ロシア軍が元反体制武装集団メンバーに個人で所有する軽火器の引き渡しを求め、ダルアー市を包囲したことに対し、数十人が抗議デモ(2021年6月25日)

ダルアー県では、シリア人権監視団やドゥラル・シャーミーヤ(6月25日付)によると、ロシア軍が6月23日にシリア政府との和解に応じたダルアー市在住の反体制武装集団の元メンバーらに対して、個人で所有する軽火器(約200丁)の引き渡しを求めていることをに対して、シリア政府の支配下にあるムザイリーブ町の住民数十人が抗議デモを行い、街道を封鎖し、元司令官らとの連帯を訴えた。

ロシア軍は、ダルアー市ダルアー・バラド地区とマハッタ地区にいたる街道を封鎖し、元メンバーらに圧力をかけている。

一方、ナワー市の治安厳戒地区内、ナワー市とタスィール町を結ぶ街道上に設置されている空軍情報部の検問所一帯で、シリア軍と正体不明の武装集団が激しい戦闘が発生した。

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クナイトラ県では、シリア人権監視団によると、シリア政府の支配下にあるクルキス村で、国家治安裁判所の元判事で、現在は刑事裁判所の判事を務めている男性の車に仕掛けられていた爆弾が爆発し、乗っていた2人(判事の子供)が負傷した。

AFP, June 25, 2021、ANHA, June 25, 2021、al-Durar al-Shamiya, June 25, 2021、Reuters, June 25, 2021、SANA, June 25, 2021、SOHR, June 25, 2021などをもとに作成。

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ダイル・ザウル県で国防隊が要撃を受け3人死亡(2021年6月25日)

ダイル・ザウル県では、シリア人権監視団によると、シリア政府の支配下にあるジュズラト・ミーラージュ村で国防隊を乗せたバスがダーイシュ(イスラーム国)と思われる武装集団の要撃を受け、民兵3人が死亡、6人が負傷した。

AFP, June 25, 2021、ANHA, June 25, 2021、al-Durar al-Shamiya, June 25, 2021、Reuters, June 25, 2021、SANA, June 25, 2021、SOHR, June 25, 2021などをもとに作成。

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フール・キャンプでイラク人難民1人がダーイシュ・メンバーと思われるグループに銃で撃たれて死亡(2021年6月25日)

ハサカ県では、シリア人権監視団によると、北・東シリア自治局の管理下にあるフール・キャンプの第1区で、イラク人難民1人がダーイシュ(イスラーム国)メンバーと思われるグループに銃で撃たれて死亡した。

フール・キャンプは6つの区画、8つのブロックから構成されている。

6つの区画のうち、第1区には、ダーイシュ(イスラーム国)とつながりがない国内避難民(IDPs)、第2区と第3区にはイラク難民、第4区にはダーイシュとつながりがあるとされるIDPs、第5区には欧州出身のダーイシュ戦闘員の家族、そして第6区にはそれ以外の外国人戦闘員の家族が収容されている。

一方、8つのブロックのうち、第1、2、3、7ブロックにはイラク人難民が、第5、6、8ブロックにはシリア人IDPsが、第4ブロックにはイラク人難民とシリア人IDPsの両方が収容されている。

また、この8ブロックとは別に、シリア、イラク以外の国の出身者が収容されている。

AFP, June 25, 2021、ANHA, June 25, 2021、al-Durar al-Shamiya, June 25, 2021、Reuters, June 25, 2021、SANA, June 25, 2021、SOHR, June 25, 2021などをもとに作成。

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トルコ軍とその支援を受けるシリア国民軍が、占領下のタッル・アブヤド市近郊にあるシリア政府と北・東シリア自治局の共同統治地各所を砲撃(2021年6月25日)

ラッカ県では、ANHA(6月25日付)によると、トルコ軍とその支援を受けるシリア国民軍が、占領下のタッル・アブヤド市近郊にあるシリア政府と北・東シリア自治局の共同統治地域内の穀物サイロ一帯、カウクーバルラク村、アフダクー村を砲撃した。

AFP, June 25, 2021、ANHA, June 25, 2021、al-Durar al-Shamiya, June 25, 2021、Reuters, June 25, 2021、SANA, June 25, 2021、SOHR, June 25, 2021などをもとに作成。

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新型コロナウイルスの新規感染者はシリア政府支配地域で41人、北・東シリア自治局支配地域で25人、シャーム解放機構主体の反体制派とトルコの支配下にあるイドリブ・アレッポ県で31人(2021年6月25日)

保健省は政府支配地域で新たに41人の新型コロナウイルス感染者が確認される一方、感染者9人が完治し、3人が死亡したと発表した。

これにより、6月25日現在の同地での感染者数は計25,328人、うち死亡したのは1,862人、回復したのは21,783人となった。

SANA(6月25日付)が伝えた。

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北・東シリア自治局の保健委員会(保健省に相当)は、支配地域で新たに25人の新型コロナウイルス感染者が確認される一方、感染者3人が完治し、4人が死亡したと発表した。

