アサド大統領は民族イスラーム大会の使節団と会談「民族としての帰属は現実に基づいて培わなけれ、諸国民の利益に直結していなければならない」(2021年6月14日)

アサド大統領は、シリアを訪問中の民族イスラーム大会の使節団と首都ダマスカスで会談した。

使節団は、アラブ・イスラーム諸国の政党代表、政治活動家、議員、組合幹部らからなり、大統領府の発表によると、会談では、アラブ民族主義の理念、アラブ・アイデンティティ、アラブ人としての帰属意識について意見が交わされるとともに、最近のガザ情勢、若者の役割、アラビア語の刷新についても議論が及んだ。

アサド大統領は使節団に対して以下の通り述べた。

民族主義の理念の基礎と本質にあるのは、帰属意識であり、理論的・イデオロギー的な枠組みのもとで民族主義の理念を示すだけであってはならず、現実に基づいて培わなけれ、イデオロギー的理念と諸国民の利益が結びつけられなければならない。

アラブ思想界のエリートが直面する課題とは、帰属意識と利益が直結していることを人々に納得させることだ。分断、隔絶、宗派主義といった状況は、アラブ諸国のどこかで発生すれば、別の国に波及してしまう。そうなれば、我々はアラブ諸国を単一の民族主義的なアリーナとして捉えられなくなってしまう。

こうした発言に対して、使節団はシリア国民の不屈の精神が過去数年における危機のなかで民族主義に基づくプロジェクトを再生したと賛辞するとともに、大統領選挙の成功とアサド大統領の再選に祝意を示した。

https://www.facebook.com/SyrianPresidency/posts/4300555166654949

AFP, June 14, 2021、ANHA, June 14, 2021、al-Durar al-Shamiya, June 14, 2021、Reuters, June 14, 2021、SANA, June 14, 2021、SOHR, June 14, 2021などをもとに作成。

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ロシアのプーチン大統領がNBCのインタビューに応じ、米国のシリア政策が「予測可能性と安定性」を欠き、「非人道的」と非難(2021年6月14日)

ロシアのヴラジミール・プーチン大統領は、6月16日に予定されているジョー・バイデン米大統領との首脳会談に先立って、米NBCニュース(6月14日付)の単独インタビューに応じた。

バイデン大統領が予測可能性と安定性を重視していることに関して、プーチン大統領は中東情勢と絡めて以下のように述べた。

彼(バイデン大統領)と私は別の事を言っている。だが、ポイントはおそらく同じだ。ある意味、我々の修辞は多様で異なった内容ではある。だが、私の意見を訊くのであれば、それが何かを答えたい。国際情勢においてもっとも重要な価値とは、予測可能性と安定性だ。

私は、米国に対して、この二つをこの数年間目にしていないと考えている。2011年のリビアを思い出した時、いったいどんな安定性と予測可能性があったのか。そこでは国は分断され、破壊されてしまった。

いったいどんな安定性と予測可能性があったのか。アフガニスタンに継続的に部隊を駐留させるという発言があった。その後突如として、アフガニスタンから部隊が駐留している。改めて言うが、予測可能性と安定性とは何か。

中東の出来事について、この予測可能性と安定性は、いったい何をもたらすのか。シリアではどうなのか。ここでいう安定的、予測可能というのは何なのか。米国の首脳たちに訊いてきた。「アサドに去って欲しいのか。誰が代わりにしたいのか。誰かが誰かにとって代わった時、何が起きるのか」。

答えは奇妙なものだった。答えは「分からない」だった。では、次に何が起きるのかが分からないのに、なぜ今あるものを変えるのか。第2のリビア、もう一つのアフガニスタンにしたいのか。我々はそれを望んでいるのか。そんなことはない。席をともにし、話、すべての当事者が受け入れることのできる妥協点を探そう。そうすることで安定性が実現する。ある一つの視点を、それだけが「正しい」視点だと言って押しつけてもそれは達成されない。それでは安定性は実現しない。