これにより、6月25日現在の同地での感染者数は計18,460人、うち死亡したのは765人、回復したのは1,864人となった。

新規感染者の性別の内訳は、男性13人、女性12人。

また地域の内訳は、ハサカ県のハサカ市5人、カーミシュリー市2人、マーリキーヤ(ダイリーク)市1人、フール・キャンプ1人、アレッポ県のアイン・アラブ(コバネ)市4人、マンビジュ市4人、ラッカ県のラッカ市5人、タブカ市3人。

ANHA(6月25日付)が伝えた。

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反体制派系NGOの支援連携ユニットは、シリアのアル=カーイダであるシャーム解放機構が軍事・治安権限を握る「解放区」とトルコ占領下の「オリーブの枝」地域と「ユーフラテスの盾」地域で6月25日に新たに31人の新型コロナウイルス感染者が確認される一方、32人が完治したと発表した。

新規感染者の内訳は、イドリブ県ジスル・シュグール郡0人、イドリブ郡2人、ハーリム郡8人、アリーハー郡0人、アレッポ県スィムアーン山郡1人、ジャラーブルス郡2人、バーブ郡8人、アフリーン郡3人、アアザーズ郡7人。

これにより、同地での感染者数は計25,465人、うち回復したのは22,275人、死亡したのは707人となった。

https://www.facebook.com/ACUSyria/photos/1606398592898359/

AFP, June 25, 2021、ACU, June 25, 2021、ANHA, June 25, 2021、al-Durar al-Shamiya, June 25, 2021、Reuters, June 25, 2021、SANA, June 25, 2021、SOHR, June 25, 2021などをもとに作成。

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シリア軍と「決戦」作戦司令室がイドリブ県カフルルーマー村一帯で交戦(2021年6月25日)

イドリブ県では、シリア人権監視団によると、シリア軍が「決戦」作戦司令室の支配下にあるザーウィヤ山地方に潜入を試み、「決戦」作戦司令室が応戦、カフルルーマー村一帯で戦闘となった。

「決戦」作戦司令室は、シリアのアル=カーイダであるシャーム解放機構とトルコの庇護を受ける国民解放戦線(シリア国民軍)などからなる武装連合体。

シリア軍はまた、クマイナース村、ファッティーラ村、フライフィル村、バイニーン村などを砲撃した。

一方、「決戦」作戦司令室の支配下にあるサルキーン市でトルキスタン・イスラーム党の経済部門責任者が乗った車に仕掛けられた爆弾が爆発、乗っていた責任者が負傷した。

このほか、トルコ軍憲兵隊が「決戦」作戦司令室支配下のハーリム市近郊から越境を試みたアレッポ県ダイル・ハーフィル市出身の青年を射殺した。

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ロシア国防省は声明を出し、過去24時間で「緊張緩和地帯設置にかかる覚書」への違反を31件(イドリブ県17件、ラタキア県7件、アレッポ県4件、ハマー県3件)確認したと発表した。

シリア政府によると、停戦違反は26件。

一方、トルコ側の監視チームは、停戦違反を29件確認したと発表した(ただし、ロシア側はこれらの違反を確認していない)。

AFP, June 25, 2021、ANHA, June 25, 2021、al-Durar al-Shamiya, June 25, 2021、Ministry of Defence of the Russian Federation, June 25, 2021、Reuters, June 25, 2021、SANA, June 25, 2021、SOHR, June 25, 2021などをもとに作成。

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ロシア難民受入移送居住センター:難民357人が新たに帰還、2018年半ば以降帰還した難民は678,106人に(2021年6月25日)

ロシア国防省は、合同調整センター所轄の難民受入移送居住センターの日報(6月25日付)を公開し、6月24日に難民357人(うち女性107人、子供182人)が新たに帰国したと発表した。

このうちレバノンから帰国したのは難民357人(うち女性107人、子供182人)、ヨルダンから帰国したのは0人。

これにより、2018年7月18日以降に帰国したシリア難民の数は678,106人となった。

内訳は、レバノンからの帰還者282,858人(うち女性85,015人、子ども143,983人、ザムラーニー国境通行所、ジュダイダト・ヤーブース国境通行所、ダブスィーヤ国境通行所、クサイル国境通行所、タッルカルフ国境通行所を経由して帰国)、ヨルダンからの帰国者395,248人(うち女性118,618人、子ども201,569人、ナスィーブ国境通行所を経由して帰国)。

43カ国で難民登録したシリア人の数は6,762,712人。

なお、ロシアがシリア領内で航空作戦を開始した2015年9月30日以降に帰国した難民の数は907,386人(うち女性272,291人、子供462,474人)となった。

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一方、国内避難民の新たな帰宅はなかった。

2019年1月以降に帰宅した国内避難民の数は90,463人(うち女性33,724人、子供32,304人)に、2015年9月30日以降に帰宅した国内避難民の数は1,359,059人(うち女性416,283人、子供676,070人)。

Ministry of Defence of the Russian Federation, June 25, 2021をもとに作成。

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