プーチン大統領はまた、国連安保理決議第2165号が定める越境(クロスボーダー)人道支援延長をなぜ阻止しようとしているのかとのキア・シモンズ記者の質問に対して以下のように応えた。

見て欲しい。残念ながら、シリアにはすでにたくさんの悲劇が生じている。 そして、我々の行動のすべては、事態を安定させ、正常化するために向けられる必要がある。ロシアの支援により、シリア、シリアの当局は、国土の90%以上の支配を回復できるようになった。

今確立する必要があるのは、あらゆる種類の政治的文脈と切り離すかたちで、人々に人道的な支援を行うことだけだ。しかし、西側全般、米国と西欧は、アサド大統領を援助するつもりはないと言ってきた。

アサド大統領と何の関係があるのか。支援が必要な人々を支援して欲しい。それがもっとも基本的なことです。彼らは、コロナ禍であるにもかかわらず、医薬品や医療機器の供給に対する制限を解除しようともしない。 しかし、それは非人道的だ。

人々に対するこのような残酷な態度は、決して説明し得るものではない。国境通行所についてもだ。戦闘員が今も人々に対して略奪、殺戮、レイプを続けているイドリブ地域もある。しかし、何も起きていないという。米軍の支配下にあるタンフ地域もある。

我々は最近になってこの地域(タンフ地域)から来たというギャングや盗賊を捕らえた。彼らは自分たちにはロシア軍の施設という特定の標的があると言っていた。国境通行所について、世界中で行われているのと同じように、国際人道法の規定に基づいて、支援が行われるべきだというのが我々の立場だ。

支援は中央政府を通じて行われなければならない。政府が差別されることがあってはならない。シリアの中央政府が何かを略奪すると信じる根拠があるのなら、国際赤十字がオブザーバーとなってすべてを監視すればいい。

シリア政府の誰かが人道支援の一部を盗むことに関心があるとは思わない。中央政府を通じて行われる必要がある。それゆえに、我々はアサド大統領を支援している。なぜなら、別の行動様式をとることで、シリア・アラブ共和国の主権が損なわれるからだ。それだけだ。イドリブ地域については、トルコ軍が効果的にトルコとシリアの国境を管理し、車列が双方向的に無制限に越境を行っている。

AFP, June 14, 2021、ANHA, June 14, 2021、al-Durar al-Shamiya, June 14, 2021、NBC News, June 14, 2021、Reuters, June 14, 2021、SANA, June 14, 2021、SOHR, June 14, 2021などをもとに作成。

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フランスのマクロン大統領はトルコのエルドアン大統領との会談でシリア情勢をめぐって協力するとの意思を伝える(2021年6月14日)

トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領がフランスのエマニュエル・マクロン大統領と会談した。

会談はベルギーのブリュッセルで開催されたNATOの首脳会談に合わせたもの。

52分の会談で、マクロン大統領は、シリア、リビア情勢をめぐってトルコに協力し、共同戦略をとる意思を示した。

ロイター通信(6月14日付)が伝えた。

AFP, June 14, 2021、ANHA, June 14, 2021、al-Durar al-Shamiya, June 14, 2021、Reuters, June 14, 2021、SANA, June 14, 2021、SOHR, June 14, 2021などをもとに作成。

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正体不明の武装集団がダイル・ザウル県ブーカマール市近郊のイラクの人民動員隊の本部を襲撃、所属不明の航空機が武器弾薬庫を爆撃し破壊(2021年6月14日)

ダイル・ザウル県では、アイン・フラート(6月14日付)によると、正体不明の武装集団がシリア政府の支配下にあるブーカマール市近郊のハリー村にあるイラクの人民動員隊の本部を襲撃し、手兵を殴打した後、施設内に突入し、司令官1人を含む3人を殺害した。

また、アイン・フラート(6月15日付)は、所属不明の航空機複数機が、シリア政府の支配下にあるブーカマール市南に設置されている「イランの民兵」の基地内の武器弾薬庫を爆撃したと伝えた。

この爆撃で、武器弾薬庫は完全に破壊され、民兵多数が死傷したという。
AFP, June 14, 2021、ANHA, June 14, 2021、‘Ayn al-Furat, June 14, 2021, June 15, 2021、al-Durar al-Shamiya, June 14, 2021、Reuters, June 14, 2021、SANA, June 14, 2021、SOHR, June 14, 2021などをもとに作成。

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ロシア軍戦闘機がダイル・ザウル県、ヒムス県の砂漠地帯でダーイシュに対して爆撃を実施(2021年6月14日)

シリア人権監視団によると、ロシア軍戦闘機がダイル・ザウル県ビシュリー山一帯の砂漠地帯、マヤーディーン市近郊の砂漠地帯(ファイダト・ブン・ムワイニア地区)、ヒムス県スフナ市近郊の砂漠地帯で、ダーイシュ(イスラーム国)を狙って40回以上の爆撃を実施した。

AFP, June 14, 2021、ANHA, June 14, 2021、al-Durar al-Shamiya, June 14, 2021、Reuters, June 14, 2021、SANA, June 14, 2021、SOHR, June 14, 2021などをもとに作成。

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ダイル・ザウル県東部のジュダイド・バッカーラ村で住民がダイル・ザウル民政評議会(北・東シリア自治局)の汚職に抗議するデモ(2021年6月14日)

ダイル・ザウル県では、シリア人権監視団によると、ダイル・ザウル民政評議会(北・東シリア自治局)の支配下にある県東部のジュダイド・バッカーラ村で住民が、地元評議会の汚職に抗議、食糧や燃料の充分な供給を求めて抗議デモを行い、路上でタイヤを燃やすなどして道路を封鎖した。

AFP, June 14, 2021、ANHA, June 14, 2021、al-Durar al-Shamiya, June 14, 2021、Reuters, June 14, 2021、SANA, June 14, 2021、SOHR, June 14, 2021などをもとに作成。

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新型コロナウイルスの新規感染者はシリア政府支配地域で46人、シャーム解放機構主体の反体制派とトルコの支配下にあるイドリブ・アレッポ県で48人(2021年6月14日)

保健省は政府支配地域で新たに46人の新型コロナウイルス感染者が確認される一方、感染者7人が完治し、5人が死亡したと発表した。

これにより、6月14日現在の同地での感染者数は計24,860人、うち死亡したのは1,815人、回復したのは21,682人となった。

SANA(6月14日付)が伝えた。

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反体制派系NGOの支援連携ユニットは、シリアのアル=カーイダであるシャーム解放機構が軍事・治安権限を握る「解放区」とトルコ占領下の「オリーブの枝」地域と「ユーフラテスの盾」地域で6月14日に新たに48人の新型コロナウイルス感染者が確認される一方、165人が完治したと発表した。

新規感染者の内訳は、イドリブ県ジスル・シュグール郡0人、イドリブ郡2人、ハーリム郡9人、アリーハー郡0人、アレッポ県スィムアーン山郡0人、ジャラーブルス郡5人、バーブ郡13人、アフリーン郡12人、アアザーズ郡7人。

これにより、同地での感染者数は計24,788人、うち回復したのは21,609人、死亡したのは692人となった。

https://www.facebook.com/ACUSyria/photos/1599020126969539/

AFP, June 14, 2021、ACU, June 14, 2021、ANHA, June 14, 2021、al-Durar al-Shamiya, June 14, 2021、Reuters, June 14, 2021、SANA, June 14, 2021、SOHR, June 14, 2021などをもとに作成。

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「決戦」作戦司令室がシリア政府の支配下にあるラタキア県サルマー町各所などを砲撃(2021年6月14日)

ラタキア県では、シリア人権監視団によると、「決戦」作戦司令室がシリア政府の支配下にあるサルマー町各所を砲撃した。

「決戦」作戦司令室は、シリアのアル=カーイダであるシャーム解放機構とトルコの庇護を受ける国民解放戦線(シリア国民軍)などからなる武装連合体。

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イドリブ県では、シリア人権監視団によると、「決戦」作戦司令室がシリア政府の支配下にあるサラーキブ市などM5高速道路沿線一帯各所を砲撃した。

シリア軍も、「決戦」作戦司令室の支配下にあるザーウィヤ山地方のマルイヤーン村、シャンナーン村、バーラ村、ファッティーラ村、スフーフン村、フライフィル村、バイニーン村、カンスフラ村、ナージヤ村を砲撃し、マルイヤーン村では一家3人(女性1人、子供2人)が負傷した。

一方、シャーム解放機構の治安部隊がフーア市の民家複数棟に突入し、新興のアル=カーイダ系組織の一つフッラース・ディーン機構のメンバー4人を逮捕した。

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ハマー県では、シリア人権監視団によると、「決戦」作戦司令室がシリア政府の支配下にあるガーブ平原のジューリーン村基地を砲撃した。

シリア軍も「決戦」作戦司令室の支配下にあるクライディーン村を砲撃した。

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アレッポ県では、シリア人権監視団によると、トルコ軍による6月12日のタッル・リフアト市一帯に対する砲撃で重傷を負っていたシリア軍兵士1人が死亡した。

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ロシア国防省は声明を出し、過去24時間で「緊張緩和地帯設置にかかる覚書」への違反を34件(イドリブ県20件、ラタキア県7件、アレッポ県0件、ハマー県7件)確認したと発表した。

シリア政府によると、停戦違反は31件。

一方、トルコ側の監視チームは、停戦違反を26件確認したと発表した(ただし、ロシア側はこれらの違反を確認していない)。

AFP, June 14, 2021、ANHA, June 14, 2021、al-Durar al-Shamiya, June 14, 2021、Ministry of Defence of the Russian Federation, June 14, 2021、Reuters, June 14, 2021、SANA, June 14, 2021、SOHR, June 14, 2021, June 15, 2021などをもとに作成。

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ロシア難民受入移送居住センター:難民293人と国内避難民(IDPs)3人が新たに政府支配地域に帰還、2018年半ば以降帰還した難民は674,791人、2019年以降帰還したIDPsは88,841人に(2021年6月14日)

ロシア国防省は、合同調整センター所轄の難民受入移送居住センターの日報(6月14日付)を公開し、6月13日に難民293人(うち女性88人、子供150人)が新たに帰国したと発表した。

このうちレバノンから帰国したのは難民293人(うち女性88人、子供150人)、ヨルダンから帰国したのは0人。

これにより、2018年7月18日以降に帰国したシリア難民の数は674,791人となった。

内訳は、レバノンからの帰還者279,543人(うち女性84,021人、子ども142,293人、ザムラーニー国境通行所、ジュダイダト・ヤーブース国境通行所、ダブスィーヤ国境通行所、クサイル国境通行所、タッルカルフ国境通行所を経由して帰国)、ヨルダンからの帰国者395,248人(うち女性118,618人、子ども201,569人、ナスィーブ国境通行所を経由して帰国)。

43カ国で難民登録したシリア人の数は6,755,749人。

なお、ロシアがシリア領内で航空作戦を開始した2015年9月30日以降に帰国した難民の数は904,071人(うち女性271,297人、子供460,784人)となった。

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一方、国内避難民3人が新たに帰宅した。

これにより、2019年1月以降に帰宅した国内避難民の数は88,841人(うち女性32,940人、子供32,015人)に、2015年9月30日以降に帰宅した国内避難民の数は1,357,437人(うち女性415,499人、子供675,781人)となった。

Ministry of Defence of the Russian Federation, June 14, 2021をもとに作成。

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